クズは聖女に用などない!

***あかしえ

文字の大きさ
上 下
36 / 82
第一部

36話 【取り巻く者達】

しおりを挟む





 ――どうして……どうしてこんなことになったんだ?! 誰が悪い?! アイツだ!
 アイツが悪いに決まってる! 自分だけ要領よく逃げやがって!

 聖剣だと?! ……ふざけやがって!

 アレはリューがに託したものだ!
 アレはリューがに託したものだ!
 アレはリューがに託したものだ!
 アレはリューがに託したものだ!


 ――聖剣を返せ………………………………………………っ!!!




 ◇◆◇ ◇◆◇


「このプランケット家の恥さらしがっ!!!」
 顔面にあり得ない痛みを感じると同時に視界が転じて、己がどうなったのかしばらく理解ができなかった。が、直ぐに父上から渾身の一撃をお見舞いされたのだと分かった。

「な……何をなさるのですか、父上!」
「自分の胸に手を当てて聞いてみるがいい! 面倒なことをしてくれたものだ!
 お前は、今の状況が分かっておるのか?! 陛下と教皇へ申し開きをしたところで、我が家がどうなるか分からんのだぞ?!」
「そ、そうです! 早く陛下と教会へ行かなければ!!!」
「やっと得心したか。では早急に支度を調え――」
「リューの釈放と保護を! 教会ではダメです! 愛しき彼女を守ることができるのは、俺だけです! 父上!!」

 ……そして、また殴られた。冷静になりかけた頭が、衝撃による細胞破壊を訴える。父上には分からないのだ! リューがいかに素晴らしく尊い女性であるのかということが! ならば俺が父上を――――。

「まだそんなことを言っているのか! あの女は神を謀った大罪人だ! そんな女に懸想していたなど末代までの恥! ……この家が末代まで続けばの話だがな!」
「父上!? どこへ行くのです!」
「王へ申し開きをしてくる! お前はしばらく頭を冷やしていろ!」
「お待ちください! 父上! 父上っ!!!」

 ――ドアが開かない! 外側から鍵をかけやがった! 俺を軟禁する気か?!
 これじゃあ、リューを助けに行くことができない!
 ……俺がこうして屋敷に軟禁されている間に、

 リューを慕う浅ましい外道に、愛する彼女を奪われでもしたら………………!

【炎司リシ者ヨ、――万物ヨリ生マレシ者ヲ……焼キ尽クセ!】

 ……ははっ! やった! 鹿め! 俺を止めることなんかできるもんか! 今行くぞリュー!

 その前にあの盗っ人から、である聖剣を取り返さないとな!

 崇高なる愛のために、俺が穢れた輩を屠るのだ!
 聖女と共に戦い愛された嘗ての王の様に!


 世界中がリューと俺を讃えるだろう!
 世界を救う、気高く誇り高い俺達を……っ!!! あはははははっ!!!




 ◇◆◇ ◇◆◇


 ――くそっ! 閉じ込められた! 父上は聞く耳を持って下さらない!
 何もかものせいだ! リューからを奪い、こともあろうにコーベルの手先に渡すなど……! 神をも恐れぬ所業! 誰も分かっていないのだ!
 真の敵が誰なのか! 神聖なる聖女を貶めるホーグランドとコーベルの弟!

 ああ! リューの愛は分かっているとも!
 君とオレの真実の愛の証しである聖剣は、必ずオレが奪い返す!
 ――ん? 誰か来たようだ……おおっ! アベルではないか!

「召喚術を封じられたのか? テオーデリヒ」
「ああ……全く忌ま忌ましい! アベル、リューを助け出すには、彼女の愛の証しが必要だ」
「勿論分かってるさ!」

 ――おおっ! 同じ女性を愛するライバルでありながら、こいつはオレとリューの愛の証しを認めてくれるというのか! なんと素晴らしい! これも尊いリューの人徳! 聖なる奇跡! オレだけの聖なる乙女……………………!

「テオーデリヒ、このドア壊しても平気か?」
「ああ! やってくれ!!!」

【炎司リシ者ヨ、――万物ヨリ生マレシ者ヲ……焼キ尽クセ!】
 脆弱な木製のドアなど木っ端微塵だ! 諸々も壊れているみたいだが、まあいい。何しろオレは聖女であるリューを迎えに行くのだ。連れて帰れば、何もかもがうまくいく。誰も彼もが喜んで俺たちに跪くに決まってる!

「さっさとずらからないと、部下どもが来ちまう! 急ごう、アベル!」
「ああ! 行こう! そうだテオーデリヒ、グスタフとエドアルドにも声をかけよう。人手は多い方がいい!」

 そうだな! 最後は教会騎士が相手になるかもしれないしな!



「テオーデリヒ! 戻れ! 何を考えているんだお前達!」
 あと少しというところで家人に気付かれた! 誰が戻るか! リューの尊さを理解できない愚鈍の輩め! オレはこの手に、こんなボロボロの剣ではなく、輝く聖剣を手にする!
 邪魔をする者は――――――――――――――――――――――――――悪だ。

「テオーデ…………ぎゃあああっ!」

 ――歓喜の声だ! 愛しく気高いリューの為に立ち上がるオレを讃える歓喜の歌だ! 無力で無能、品性下劣で愚にも付かない我が弟達よ! 見るがいい!
 誉れ高いオレを誇りに思うが良い!

「やるなテオーデリヒ! では俺も……リューのために!!」
「ぐああああっ!」

 ――祝福の赤い花が咲き誇る!! 神もオレ達を祝いさんしている!!








 ◇◆◇ ◇◆◇


「エドアルド、お前は何もするな、後は我々が処理する、おまえは何一つ心配することはないからな?」
 父上はそう言って、今日も朝早くから屋敷を出てった! なに訳の分かんないこと言ってんだ、どうせ愛人のトコだろ。憐れな母上、母上は今日も泣いてる。
 思えば小さい頃からそうだった。父の女癖のせいで泣かされ続けてきた母、そんな母にかける言葉が、あの頃のぼくにはなかった。

 そんな無力なぼくに寄り添ってくれたのは……リューだけだった。彼女は、ぼくが幼少の頃から懇意にしている、リンネ侯爵のバカ息子が心酔している小娘だ。出会った当初、バカ息子と平民上がりのビッチは、それなりにお似合いだと思っていた。

 あの頃の俺を殴ってやりたい。リューのおかげで、両親のことなんか気にすることもなくなった。ぼくの心は晴れ渡った!

 そんなリューが、あのアバズレと裏切り者のせいで窮地に陥っている!
 助けなければ! でもどうやって? バカ息子に頭を使ったことなどできるはずもない! ここはぼくが計画を立てなければ――。

 そうだ、聖剣だ。聖女の証しである聖なる剣の授与! あの時はあのアバズレから裏切り者へ手渡されたそうだが、あれは本来、リューからぼくに対して送られるべき物のはず!
 あのアバズレ、リューから聖剣を奪い、愚かしくもコーベルの弟へ渡したんだな!

 何が何もするなだ! 父上も母上も、事の重大さが分かってないんだ! リューが聖女に決まってるのに、どいつもこいつも本当に頭悪いな! 俺がしっかりしないとな!

「エドアルド?! どこへ行くの?! お願いだから、お前はもう何もしないで!! 後のことはお父様や弟達に任せてお前は――――ぐあぁっ……!」
「何の騒ぎですか兄う――ぐぅっ……!」
 頭が悪すぎて始末に負えない。めくらな父に知恵遅れの弟、こんなやつらに何ができる? 後は任せろ? こちらの台詞だ。

 母上も弟も、みんなそこで寝てればいい。目が覚める頃には全て片が付いてるさ。――ああそこのメイド、なんかこの床汚れてるみたいだから綺麗にしておけ。
「ひっ……!」
 ――受け答えも禄に出来ないのか? どいつもこいつもなんでこんなに頭が悪いんだ! ぼくが直々に三発殴ってやったら眠りこけやがった。

 まあいい、俺の家はホーグランドと違い使用人が沢山いるんだ。俺が戻ってくるまでに、ここ片付けておけよ?!

 さて、バカ息子は屋敷に軟禁されているという話だったな。仕方が無い、ぼくが助けにやってやるか。ぼくはバカを使いこなせる賢い人間だからな!
 待っていてくださいリュー! ぼくは直ぐに愚か者達に制裁を加え、貴女をこの手に抱いてみせる!!!






 ◇◆◇ ◇◆◇



 ――なぜ、こんなことになった……リューが……? リューが……。
 愛しいリュー、大事なリュー、僕だけのリュー……。

「――頭は冷えましたか? 兄上」
「……貴様っ!」

 僕を誰だと思ってる! 次期侯爵グスタフ・リンネだぞ! ここは使用人に使う地下懲罰室ではないか! こんな場所に鎖で繋ぐなど……無礼な!
 冷たく、かび臭い……こんな場所に!!

「兄上が心酔されていた聖女様……でしたっけ? 今となっては、どこの馬の骨とも知れない市井の女のせいで、何もかもを失ったわけですが……ご感想は?」

「馬鹿なっ! お前のようなグズなアホウに侯爵が務まるか!
 お前がすべきは、さっさと僕とリューの真実の愛の前に跪くよう、父と忌まわしきベアトリスを説得することだろうが! ああ、本当にグズでのろまなアホウだ、お前は! さっさと僕をここから出せ!」
「ここにいるのは、兄上の為なのです。頭を冷やし、これからのことについて真摯に話し合いができるというのであれば、私だって兄上をこのような場所に置いていたくはありません。私だって、兄上の代わりに次期侯爵を名乗るなんて、分不相応だと分かっています」
「ならば――!」
「だからこそです! 私は兄上に、これ以上ダメになって欲しくないのです!」


「…………そうか、ありがとう。僕の賢弟」
「兄上!」
「……弟よ、僕はもうしばらく頭を冷やすよ。水を持ってきてもらえるかな?」
「は、はいっ! 今お持――――――――――――――――え? ……ぐはっ!」



「待ちかねたぞ、エドアルド!」
「遅くなり申し訳ありません!」
「鎖を外してやろう」
「アベル! 家から出られたのか?」
「当たり前じゃないか! これしきのことで俺が止められるものか!」

「さあ、コーベルに見せつけてやるのだ! 愛するリューの偉大さを!!!」

 ――そして、愛しい彼女をこの手に抱くのだ……!!!







 ◇◆◇ ◇◆◇


 ――領内会議の議題は今日も、偽聖女が仕出かした諸々の後始末に関してだった。忌ま忌ましいことこの上ないが、面白い駒が手に入ったのでよしとしよう。
 国内の穢れ問題は、嫌々ながらもモニカ嬢が請け負ってくれるだろう。ジャンをうまく唆せば彼女を我が家に取り込むことができる。本音を言えば、己のものにしたいところだけが、無体を働けばこちらの命がないからな。
 あの能力も捻くれた性質も実に好ましいのに、少し、残念だ。

「ウェルス卿、屋敷の方が騒がしいようですが」
「ん?」

 警戒しながら道を進めば、前方に助けを求める人々が屋敷へ押しかけている様子が見えた。どうなっている?! しかも民衆を追い立てているのは……ガーヌの小娘に心酔していたあの四人だ!
 なんだ? 穢れか? いや、それだけじゃない。不自然な赤黒い何かが見える。目を凝らしてその正体を見極める。

 吐き気がした。

 何をどれだけ殺めれば、あれだけの返り血が周囲に舞うのだ!! 穢れと相まって、この世のものとは思えない、悍ましい光景が視界に入る。
「あの四人の元へ馬車を――いや、ボクが行く!」
 馬車で四人の元へ向かえば、馭者がどうなるか分かったものでは無い! 幸い、ボクは多少の武術と魔術に通じている。馭者よりは、生存確率が高いだろう。
「お前は屋敷へ戻り守備兵を何人か連れてこい! 多くは連れてくるなよ!」
「了解しました!」

 一行を追い越す馬車を見送り、背後からあの四人へ迫る。

「ウェルス卿……」
「ウェルス……」
「ウ……」
「アアア……」
 なんだこいつら……麻薬でもやっているのか?!

 土気色の肌、飛び出しかけた眼球、だらりと開いた口元に歪んだ背筋……その全てが、化け物のような印象に拍車をかけている。

 人としての話し合いができないのであれば覚悟を決めなければならないが――……蹄の音と嘶き?
 もう連れてきたのか?


「兄上!!!」

 ――なんでジャンがここに……!









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

成人したのであなたから卒業させていただきます。

ぽんぽこ狸
恋愛
 フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。  すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。  メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。  しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。  それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。  そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。  変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。

【コミカライズ決定】婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です

灰銀猫
恋愛
両親と妹にはいない者として扱われながらも、王子の婚約者の肩書のお陰で何とか暮らしていたアレクシア。 顔だけの婚約者を実妹に奪われ、顔も性格も醜いと噂の辺境伯との結婚を命じられる。 辺境に追いやられ、婚約者からは白い結婚を打診されるも、婚約も結婚もこりごりと思っていたアレクシアには好都合で、しかも婚約者の義父は初恋の相手だった。 王都にいた時よりも好待遇で意外にも快適な日々を送る事に…でも、厄介事は向こうからやってきて… 婚約破棄物を書いてみたくなったので、書いてみました。 ありがちな内容ですが、よろしくお願いします。 設定は緩いしご都合主義です。難しく考えずにお読みいただけると嬉しいです。 他サイトでも掲載しています。 コミカライズ決定しました。申し訳ございませんが配信開始後は削除いたします。

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)

蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。 聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。 愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。 いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。 ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。 それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。 心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

処理中です...