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学園編

62.最後の中間イベント3

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 さーて、今回もパトリックと定期報告という名の相談会を開催しないと。

 最近はめっきり寒くなってきたから、外で会合するのは体調不良をまねくので、こうして人気のない旧図書館の一画で相談会を開催することが増えてきた。
 でも、こうして相談会をするのも、あと少しだろう。

 殿下が卒業する春には……全部、片付いているといいんだけど、な。


「本物をお披露目ひろめするの?! え、何のために?!」
「前から十年に一度は特別展示してたぞ?」
「うそっ?!」
「前回もその話、実はあったんだよ。お前の下までうわさが流れてたのがその証拠だ。で、話が消えたのはお前が色々とやらかしすぎてたからだ」

 それを言われると痛い。
 それにしても、時間を戻すような特殊能力がある国宝を、人目にさらすって何考えてるのかしら? ああ、それとも偽物を出すとか?

「そう言えば、どうしてパトリックはあれに時間を戻す力があるとか知っていたの?」
「俺の家は、お前の家より王家に近い存在だからな。それに、昔、クリスから聞いたことがある。実際体験するまでは半信半疑だったけどな」

 その程度の認識だったのね。
 先回りしてあれを盗んだ人間も、眉唾にすがろうとしていたのかしら?

 だとすると――原因は、やはり私にあるよな。ミーシャ・デュ・シテリンはそうとう色々やらかした。しかも記憶にすら残っていないという極悪ぶりだ。
 被害者という名の容疑者は星の数だ。


「お前、今回はナナミで参加するって聞いたけど、本当か?」
「え? あ、はいそうですけど。何かまずいですか?」
「いや……」
 歯切れの悪いパトリックというのも珍しい。

 うーん、でも、最近は口ごもることも多くなってきていたか。
 最近……マリー・トーマンと親しいことに、関係あるのかな?

 前回のパトリックの様子を、思い出すことはできない。じゃあ、漫画では?
 菊原きくはら菜々美ななみの記憶にある『パトリック・シュトルツァー』は、クリストフ殿下とマリー・トーマンを巡り、ドラマチックな三角関係を繰り広げていた。
 今は、どうなのかな。

 っていうか、マリー・トーマンは?! なんか感謝祭ではボディーガード軍やパトリックと踊っていたみたいだけど、肝心のクリストフ殿下とは踊ってはいない。

「で、お前はナナミとしてドレスを着て素顔で出るのか? さすがにバレると思うんだが? そのスタイルで行ったら衛兵につまみ出されるぞ」
「平民には、学園敷地内から王宮直通馬車が出ることになってるので、それに乗る予定です!」
「ああ、なるほど」

 なんだろう? これは失策だったろうか?
 パトリックの口から、いつもの切れのいい言葉が返ってこない。何をそんなに悩んでいるの? そ……相談にのりたい……。

「クリスからは、何も言われていないのか?」
「ミーシャとして、ですか? 何も言われてませんよ?」
「……そうか」

 パトリックはそれきり何かを考え込むような顔をして、黙り込んでしまった。
 相談に、乗りたかったんだけどな。


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