クズは聖女に用などない!

***あかしえ

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第一部

27話

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 何が何だか分かりませんが、穢れは全て消失したようです。しかし、釈然としません。何故で――――ああっ! 穢れが移動した先を調査しているはずのミントとパックが、ここにはいません!
 ……ということは、これは本体ではない――――――。

「わあっ!」
「やったーっ!!!」
「すっげー!」
「嘘だろ?!」

 背後から……歓声が聞こえます。
 人払いの術をかけ忘れました……。あの状況で人が集まると思いますか普通?!
 そっちに魔力を割くくらいなら、攻撃に全力を傾けたいと考えますよ?!
 そっちまで意識できるほど、余裕だったわけではありませんからね!?
『やったやったーっ!!!』
 ――マクマ、五月蠅い。
『この村直すかっ?! 綺麗にするか?!』
 ――コロロ、嬉々として余計なことを言わないで頂戴。どこでが聞いているか分からないのよ!


「聖女様!」
「聖女様だ!!!」
「違うと言っているでしょう!!!」
「まあまあ、モニカ嬢。皆がそう思ってしまうのも仕方のないことだよ。ここは片付いたよね? 市長が君に話があるそうだ」

 廃村入り口に大量に押しかけていた一般市民の中から現れたウェルス卿は、あくまで優雅にただそこにいるように見えました。例の胡散臭さを限りなく消し――。
「村を建て直されるのですか?」
 …………コロロが逃げました。



 ◇◆◇


 夜までには一行が宿泊予定の宿屋に戻ることができるよう綿密な時間配分を行った結果……三時間以内に出立すれば間に合いそうです。ですので、さっさと本題に入って下さい。

 市長との顔合わせのため連れて行かれたのは、街の中心からやや離れたところにある彼の屋敷でした。豪華な昼食をありがとうございます。
 それと、すれ違う皆様から「ありがとうございました、聖女様」と感謝の言葉を頂いております……。お詫びと訂正をお願いします。

「それで、あの廃村についてお伺いしたいのですが、あの村が破壊されたのはつい最近のことではありませんか?」
「はい……仰るとおりです。我々は、突然の暴力に唯々怯え隠れ逃げ惑うことしか出来ませんでした……」
「襲ってきたのは悪魔ですか?」
 ……市長の顔が優れませんね。
 溜まりに溜まった穢れが今日のように大量の悪魔を呼び寄せ、村を破壊し尽くしたのだと思っていましたが、これはどういうことでしょうか?

「モニカ嬢、こちらをご覧下さい」
 市長の様子を凝視していた私に、隣に座っていたウェルス卿が敗れた布きれを机の上に乗せ、私に確認を促してきました。彼が提示したそれには、とても見覚えのある家紋のが縫い付けられていました。

 ――ガーヌ公爵家の家紋です。

「……これは?」
「あの日、襲ってきた野盗が外套の下に着ていたものです……」

 項垂れる市長の話によると、今から三ヶ月ほど前、突然野盗の集団があの村を襲ったのだと言います。
 彼等は山間部より現れ、そこに面していたあの村だけを襲い底に住む人々を皆殺しにしたようです。
 更に奇妙なことに、村の人間が街へ逃げ込まないよう街の衛兵が村へ入り込まないよう見張りさえ置いていたそうです。

 彼等の動きは、野盗とは思えないほどに統率の取れた洗練された動きだったと言います。村人は為す術なく殺されて、朝を待たずに彼等は戦線を離脱するものと思われていましたが…………多くの血が流された為か否か、尋常ならざる瘴気が発生しが悪魔を形作り、翌朝には全ての死体が残っていたそうです。

 事後処理を行おうとしていた市長や衛兵に対し、ガーヌ公が圧力を用いてその役割を買って出ました。
 この布切れはその前に、衛兵がかろうじて持ち出した唯一の証拠。
 ガーヌ公は瘴気の吹きだまりのようになってしまったこの村を、焼き払おうとしているのだそうです。


「もう一つ質問しても良いでしょうか?」
 ――気になっていたことです。これだけは聞いておかなくては。
「はい、何でしょう?」
「あの村の中心にあった井戸についてなのですが、何か変わったことなどありましたか?」

「……やはり、お分かりになるのですね」

 あの井戸は約一年程前から使われなくなっていたようです。正確には、聖女様がこの街を経つ一月ほど前に。
 その頃、この村にというよりも聖女様の周りにはいくつもの不幸が重なっていたらしいです。
 まずは、可愛がっていた妹の。そして二つ目は、彼女が初めての奇跡を起こした根治不可能と思われていた少女の……
 自然死ではなく、犯罪に巻き込まれた末の非業の死だと。

 その犯人と思しき少年達の遺体が、例の井戸の底から発見されたのだと言います。
 聖女様が出立されて、一月後のことだそうです。









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