悪役令嬢、猛省中!!

***あかしえ

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学園編

41.新緑舞踏会

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 ――ドレスの件をパトリックに報告したとき、彼は何も言わなかった。
 あの時点でクリストフ殿下がマリー・トーマンを誘っていなかったことは、パトリックも知っていたはずなのに……どうして…………。




 ◇◆◇ ◇◆◇


 舞踏会が行われるのは夜。
 夕食後、女子寮前でパトリックと待ち合わせ講堂へ向かうことになっている。

 マリー・トーマンのドレスは、職人に無理を言ってなんとか完成させることができた。サイズもぴったりの代物が出来上がったんだし、塞翁が馬ってやつかな。

 私の身支度については、学園が手配した使用人が整えてくれたのだけれど……先日、私の元にドレスを届けてきた使用人とは別人が来た。
 普段、使用人に依頼することのない私は知らなかったのだが、彼女たちの中では担当生徒がそれぞれ決まっているらしい。確かに、わがままなお嬢様がたの事だ、引き継ぎミスでクレームになるよりかは専属で――と思ったのかもしれない。
 ……職場環境はかなりブラックらしい…………。



 夕食後、辺りが暗くなり始めた頃――女子寮前には、着飾った沢山の少年少女たちが集まっていた。
 あまり目立ちたくはなかったのだけれど、エレベーターを降りた瞬間にその願いは木っ端微塵に消し飛んでしまった。

「まあ! ミーシャ様、お美しいですわっ!!」
 ――デリア!!! …………って、あれ?

 彼女の大きな興奮した声に疲れを感じつつ振り返ると、目の前にはいつものように調の豪華なドレスを身にまとったデリアの姿があった。ピンクは気に入らなかったらしい。リナウド卿も可哀想に。

「ありがとうデリア。貴女も綺麗よ?」
「そんなもったいのうございます」
 ……まずい。デリアの取り巻きに囲まれた! デリアが私にかしずくから、彼女たちも同じようにこちらにはべろうとする! 何を企んでいるのやら。

「お美しいドレスですわ」
「本日は、クリストフ殿下とご出席されるのですね」
「おうらやましい」
 デリアの取り巻きがおべっかを口に乗せる。まずい……デリア及びその取り巻きと仲良くお喋りしているようなところをパトリックに見られたら…………あ。

「お楽しみのところ、申し訳ありません。ミーシャ・デュ・シテリン嬢をお借りしてもよろしいですか?」

 王子様然とした、パトリックがやって来た。
 大げさにかっこつけた動きなんかするものだから、周囲の黄色い声が凄いことになった!
「何してンの! もう行くよ!!」
 彼が女子生徒に取り囲まれる前に、その場から彼を連れ出すべく急ぎ足で講堂へ向かう羽目になった!



 紺地に金色のボタンがあしらわれたスーツを、パトリックは身にまとっていた。
 前回の彼の衣装とは違う。何となく……こちらの服装と……その……。
「被ったな」
「ですね」
 合わせたわけではないのに、なんだかおそろい様な服装になってしまった。

 それにしても……宵闇に星をちりばめたようなスーツに、月明かりに照らされてほのかに輝く金色の髪――。知らなかった。パトリックって…………うん。

「おかしな顔してンな。行くぞ?」
 そう言って気品あふれる慣れた手つきで私の手を取る。


 おかしい。
 なんでか…………落ち着かない。

 講堂へ向かっているから? これから起こるかもしれないことに、緊張している? この舞踏会では、きっとクリストフ殿下とマリー・トーマンは急接近することになる。王妃様にも顔を覚えていただかなければならない。
 だから……デリアたちが余計なことをしてマリー・トーマンのデビュー戦を台無しにしないように、ちゃんと考えなければいけないのだ!

 しっかりしろ! ミーシャ・デュ・シテリン!


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