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学園編
11.覚えのある入学式2
しおりを挟む「あぁっ! お前!!!」
聞き覚えがあるような無いような声に振り返ると、昨日、グニラ・オレーンの取り巻きをしていた者たちがいた。グニラはいないらしい。彼女は大人しくなったと見ていいのか。制服だというのに、髪にそんなにゴテゴテと装飾品を付けて、全くもう。……って、私も前回はこんな感じだったか。
「お前、まだこんなところにいたのね! え? なにその格好……学生だとでも言う気?」
――学生ですが?
「おほほほ! 無様ね、まるで似合っておりませんわよ?」
――あなたの髪型より似合ってますが?
「わたくしたちが着ている本物の制服とは生地が違いますもの……ねえ?」
――貴女たちより実はいい生地使ってますが?
「同じデザインの服を着て学内にいることを許されているからと言って、この誉れ高い王立学園の一員になっただなんて思わないことね?」
――貴女たちに認められる必要はありませんが?
「そもそも、あなた、本当にこの学園の学生ですの?」
――頭の病院がなくて残念ですね?
「そう言えば、あの子……マリー・トーマンというらしいわね?」
愉快な仲間たちのお喋りを聞き流していたのだが、とんでもない名前が出てきた!
「そうそう! あの後、クリストフ殿下に名を名乗っていたのよ!」
――名乗ったのか……良い雰囲気にはなれたのだろうか? 後は放置していても親交を深めてくれるだろうか? 私が……関わらなくても……。
「まあ! なんて図々しい! 乞食の分際で!」
「あの子を排除しなくてはなりませんわ!」
――それはよろしくない!
「乞食ではありません! 私もあの子も、歴としたここの生徒です! あの子におかしなことをしないでください!」
「――なんの騒ぎですの?」
取り巻き連中を押しのけるようにして、意外な人物が目の前に現れた。
デリア・リナウド侯爵令嬢だ。その様は威風堂々、記憶にあった幼い頃の様子との違いに、思わず凝視してしまう。
彼女は他のご令嬢のように、髪におかしな装飾を付けることも、高く巻き上げることもしてはいない。だが、立ち振る舞いが自信に満ちているようだった。
いや、これは……他者を押しのけようと振る舞っている。いつどこでそんなものを身につけたのかは知らないが、明らかに誰かに入れ知恵をされた振る舞いに見えた。生まれ持った彼女の資質と、立ち居振る舞いが一致していないから。
「デリア様!」
「リナウド嬢!」
デリアに続いてご令嬢が二、三人傾れ込んできた。もしかしなくとも、彼女の取り巻きか! デリア・リナウド……本当に、私が知らない間にどんな進化を――。
「不審者よ! 誰か衛兵を!」
人が思考を明後日の方向に飛ばしている間に、デリアが聞き覚えのある台詞を吐いた。え、私が、マリー・トーマンに向けて言った台詞を、デリアが私に向かって言ってる?!
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