クズは聖女に用などない!

***あかしえ

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第一部

24話

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 初志貫徹! 高位神官や極一部の民衆の冷たい視線など気にも止めず、聖女様は観光を満喫しております。
 せめてもう少し観光してくれていれば、聴衆が穢れを生み出さずに済むのですが……。

 事前通知されていた通り、初日は王都の観光スポットを巡って終わりました。
 王都はそれほど穢れが侵攻していないので最悪「唾でも付けて治しとけ」対応でも自然浄化治癒するでしょうが……。ひとまず、私は残された『聖女様の身の回りのお世話』という任を果たさなければなりません。愚痴や罵詈雑言を聞き流すだけですが…………おや? 照明が切れたのでしょうか? 暗いですね……??


「ねえ! 今日のわたしどうだった?! 綺麗だったでしょ!?」
「ああ勿論だ!」
「綺麗だよ、リュー」
「君は本当に、本当に…………」
 聖女様のように割り当てられた客室の扉を開けるなり、驚くべき光景が目の前に飛び込んできました! なんと……下着姿の聖女様と、四バカがいるではありませんか!!! 何してんですか!!!

 ……ひとまず問答無用で彼等を叩き出しました。

 廊下の照明が暗くなっていたわけではなく、聖女様が今日一日で周囲の穢れを大量に寄せ集めてきてしまったようです。穢れに耐性があるのは良いことなのでしょうか? ご自分では気付けず、浄化することもできないようではありますが。
 しかし、このままでは明日に差し支えそうですね。
 ばれないように祓っておきますか。

「……ええと、王宮でのお戯れは程々にされるのが宜しいかと思われます」
「うふふっ、モニカってば真面目なのね! 全く良い方に作用してないけど」
「お恥ずかしい限りです」
 聖女様を指導教育する気はないのでどうでもい――――――――痛!!!



「――ねえ、今日のパレードの見たぁ?」
 心当たりが多すぎて、誰の事を指しているのか分かりませんが、一番可能性が高いのは――。
「コーベル嬢……ですか?」
「そうそう! うふふっ、わたしが殿下と腕を組んで歩いた時のあの女の顔ったら! あははっ! 普段どれだけ澄ましてたって、わたしに嫉妬してるのが丸わかり! 最っ高に気分いいわ!」

 ……これは……些か、カミングアウトが過ぎるのではないでしょうか?
 聖女様、パレード初日からそれほどまでに高揚されて、なのでしょうか?

 明日も早いので早めののご就寝を何とかご理解頂き、漸く寝たので神聖魔術をかけ客間を出たところで、ジャン様と遭遇しました。足下には倒れ込んだ四バカがいますが……この四バカまさか聖女様の寝室へ…………え、いえいえ、まさか?!?

「モニカ嬢、お部屋までお送りします」
 ――大丈夫です――とお断りをするのも勿体ないので、お願いすることにしました。

「モニカ嬢は今日一日、どのように過ごされていましたか? 無理など言われていませんか?」
「全然大丈夫です!」
 一瞬、ウェルス卿のことが頭を過りましたが、只でさえ家族と揉めている状態のジャン様にはとても言えません。明日は、何とか彼を振り切らなくてはなりませんね。あの馬車が私専用であれば、部外者立ち入り禁止方式を採ることができるのですが……難しいですね。
 コロロが兎にも角にも壁を作りたがるのも困りものですし……。

「あの、本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫です!!」
 ――ジャン様、最近、特に鋭くなっていませんか!?





 ◇◆◇ ◇◆◇


 二日目から五日目にかけて、概ね順調に事は進んでいるのではないでしょうか。
 私は、聖女様が廓清パレードに勤しんでいる間、で席を外しておりましたので詳細は分かりかねますが。
 私が知る廓清パレードとはえらく異なりますが、お歴々が最終的に許可を出したのですから問題はないのでしょう。

 ウェルス卿が付いてきてしまったことの方が問題です……!!!

 ウェルス卿と顔を合わせ、皆様ピリピリされていらっしゃいます。
 私が連れ込んだとして責められ一悶着ありましたし、ジャン様とウェルス卿は冷戦状態になりますし、聖女様はなぜか色気づいておられますし。やはりあの時、ジャン様に素直に相談すべきでした……。

 子爵家の小娘である私が、公爵家の長男に物申せるはずもありません。いきなり最の手段をとるのは、いくらなんでも気が引けます。

 王都から出発した馬車は合計十二・三台、その内七台には聖女様の着替えその他が詰め込まれています。
 御子息方の身支度は一人、幌馬車一台程度でしょうか? ジャン様と殿下は戦闘に備え、替えの服を持ってきていますがそれでも鞄一つか二つなのですが……。
 人前に出る貴族の嗜みとして、煌びやかな衣装を身に纏うのは当然のことだとは思いますが、皆様、行き過ぎていませんか?

 彼女と一部の仲間達は昼食後、態々別室で着替え午後からのパレードに臨むのですが、彼女等のこのような我が儘予定外の行動は迷惑だと、高位神官が苦情を寄越します。
 事後に愚痴しか言えないのならば、永遠に口を噤んでいれば良いと思います。
 私のように。

 しかし、神官様の愚痴は止まるところを知りません……。

 その時々に赴いた地の領主邸で、毎夜聖女様のために舞踏会が開かれているのですが、それについても――。
「なぜ、晩餐会ではなく舞踏会なのだ! まさか国庫使ってないだろうな?!」
 と、烈火の如くお怒りです。ご本人に言えば宜しいのに。私は止めませんよ?
 ウェルス卿の話では、ガーヌ公が根回しをして開かれているのだそうです。公爵令嬢として社交は責務の範疇でしょうが、今は聖女として赴いたはず――。


 教会も王族も高位貴族の皆様も、聖女様に何を求めていらっしゃるのでしょうね…………。


 しかも毎度どの夜会でも、聖女様は羽目を外しすぎてしまい周囲の方々から顰蹙を買う始末です。しかし、聖女様から言わせれば「皆ノリが悪い」、「頑張っている自分に対してその態度は非常識!」なのだそうです。
 私は夜会に出席できるような装いを持ち合わせておりませんので、お屋敷の控え室で待機しておりましたが、神官様や現地の皆様より苦情を通り越して泣きつかれておりました……。

 物陰から様子を窺うと、聖女様は現地の見目麗しい殿方を侍らせて楽しんでいる様子を確認できることもありました。私に泣きついてきたご令嬢方は、彼等の縁者かもしれませんね。……可哀想ですが私には何もできません。

 確か二日目の夜会で、ジャン様が私を探しに控え室へやってきたことがあったのですが、聖女様もジャン様を探しにいらして来たため、愚痴を言いにやってきたご令嬢と対面し一触即発の事態となったこともありました。
 元々血気盛んな性格だったのでしょうか?







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