悪役令嬢、猛省中!!

***あかしえ

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学園編

55.魔法使いのおばあさん・再び2

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 これがヒロイン補正というものだろうか?
 マリー・トーマンはダンスに触れる機会など、今まで全くなかっただろうに彼女は二週間もかからず、ダンスを習得してしまった。チート羨ましい……。

 しかも、マリー・トーマンに女性目線でアドバイスなどを行おうものなら、ボディーガード軍団に奇異な目で見られる始末だ。未成年に見えるが実はその道のプロなのか、驚くほど鋭い。

 前回も、彼らがマリー・トーマンを護衛するようになってから、徐々にうまくいかなくなってきていた。


 ◇◆◇ ◇◆◇


 ――さて、マリー・トーマンの新しいドレスを用意しなければ。

 マリー・トーマンは前回のドレスを大事に大事に保管している。今回も、それがあるから出ると決めた節もあるらしい。まあ、私は公爵家のご令嬢だから、ドレスを用意すること自体は問題ない。
 問題なのは、彼女にそれを受け取らせる方法だ。どうしたものか……。


「君は……ミーシャ・デュ・シテリンか?」
 ――えぇっ?! な、なんで……!!!

 ここは王都のセオドーニア商会、いつもの喫茶スペース。
 今日は休日。いつものバイトを済ませ、いつもの喫茶店でランチを食べながら、どうマリー・トーマンをだまくらかそうかと考えていたはず……この人誰っ?!

「ああ、すまない。君だったか……そうか、君たちは髪色が同じなんだな失礼した」
 私服に帽子とサングラスのため、初見しょけんでは分からなかったけれど、彼はマリー・トーマンのボディーガードの一人だ。
 なんで、ナナミ状態の私をミーシャと思った?! 公爵令嬢と平民の小娘なんて、共通点一つもないじゃないか!!

 なんで、そんな心臓に悪いこと――――――――――――――殿下もいる!!!

 ボディーガードの後方数メートルにクリストフ殿下がいるのが見えた!
 彼も目の前のボディーガード同様、平民が着るような地味なデザインのスーツを着ている。この人たちはこんな場所で何をしていたのだろう?


「奇遇だな。相席をしても?」
「…………はい、どうぞ」
 殿下は何気に機嫌がいいらしい。
 折角機嫌のいい殿下のご機嫌を損なうのは面倒だったので、相席を承諾することにした。結構ジャンクなこの店の味がお口に合うのだろうか?

 確かにこのショッピングモールは、衛生面にも治安的にも問題ない。
 事実、私だって一人で普通に使っているし、両親がお墨付きをつけるレベルで安全も保証されている。私が今いる喫茶店も、高級志向のファミレス程度にはコジャレたものだ。
 だけど、この国の第二王子が正式な護衛も付けずに訪れるに相応しい場所かと言われると、疑念が残るのだけれど――。
 ・
 ・
 ・
「では殿下、私は先に失礼させていただきます」
「ああ」
 いや、ちょっと待て、二人にしないで頂きたいのですが…………ああ、帰ってしまった。いいの? 貴方は護衛ではないの??

 四人がけのボックス席に対面するように座っているこの状況。なんでこうなる?
「何か悩みごとでもあるのか?」
「い、いえ……」

 先ほどまでの雑談の中で、殿下も時折お忍びで王都へ赴いていたらしい。
 全然気付かなかった……私とパトリックが何やら企んでいたところとか、見られてないよね? 大丈夫かな……??

 あの場では王都の治安を見るためとか言っていたけど、もしかしなくともマリー・トーマンのため? 彼女に会いに来たとか? それならば、ずっと健全だ。

 ――学園にも王城にも居場所がないなんて、想像してしまうよりは。


「先程からずっと、あの服飾店を見ているようだが?」
 ――鋭い!
 私が見ていた店は、高級店の平民向けブランドを取り扱っている被服店だ。別にあの店にマリー・トーマンのドレスを発注しようと考えているわけではない。『あの店に売っている格安ドレス』のていで、あの子を説得しようかな、と。
 ……そうだ! ここで殿下に布石を打っておいて、説得力を上げておくのも一つの手か!
「ええ、あのお店は結構リーズナブルなので、マリーのドレスを格安で手に入れることができるはず! 殿下もそう思いませんか?!」
「そう……なのか?」
 殿下はまだ市場価格には疎いのか。ここは押し切ってやる!
「そうなんです! マリーはこのままだと前回と同じドレスで出る危険性があるんですよ……。事前に分かっている誘因は排除しておきたいんですよ」
 あの子、揉めると肉弾戦で戦おうとするからな……。


「……君はあの子が好きなんだな」

 ――好き? 私……ミーシャ・デュ・シテリンが、マリー・トーマンを……?

 この人にはそう見えている…………の?




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