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学園編
18.シメます!
しおりを挟むマリー・トーマンから衝撃的な話を聞いてから数日後。
私は午前の授業が終わり、昼食を終えたであろうデリア・リナウド侯爵令嬢を訪ねた。ミーシャ・デュ・シテリンとして。着替えるのは面倒だったから制服のままで。
デリアは、三階の一人部屋を与えられていた。
その扉をノックしようとしたところ――。
「ミーシャ様!」
どのように先回りしたのか知らないが、扉が開き、満面の笑顔のデリア・リナウドが姿を現した。
制服姿の私と違い、デリアは既にドレス姿へ着替えを済ませていた。
随分と着替えが早いな。ドレスの着用に時間がかかってしまうのは、主にコルセットの仕様のせいだ。現代日本のように、ゴム製で伸縮性に優れファスナーやホック式だったら、短時間で着替えを終えることもできただろう。
原則として、学園に自宅から使用人を連れてくることは許されていない。この学園にはフィッティングメイトという、着替えを手伝う使用人がいる。彼女たちが仕事をするのは、校内で特別なイベントがある場合に限られる。
彼女がどうやって明らかにパーツが多く、一人で着るのは困難と思しきドレスを身にまとったのかは気になるところだけど……今は、いいか。
「話があるの。今、お時間よろしいかしら?」
「ミーシャ様! お尋ね頂けるなんて、光栄の極みでございます! さあ、どうぞ」
前回も今回も、他人の寮室へ入ったことなどなかったから、比較はできないのだが随分と豪華な造りとなっているようだ。私が使っている部屋とは、間取りが違うだけではないのだろうか? あの広い部屋で使っているのは、極一部だ。実にもったいないと思う。なんとか丸め込んで、マリー・トーマンをあそこで保護したいくらいだ。
侍女がお茶菓子を運んできた。
おや? 屋敷から連れてきたのか。ダメなのだけれどね、本来は……と、なんの気なしに侍女の顔を……見ると…………。
「えっ?! どういうこと?!」
まるで召し使いのようにデリアにこき使われていたのは……マリー・トーマンのルームメイトの一人ではないか! マリー・トーマンに例の件を相談されてから、数回、ナナミ・キクハラとして会ったことがある。
「え? あの……ミーシャ様?」
「なぜ、いち生徒がいち生徒を小間使いのように扱っているの?! 答えなさい、デリア・リナウド!!!」
◇◆◇ ◇◆◇
本格的に授業が始まって一月ほどが経った頃――この一件が、面白おかしく脚色されて噂となって広まってしまった。
『ミーシャ・デュ・シテリンは、権力に物言わせて愛する婚約者に取り入ろうとしていたデリア・リナウド侯爵令嬢に、鉄槌を下した!』、と……。
なんだ、どういうことだ! 対象がマリー・トーマンからデリア・リナウドに変わっただけなんじゃ――え、今度の殿下はマリー・トーマンじゃなくて、デリアと恋に落ちるの、殿下?!
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