クズは聖女に用などない!

***あかしえ

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第一部

17話

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 音楽は講堂から漏れてくる音、光は不審者対策で明るくしてるのでしょう……ということで、ジャン様は納得されたようです。周囲を軽く見回った後でのことですが。

「すみません、手筈が甘かったようで要らぬ心労をかけてしまいました」
 私の我が儘のせいで苦労し挙げ句にしょんぼりしてしまっているなんて、申し訳なさ過ぎます!

「こちらこそ、我が儘に付き合わせてしまってすみませ――」
「この間からモニカ嬢が何を謝っているのか、皆目見当がつかないのですがもし、今のこの状況を貴女の我が儘の帰結だと考えているのなら、貴女もこの状況を望んでいたのだと、理解してもいいですか?」
「え? ええ……」
「なら、いいです」
 そう言うとジャン様は私の手を取り、交差部まで歩き出しました。
 彼には見えていないのでしょうが……精霊達の……生暖かい視線が……。


 のいない静かな空間、天井のステンドグラスから暗闇に降り注ぐ光、どこからともなく聞こえてくる音楽……幻想的でかなり美しい光景です。
 精霊達が『キャーキャー』と騒いでいるのを除けば。
 ジャン様には、精霊の存在の一切が感じ取れていないようで、ただ純粋にこの光景を楽しんでいるようでした。
 祭壇前で沢山の精霊達が踊っていて、こちらを誘うように見ていますが、なぜでしょう?

『モニカ、何で踊らないの?!』
 マクマが不思議そうな顔をして突進してきました! 何事?!
『今までの子みんな踊ってたのに?? ここってそういう場所なんじゃないの??』
 ――マクマが何を言っているのか皆目見当がつきません。礼拝堂で踊る人がいるでしょうか? 奉納演舞? ……だからそれは聖女様の役目だと――。
『え? 何がダメなの? ここはそういう場所なのに! とにかく、モニカが踊れば、この辺の邪気を一気に払えるからさ!』
 ――だからそれは聖女様が行う<神気の舞>では? 私がしても意味がな――。
『あー! えぇっと、誰でも大丈夫なんです! 誰が踊っても払えるものなんです!』
 ――ミントまで!! ……何企んでるのかしら?

「どうしました? モニカ嬢?」
「え? あっいえ、何でもありません。俗世から離れて幻想的な空間にいられて、落ち着くな……と思っていただけです」
 ――私の我が儘でも大変な思いをさせているというのに、更に精霊の我が儘にまで付き合わせるわけには参りません!
『わがまま扱い!?』
 マクマがショックを受けていますが、ジャン様にご迷惑をおかけするわけにはいかないのです! 
『モニカ様! ここで踊るか、地道に集積場を回るかの二択なのです!』
 ――だから、どうして私に言うのよ! 聖女様は?!


「それに……この光景は、今回みたいな機会でもなければ見ることができなかったものです。貴女と同じ綺麗な物を見れて、俺は嬉しいですよ」



 ――――――――――――――――――――――――――――同じじゃ、ない。



 同じ景色を……見ることが、できればよかった。
 ずっと隣にいることはできなくとも、ずっと……同じ景色を見ることができれば私は…………私は――――。


『モニカ、大変だ!』
「――え?」

 突如、マクマの切羽詰まった声に思考がかき消され――気付けば和気あいあいとしていた精霊達の様子が一変しています!
「モニカ嬢! 離れないで下さい!」
 突如礼拝堂内が真っ暗になり、先程まで鳴り響いていた音楽まで消えている――それに驚いたジャン様が私を守るように背に庇い周囲を警戒し始めました。

 ――マクマ!
『モニカ、大変だよ! 誰かがあっちの方で穢れを暴走させたみたい!』
 ――講堂方面? 聖女様とコーベル嬢で何かあった?! ……あの聖女様、いつになったら神聖魔術を使えるようになるのかしら?!

「ジャン様、講堂の方で穢れが暴発してるらしいです!」
「どうして貴女がそれを――」
「それは……あの、後で説明します! あの、講堂って……どうやって行――」


「ボクがご案内しましょう。弟に事情を説明するより、ボクと共に講堂へ急いだ方が人々のためだと思いますが、いかがでしょう?」

 礼拝堂の入り口から現れたウェルス卿は、はじめから全てを分かっていたかのように、そこにいました。



 ◇◆◇

 マクマとミントの様子から、一刻の猶予もないであろうことは分かっていました。ジャン様になんと説明をしたらよいのか……そんなことを考えている余裕はありませんでした。

 なぜでしょう?
 私は一体何のために……穏やかなひとときをなげうってまで、この胡散臭い男ウェルス様と行きたくも無い場所へ全力疾走をしているのでしょう?

 講堂への道すがら、既視感を覚えました。
 遠く聞こえる悲鳴と、現場から逃げてくる生徒達…………。今回は道端に生徒達が転がっていることはないようですが……。
「――わたしは聖女なのよ! わたしを守るのは当然でしょう?! アンタ達――」
 ……という、非常に残念な声が聞こえてきます……。

 あと、講堂への道が外灯が付いているにも関わらず暗かった原因が分かりました。常軌を逸したです。あんなに綺麗だった礼拝堂の直ぐ側にこんな穢れがあったとは……ああ、もしかして、それでマクマ達は踊れと騒いでいたのでしょうか?
 ……いや、だとしても私には本来関係ない事象なのでは??

「貴女は聖女なのでしょう?! この体たらく、恥ずかしいとは思わないの?!」
 ――コーベル嬢の怒鳴り声も聞こえてきます。思わず『はしたのうございます』の意を込めて、ウェルス卿をチラ見してしまいました。
 ……黒い笑みをいただきました。


 講堂内へ足を踏み入れると、穢れの発生源と思しき暗闇状の一画が目に入ってきました。
「モニカ・ホーグランド! 貴様っ! 今までどこに行っていた!」
 暗闇から聞き覚えのある、品がなく軽い調子の罵声が聞こえてきますが……どなたでしょう?

「リューは尊い存在であるというのに、貧民にも等しい貴様如きを友人として側に置いていたのだぞ! それをよくも! 少しは身の程を弁えたらどうだ!!!」
 暗闇から現れたその人は、グスタフ卿でした。お元気そうで何よりです。

 ですが、阿呆の相手より何より、一番初めに対処しなければならない問題が、目の前に立ちはだかっています! 見覚えのある失敗獸召喚獣はグスタフ卿の召喚獣で間違いありませんね? ……啓蒙するより召喚獣使用不能のを指した方が早いでしょうか?

 この暴走獸、自分で勝手に配下を呼び出して講堂内を滅茶苦茶にしているようです。講堂内には逃げ遅れたと思しき生徒達がまだ残っています。
 仮にも聖女なのですから三文芝居よりも彼等の救出を優先して欲しいところですが……。

 暗闇の中からは未だ争い合う声が聞こえてきますね。姿は見えませんが、再び始まった三文芝居を要約すると――。

 殿下及びジャン様と連絡が取れずに落ち込んでいた聖女様がいました。彼女を真に愛する者達は、傷心の彼女を守り慰めるために共に夜会へ赴くこととなりました。
 ところが! そんな心優しいが故に傷を負った麗しい聖女様の目の前に、コーベル嬢が殿下を引き連れ勝ち誇ったように笑ったのです!!
 高貴で選ばれし清らかな彼女を愛する者達が、へ正義の鉄槌を下すべく、聖女の御名の下、聖なる獸を召喚したのです……!!!

 ――ということらしいです。

 どっちもどっちの情けない顛末です。聖なる獸とは、穢れに穢れまくり放置すれば悪魔に変質しそうな、あの、暴走獸のことでしょうか。道徳中心のカリキュラムを、組み直したらいかがですか?

 いつもの様子で聖女様がコーベル嬢に喧嘩を売ったのでしょうが、今回はコーベル嬢にも逆ハーメンバーがいた為、揉めに揉めてこんなことになったようですね。
 ……参りました。神聖魔術を使うには、人目に付きすぎますし……。

 聖女様の偏狂集団逆ハーメンバーに絡まれつつ、殿下の姿を探しているのですが……もしかしなくとも、あの暗がりにいらっしゃるのでしょうか? 殿下にはあの穢れが見えないのでしょうか?


「ウェルス卿! なぜ、貴女がこの女と……!」
 暗闇から聞こえてくるこの声は、コーベル嬢のである例の二人の内の一人のようです。

「ユーグ・ゴセックか。この見苦しい諍いは、一体どういうことかな?」
 ユーグ・ゴセック様でしたか。ゴセック伯爵家の長男、御年十八。隣国へ留学に行っておりましたが、なぜか緊急帰国しコーベル嬢のに加わりました。もう一人のフラン・アジェ辺境伯子息も同じような経緯でここにいらっしゃるようです。隣国とは友好関係にあるとはいえ、ここまで自由に行き来はできないはずなのですが――自衛のため、ここまでは調べましたが、これ以上は興味ありません。

「申し訳ございません! ですが、彼等の愚行故にが傷つけられるのは耐えられないのです!」
「この愚かな者達に、の気高さを理解させることなど不可能であることは、分かっているのですが、それでもっ……!」
 ……また三文芝居ですか? そんな悠長なことをしている場合でしょうか?!


「聞いているのか、モニカ・ホーグランド!!!」
 誰の怒鳴り声なのか分かりかねますが――本来、私がする必要のない『一般生徒の救護活動』を行っているのです。これ以上邪魔をしないでいただきたいのですが?

 まず、暴走獸対策用の結界を張り、次いで暴走獸が勝手に喚び出した魔物擬きを、害虫を駆除するように叩き潰しつつ、動ける生徒達を外へ誘導し、外にいたジャン様に仮設救護室の手配をお願いして等――――忙しいのです!!

「そいつらなど捨て置け! リューを守らんか愚か者!!」
 いつの間にか近づいてきていたアベル卿が、私に殴りかかってきて――――怒ったマクマとミントから、ダブル制裁を喰らいました……。


『モニカ様! あの穢れを祓うのに、神聖魔術を使えないのであれば、パックをお呼び下さい!』
 ――ミントがウェルス卿の目の前で、私にそう提案を持ちかけてきます。……ウェルス卿の目が、見開かれております…………。
『急いでモニカ! このままだと、悪魔になっちゃう!』
 マクマから爆弾発言が飛び出しました。一刻の猶予もないというのに……この場の全員、実に元気ですね……皆さん実は、私以上に屑なのでは?!

『モニカ早くーっ!!!』
 マクマが少々苦しそうです。もしかしなくとも、状況が悪化しないよう彼なりに働いていたということでしょうか?!
 ……心の中で喚べば、目立たずに済むでしょうか。届きますかね?!

 ――パック!!!

「…………」
『…………』


 ――――――――――――――――――届かないようです!!!


 ――ああもう、こうなったら!

「――殿下!!! 今すぐ全員をここから連れ出して下さい。貴方の権限で!!!」
「分かった!」
 やはりあの暗がりにいらしたようです。私と殿下のやり取りに、愚かな仲間達がまた三文芝居を始めようとしていましたが、殿下の一喝でようやく全員講堂の外へ避難しました。

 ウェルス卿以外は。
 非常時につき遠慮はなしで、出て行けと言ったのですが出て行きません。押し問答をしている内に、暴走獸の動きが止まりました。
 これはいよいよ、本格的に悪魔へ変化し…………終えてしまいました。禍々しい出で立ちですね。流石悪魔。ウェルス卿も緊張しているようです。……私を盾にしたりしないでしょうね?

 私の神聖魔術で対処できるでしょうか? 素直にパックを喚びますか?
 ウェルス卿の目の前で? 彼、信用できないのですが――張った結界も限界のようなので、仕方がありません。

【世ノ光成リシ者ヨ、――混沌ヨリ出デシ汝ガ敵ヲ……撃チ滅ボセ!】



 心配は無用でした。一撃必殺無事完了です!
「……へえ? 間近で神聖魔術を見たのは初めてだよ。しかも、これほどのものを」
 背後で、いかにも悪いことを考えています、と言わんばかりの声を出すウェルス卿の記憶を消す呪文を調べておけばよかったと、心底後悔しております……。
 さて、さっさと邪気を払って、この場からトンズラしましょう!

【世ノ光成リシ者ヨ、――混沌ヨリ出デシ汝ガ業ヲ……滅セヨ!】
 さて、これで問題は全て片付きました。後は、救護活動に回っているジャン様のお手伝いを――。


「君は……何者だ?!」
 誰もいないと思っていた穢れの巣窟から、見知らぬ白髪交じりの男性が現れました。あの場にいたのですか?! え、殿下の命令に従わないって……この人一体……?!

「……ご無沙汰しております、枢機卿――」


 ……聞かなかったことにします。
 顔と名を覚えられる前に、逃げることにしました!








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