暗殺者は人形使いの舞台で踊る

今泉 香耶

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暗殺者は人形使いの舞台で踊る(2)

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「どうですか」

「ううーん? わかんねぇ。わかんねぇけど……これで治ったんだな?」

 そう言って、ルダーは短剣を再び彼女に突き付ける。アールタは眉間にしわを寄せた。

「約束ですよ?」

「ハハッ、約束? そんな口約束に意味なんてねぇよ。残念だが、お前は俺の顔を見たからな。消すしかねぇのよ」

 本当は、アールタを妹のところに連れていきたい。そう考えたが、それはいささか無理な話だ。だが、もう一度脅せばどうにかなるのかもしれない……そう思いながらルダーは言った。すると、彼女はすうっと目を細める。

「……やっぱりそんなことだろうと思っていました。本当はこんなことをしたくないのですが……」

「へ?」

 パチン、とアールタは指を鳴らした。と、その瞬間、ルダーは胸に痛みを感じて「あがっ!?」と間抜けな声をあげ、膝をつく。彼女に突き付けていた短剣も、ガシャンとその場に落として、前のめりになった。

「がっ、あっ、な、何っ……お前っ……おまっ……」

「わたし、治癒術師でもあるけど、本当の異能は『人形使い』なのよねぇ……」

 アールタはにっこり笑いながら、床に落とした彼の短剣を拾う。ルダーは痛みにだらだらと汗をかきながら、必死に彼女の言葉の意味を考えた。人形使い? 一体それはどういう意味だ。あれか。子供たちを集めて、人形による劇を見せる……?

「に、にんぎょ……つか……い?」

「ふふ。そうよ。要するに、あなたを人形にして、言うことを聞かせられるってこと。あはっ、これ、結構内緒なのよ。あなたの顔を見ちゃった代わりに、教えてあげるわね」

「はっ……はあっ……?」

「あっ、肺はちょっと治してあげたけど、ちょっとだから、継続しないと駄目よ。ついでに、心臓に楔を打っておいたから、今、少し苦しいわよね?」

 少し? 少しなんてもんじゃない、と言おうとしてルダーは顔をあげたが、胸に走る激痛に耐えられず、床に倒れて転げまわった。くさび? それは一体何のことだ、と声をあげようとしたが、胸が苦しくて口からはひゅうひゅうという音しか出ない。

「うふふ。失礼~」

 アールタは嬉しそうに笑うと、床でのたうち回っているルダーの頭をぐっと両手で掴む。それを振り払おうと抵抗をするが、ルダーの手はあっけなく自分の胸に戻り、ぐっと押さえて痛みを我慢する。耐えるだけが彼の精一杯だ。

「はっ、はぁっ、は、はぁ……っ! くそがっ……!」

「人形使いはねぇ~、本当は脳に楔を打つの。でも、あなたの頭を掴めないなぁ~って思ったので、とりあえず心臓に打ったのよ。ええ、ええ、大丈夫。脳に打てば、心臓の楔は外れるからね。ええ、いい子にしていてちょうだい」

 そう言うと、その両手に力を入れる。ルダーは背を反らせて「んああああああ!」と叫んだ。



「へあっ……あっ……」

 アールタは下着姿でベッドの端に腰かけている。全裸になったルダーは床に膝をついて、彼女の股間に顔を埋めていた。目の焦点があわないまま、ふう、ふう、と荒い息をついている。

「うふふ。どうかしら。ちゃんとご主人様の匂い、覚えたかしら?」

「はっ、はいっ……おぼえ、ました」

「良く出来ました。ねえ、お前の名前は?」

「ル……ルダー……」

「そう。ルダー、下着を脱がせて、舐めなさい」

 アールタに言われるがまま、ルダーは彼女のショーツを脱がせ、彼女の細い腰を両側から掴んで再び股間に顔を埋める。ぐちゃぐちゃと彼女の秘部を舐める音が部屋に響く。

「あはっ、上手ね。あっ、あ、あ、そう。そう。舌を中にっ……んっ、んっ……」

「うう、んっ……うんっ、んっ……」

「あはは! 言うことを聞く犬は可愛いけど、それだけじゃつまらないわねぇ……」

 アールタは、パンッと両手を叩いて打ち鳴らした。

「ルダー、命令よ。聞きなさい」

 そう言われて、ルダーは顔をあげてぴたりと動きを止める。焦点はまだあっていないが、アールタの目を見ているようだ。アールタは頬を紅潮させ、いくらか息があがっていた。少し、いたずらを思いついた子供のように微笑んで、彼女は言う。

「あなたが抱きたいように、抱いてみせなさい」

「抱きたいように……?」

「そう。ねぇ、見て。この体を、あなたの好きにしていいのよ?」

 そう言ってアールタは胸に当てていた下着をするりと脱いだ。露わになる白い乳房は、控えめながら形が整っており、それを見せつけるように彼女は胸の下で腕を組んで、背を反らせる。月明かりでうっすらと照らされた室内で、淫猥に浮かぶ二つのものにルダーの目は釘付けになった。可愛らしい唇から、もう一度言葉が紡ぎ出される。

「ね、この体を『あなたの好きにしなさい』」



 ベッドの上で、ぱんっ、ぱんっ、と響く、肉と肉がぶつかる音。それと共に、繋がった場所から溢れる液体がぐじゅぐじゅと音をたてる。

「あはっ、あは……っ、もしかしてあなた、遅漏なの? だから、そんなに必死に腰振って……あっ、奥ぅ……ふぅ……んっ……」

 アールタは仰向けでくすくす笑いつつ、腰をルダーの動きに合わせる。内側をこすり上げる熱いものは固く、アールタの口からもいやらしい嬌声が上がる。言葉にすれば、随分と暴力的なセックスだ。ルダーはアールタのことなぞ好きでもなんでもないのだから、彼にとっての「抱きたいように抱く」は、アールタを単なる道具だとでも思っているのだろう。

 突き上げる男根はごりごりと彼女の内壁をえぐっていく。更に奥に強く打ち込めば、そのたびに愛液が迸り、彼女は高く喘いだ。だが、アールタにはまだ足りないようだった。

「あっ、あ、ねぇ、ちょっと、そこ、もう少し左上ぇ……」

 甘えてアールタは気持ちが良い場所を指示するが、ルダーはどうも聞いていないようだ。もうそれしか考えられない、とばかりに必死に腰を打ち付け続けた。

「まあ、それも悪くはないけど……んっ……もぉ……」

 アールタはいささか不満そうに呟く。

「ルダー、止まりなさい。それから『帰ってきなさい』」

 ぱちん、と指を鳴らせば、その音に反応をして、ルダーは意識を取り戻したように、きょとんとした表情で目を瞬かせる。はっ、はっ、と息を荒くしてアールタの腰を抑えたまま止まり、彼女を見るルダー。

「あっ、あ……俺っ……?」

「あはっ、ね、今、何をしてるかわかる? なんとなくは覚えているでしょ? 意識は完全には手放してないはずだもの」

 そう言ってアールタはルダーとつながったまま、彼の腰を自分の両足でぎゅっと抱きかかえた。彼女の内側にある、彼の熱いペニスがびくびくと震える。

「俺、あっ、あっ、やだ、イキたい、イキたい……早く、早く動かしたいっ……」

 ルダーはそう言うが、アールタに「止まれ」と言われたせいなのか、体は動かない。がたがたと震えるが、ただそれだけだ。

「駄目よ。そのままでいなさい」

「うっ、うう、うっ……うっ……早くっ、早く、イキてぇよぉぉぉ!」

「あらあら。可哀相に」

 そう言ってアールタは自分の内側に力を入れて、彼のものを締め付ける。ルダーは「ううっ」と叫んだが、そのまま腰を引けない。

「やーだ、抜いちゃだめ。ずうっと入れたままが好きなのよ。でも、中で萎えたら泣いちゃうわ……だって、あなた、自分ばっかり気持ちよくなろうとしているんだもの」

 その言い草は酷い。抱きたいように抱けと命じたのはアールタだ。だから、彼は抱きたいように、要するに自分だけ気持ちが良いように抱いた。アールタのことなぞどうでもいいとばかりに。しかし、それが不満だと言う。

「ねぇ、わたしを恋人みたいに抱くことは出来ない? もっと、気持ちよくしてほしいんだけど」

「出来るわけねぇよ!」

 アールタの「お願い」にルダーはぶんぶんと頭を横に振った。もともとぼさぼさの髪が更にめちゃくちゃになって、頭のシルエットが大きくなる。アールタはそれを見て「あはっ!」と大きく笑った。そのせいで、彼女の内側が軽く収縮して、ルダーは「ううっ!」と唸る。

 一体何をどうしたのか、いくらか体が動くようになったルダーだったが、どうにも自分のものを彼女から抜くことが出来ない。それだけは許されていないのか、と思えば、ルダーは泣き出す。

「どうして?」

「どうしてって、あんたみたいな怖い女、もう散々だよ、嫌だよ、頼むから、イかせてくれよぉぉぉぉ! わかんねぇよ、恋人みたいに、だとかさぁ~! 無理だ、無理だよ!」

 そう言ってルダーはわんわんと泣いた。アールタはそれを見て「こっちに頭を出しなさい」と言って手を伸ばす。ルダーは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら「ひっ、ひぃっ……」としゃくりあげ、ベッドに横たわるアールタの方へとゆっくり体を傾けた。

「あら、お前、案外と可愛い顔をしてるわね?」

「無理だよぉ……」

 ルダーの涙が、ぽつぽつとアールタの白い肌に落ちる。彼の前髪をあげて、アールタはじっと彼の瞳を見て微笑んだ。泣きながらルダーは「可憐な笑顔だ」と思い、だが、反面「そんなもんに騙されねぇぞ」と抗う。

「嘘でしょ? 出来るわよね? 恋人みたいに、抱けるでしょ?」

「恋人なんて……いねぇ……いねぇもん……」

「仕方ないわねぇ……じゃあ、わたしがあなたの恋人になってあげるから、わたしをたくさん気持ちよくして?」

「やだ、やだ、無理だよぉ……」

「ルダー。『わたしを楽しませるセックスをしなさい』、出来るわよね?」

 びくん、とルダーの体が強張った。汗ばんだ手がじりじりと伸びて、アールタの白い乳房を覆う。存外優しくその手は彼女の胸を揉み、指先でするすると乳輪をなぞる。

「あ、あ……俺っ……」

 アールタを楽しませるセックス。それはルダーにはよくわからない。だが、彼女の反応一つ一つを見なくては、と強く感じる。

「あっ、あ……そう……ね、ねぇ……体中撫でて……全部……」

 アールタに強請られて、ルダーは手のひらで彼女の体を撫でた。滑らかな肌はうっすらと汗をかいている。腕を、首を、胸を、腰を、それから足を彼は撫で、もう一度腰をするすると撫でる。

 腰を撫でられたアールタは「ん」と鼻にかかった声をあげて、内側に入っている彼のものを締め付けた。それに反応をしてルダーも「うっ」と呻く。

「ねえ、すごくいい……ゆっくり愛されるのも、なかなかいいものね」

「なあ……ここは? ここはどうなんだ……?」

 そう言ってルダーは両手で彼女の乳首をなぞる。アールタは「そこ、大好き」と甘え声をだした。ルダーの瞳にはまだ涙が残っていたが、体は勝手に動く。もう仕方がない、と彼は腹を括ってセックスに没頭をした。彼女の乳首に唇を寄せれば、彼女は彼の頭を優しく抱いて、甘い吐息を漏らした。

 

「ねぇ……繋がったまま、起こして?」

 やがて、体の隅々までルダーに撫でまわされたアールタは強請る。アールタの中に入れたままで体を起こすのは難儀だったが、彼の腕に抱かれてしなやかに起き上がる様子はまるで淑女のようで、ダンスを踊っているようにすら見えた。

 あぐらをかいた彼の足の間にアールタは尻を置く。先ほどまでと違う角度でルダーのペニスが刺さり、アールタの口から「んんっ」と可愛らしい声が出た。

「あはっ、ね、この角度もいいんじゃない?」

 アールタはルダーの体に自分の体をそっと押し付けた。固くなった彼女の乳首がルダーの胸板にこすりつけられ、それから柔らかな乳房がおしつけられる。ルダーはそれに興奮をして声をあげた。

「あっ、あ、あ……」

「ね、ルダー」

「なんだよ……」
 
「ねぇ……ね、キスもしてくれないの……?」

「キス……?」

「もしかして初めてなの? ね、キスして頂戴。胸をいじられながら、キスするの好きなの」

 アールタはそう言って舌を出す。可愛らしさと淫猥さが混じった、小悪魔の表情だ。ルダーは困惑をしながら彼女に口づけた。唇が触れたと思ったら、アールタはルダーの頭を無理矢理引き寄せて、深いキスをする。困っている彼の唇を割って、舌を差し入れる。ぐちゅぐちゅと絡められるそれにルダーは緊張をしていたが、唇を離してもう一度、二度、三度と繰り返すと、要領を得たのか、積極的に深いキスをするようになる。

「……あ……」

 ルダーは声をあげた。何度目かのキスを終えて唇を離せば、何かよくわからない高揚感に襲われ、それと同時に何やら映像がはっきりと見える気がする。目の前にいるアールタを見れば、うっとりとキスの余韻に浸っているようだ。

(こうやって見れば、その、なかなかに)

 可愛い。小ぶりな乳房は形がよく、その中央に主張をしている乳首が固く立ち上がっている。それがなんとも艶めかしい。月明かりの下、あぐらをかいたルダーの股の上に座って、足を彼の腰に巻き付けてるアールタは、ねだるように再び舌を出しながら、自分の胸をまさぐった。

「やん……キスしながら胸いじってって言ったのに……」

 キスに夢中で手が止まっていたことに気付いて、もう一度ルダーは深く唇を重ね、アールタの胸に手を這わせた。何度か乳首を指の腹で擦っていたが、気まぐれに思いついて、突然ぎゅっと抓る。

「ふあっ!?」

 びくん、とアールタは腰を反らして唇を離した。が、ルダーは彼女の唇を追って、半ば強引にキスをしながら、抓った乳首をぐりぐりと指の腹でこねたり、引っ張ったりし続ける。びくん、びくん、とアールタは腰を持ち上げた。彼女の中に入ったままのルダーのペニスはそれに刺激をされて、更に熱く、固くなっていく。

「はっ……なんだぁ……そういうのが好きなのか……?」

 長いキスの後で、ルダーはそう言うと、彼女を再びベッドに寝かせた。アールタはそれを止めない。反ったアールタの腰を撫でながら唇で片方の乳首を吸い、歯で軽く噛むと彼女は悲鳴に似た声をあげた。

「あっ、あ、あ……そうなの……それ、好きぃ……」

「ここは? ああ、なんだ、あんたのここ、隠れてんのか……」

 そう言って、ルダーは彼女のクリストリスをとん、とん、と軽く指先で叩く。

「えっ、え、え……ね、あなた、あんまり経験ないんじゃないの?」

「あ?」

 ルダーは、指の腹で彼女のそこを強くぐいと押した。アールタは嬉しそうに身を捩る。

「あるに決まってんだろ……その辺のババアに金積まれて、いくらでも抱いてんだよ……」

「ええっ……だって……」

「キスは、その、初めてだった……」

 そう言うとルダーはもう一度キスをしながら、円を描くようにクリトリスを押し続ける。アールタははしたなく股を開いて「ふっ、ふうっ、ふ……」と荒い息を漏らし、唇を離したルダーに

「本当は、少し雑な方が好きなのよ……でも、あなた、雑すぎたから……」

と、恥ずかしそうに囁いた。ルダーは「早く言ってくれよぉ、そういうことはよ……」と言って、ぬるぬるの内壁に、自身を荒っぽく擦り付けた。



「あっ、あ、ルダー……そこっ、気持ち、いっ、気持ちいいぃ……」

「ここか? あんた、ここが弱いんだな? なんだよ、雑魚じゃねぇか……押すたびに潮飛ばしまくってんぞ……ここだな?」

 腰を動かしながら、下腹部を肌の上からぐいぐい押す。アールタは嬌声を上げながら首を横に振った。

「んあっ、ああ、あっ、そこぉ、駄目、駄目なのっ!」

「駄目じゃねぇだろ、ここが気持ちいいって自分で言ってんじゃん……なあ、いいんだろ?」

「んっ、ん、いい、いいっ……ねっ、ルダー、キス、キスして……恋人同士みたいな……」

 請われて、ルダーは顔を近づける。すると、アールタは自分から必死に首を伸ばしてルダーの唇を捕らえた。

「んっ、やっ、やだっ、激しいからっ……もっと、ルダーからキスしてよぉ……」

「あぁ……? しょうがねぇな……」

「恋人同士みたいなキスして……それで、激しく突いて……」

「難しいこと言うなぁ……」

 そう呟きながらも、ルダーはキスをしながら片手で彼女の腰をぐいと持ち上げ、自分の腰をこすりつけた。アールタは膝を曲げてつま先をシーツの上でじりじりと動かし、股を大きく開いてそれを受け入れる。

「くそ……この……淫乱が……っ」

 ルダーのその声で、熱くて柔らかな内側がきゅっと締まる。彼は「ふっ」と息を吸い込んでから腰を動かし、喘ぐアールタの唇をキスでふさぐ。

「んんっ、んぐっ、んっ……んんんっ……!」

 アールタは何かを言っていたが、ルダーはそれを聞かない。深いキスを何度も繰り返し、舌を絡ませながら、彼はアールタの奥を何度も何度もえぐるように突き立てた。
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