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学園編
47.多面的な三角関係の足音2
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――クリストフ殿下がなんか妙なことを言っていたけど、私のことでは……ない、はず。
「――おかしな事を言ったな。気にしないでくれ」
という彼の発言で、あの場は別れた。
マリー・トーマンがパトリックと懇意にしている様子に動揺したに違いない。それで、言葉を取り繕おうとして失敗した可能性の方が高い。
だから、そんな言葉で――――――動揺したりしない。
◇◆◇ ◇◆◇
「うわっ!」
購買近くの廊下を歩いていたら、急に背後から突き飛ばされそうになった。
犬も逃げるレベルの殺気だから事前に気付いていたけどね。鮮やかに避けて、相手の素顔を拝んでやると……デリア・リナウド侯爵令嬢だった。
長期休暇が終わってしばらくしてのお昼休み。
腹ごしらえをするために購買へ向かっていた私に突進してきたのは、正確にはデリア・リナウドではない。元・わたくしの取り巻きで、現・デリア・リナウドの取り巻きであるご令嬢の一人。
廊下にいるのは私たちだけではない。
購買には下位貴族や平民といった、比較的に地位の低い人間がたまりがち。今も、面倒事は起こさないでくれと言わんばかりの表情で、こちらを見ている。
その気持ち、よく分かります!
デリアたちの目的は不明。
好戦的に応じた方がいいのか、スルーした方がよいのか……。
「まあ! お前のせいで制服に染みが付いてしまいましたわ!」
「私にかすりもしていないのに?」
「無礼な! たかが平民風情がわたくしたちに意見するつもり?!」
群がる高貴なるご令嬢方。
適度な人数なら良い匂いだと言いたいところだけど、大量に群がってくるものだから香水臭い。用量用法は守って使えば良いものを。
取り巻きのご令嬢がチンピラよろしく周囲の生徒たちを威圧して、この場から退場させ始めた。うーん、この子たちは本当に深窓のご令嬢なのだろうか?
「あの身の程知らずな小娘に思い知らせてやろうとする度に、お前が邪魔をするから……っ!」
憎々しげにそう呟くデリア・リナウドの声が聞こえる。
扇子があれば悪役令嬢の出来上がりなんだけど、惜しいな。なんて思っていたら、彼女が取り出したのは……ペーパーナイフだ!
そういえばグニラ・オレーンも……。
どいつもこいつも、それ悪役令嬢じゃなくて、スケバンだから!!!
「震える手でそんなものを持っていたら、怪我をされますよ?」
ペーパーナイフくらい誰だって使う。
しかし今、それを手にしているデリア・リナウドは明らかに緊張している。凶器と認識し、手にしているからだろう。そして、それを私に指摘されたところで、彼女は引かない。
ブーツは頑丈な皮と薄い合板で出来てるから、蹴りを入れれば私は無傷でナイフを回収できるだろう。デリアは怪我するだろうけど。正体不明の私が、この件で火の粉を被ることもないし……この方法でしばらく黙らせるか。
『身の程知らずな小娘』って、マリー・トーマンのことだろう。
放置はまずそうだ。
「お黙りなさい! お前がいけないのよ! お前のような下賤の輩が……殿下や彼の周りをうろちょろするから!! だから、彼がおかしくなるのよっ!!!」
取り巻きさえドン引きするレベルで、デリア・リナウドが怒り狂っている。
そんな様子に気を取られ過ぎて、武器を探すのが出遅れた!
ナイフを振り回すデリア・リナウドに慌てているのは、取り巻きの方だ。
教職員を呼んでくるかと、考えたけれどそれを阻止しようと立ちはだかる面子もいる。指導の行き届いた連係プレーだな。
最悪、ブーツで跳び蹴りを食らわせるしかないかと考えていると――ナイフをつかむデリアの手首がひねり上げられた!
「きゃっ! ぶっ無礼者っ! 何をし――」
彼女の目は真っ直ぐこちらに向けられていた。だから分からなかったのだろう。横から現れ、彼女の手をひねり上げた人物が誰なのか。
「――おかしな事を言ったな。気にしないでくれ」
という彼の発言で、あの場は別れた。
マリー・トーマンがパトリックと懇意にしている様子に動揺したに違いない。それで、言葉を取り繕おうとして失敗した可能性の方が高い。
だから、そんな言葉で――――――動揺したりしない。
◇◆◇ ◇◆◇
「うわっ!」
購買近くの廊下を歩いていたら、急に背後から突き飛ばされそうになった。
犬も逃げるレベルの殺気だから事前に気付いていたけどね。鮮やかに避けて、相手の素顔を拝んでやると……デリア・リナウド侯爵令嬢だった。
長期休暇が終わってしばらくしてのお昼休み。
腹ごしらえをするために購買へ向かっていた私に突進してきたのは、正確にはデリア・リナウドではない。元・わたくしの取り巻きで、現・デリア・リナウドの取り巻きであるご令嬢の一人。
廊下にいるのは私たちだけではない。
購買には下位貴族や平民といった、比較的に地位の低い人間がたまりがち。今も、面倒事は起こさないでくれと言わんばかりの表情で、こちらを見ている。
その気持ち、よく分かります!
デリアたちの目的は不明。
好戦的に応じた方がいいのか、スルーした方がよいのか……。
「まあ! お前のせいで制服に染みが付いてしまいましたわ!」
「私にかすりもしていないのに?」
「無礼な! たかが平民風情がわたくしたちに意見するつもり?!」
群がる高貴なるご令嬢方。
適度な人数なら良い匂いだと言いたいところだけど、大量に群がってくるものだから香水臭い。用量用法は守って使えば良いものを。
取り巻きのご令嬢がチンピラよろしく周囲の生徒たちを威圧して、この場から退場させ始めた。うーん、この子たちは本当に深窓のご令嬢なのだろうか?
「あの身の程知らずな小娘に思い知らせてやろうとする度に、お前が邪魔をするから……っ!」
憎々しげにそう呟くデリア・リナウドの声が聞こえる。
扇子があれば悪役令嬢の出来上がりなんだけど、惜しいな。なんて思っていたら、彼女が取り出したのは……ペーパーナイフだ!
そういえばグニラ・オレーンも……。
どいつもこいつも、それ悪役令嬢じゃなくて、スケバンだから!!!
「震える手でそんなものを持っていたら、怪我をされますよ?」
ペーパーナイフくらい誰だって使う。
しかし今、それを手にしているデリア・リナウドは明らかに緊張している。凶器と認識し、手にしているからだろう。そして、それを私に指摘されたところで、彼女は引かない。
ブーツは頑丈な皮と薄い合板で出来てるから、蹴りを入れれば私は無傷でナイフを回収できるだろう。デリアは怪我するだろうけど。正体不明の私が、この件で火の粉を被ることもないし……この方法でしばらく黙らせるか。
『身の程知らずな小娘』って、マリー・トーマンのことだろう。
放置はまずそうだ。
「お黙りなさい! お前がいけないのよ! お前のような下賤の輩が……殿下や彼の周りをうろちょろするから!! だから、彼がおかしくなるのよっ!!!」
取り巻きさえドン引きするレベルで、デリア・リナウドが怒り狂っている。
そんな様子に気を取られ過ぎて、武器を探すのが出遅れた!
ナイフを振り回すデリア・リナウドに慌てているのは、取り巻きの方だ。
教職員を呼んでくるかと、考えたけれどそれを阻止しようと立ちはだかる面子もいる。指導の行き届いた連係プレーだな。
最悪、ブーツで跳び蹴りを食らわせるしかないかと考えていると――ナイフをつかむデリアの手首がひねり上げられた!
「きゃっ! ぶっ無礼者っ! 何をし――」
彼女の目は真っ直ぐこちらに向けられていた。だから分からなかったのだろう。横から現れ、彼女の手をひねり上げた人物が誰なのか。
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