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7.旦那より先に俺が種付けしていいわけ?
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さて、翌日の夕方近く。イーヴィーの「ダリルに聞けばよかった」が天に届いたのか、いや、ここは魔界なので人間がイメージで言う「天」のようなものはないのだが、突然ダリルが訪問してきた。
「イーヴィー様をお送りした時に、飛び馬車に落し物があったとかなんとかで……ご確認いただきたいと」
「イヤリングかしら」
ハンナにしか話していなかったが、魔界召集の日にイヤリングを片方紛失していた。それ以外に、そもそもイーヴィーが「落とす」ようなものなぞ、何一つない。令嬢達は身一つでやってくるのだし。
アルロは早朝から外出しており、予定帰宅時刻を過ぎても未だ戻って来ていない。そのため、夫人であるイーヴィーが1人でダリルの応対をすることになった。
応接室に行けば、前回会ったときよりは正装に近い服装のダリルがどっかりソファに座って「よっ、オネーサン」と気楽に手をあげる。魔族も人間界のように正装に近い衣類を着るのかとイーヴィーが驚けば「あ、違う違う、これ、人間界に忍び込んで女漁ってきた帰りなんだよね」と彼らしくもありがっかりする言葉が返される。
「なあ、これオネーサンのだろ」
と彼が差し出すのは、白い羽のイヤリング。確かにそれはイーヴィーのものだ。
「ありがとうございます。いつなくしたのかと思っていたんです」
「飛び馬車に落ちてたぜ。基本女乗せたりしねぇからさ、あの日だなーって」
それでも、あの中でイヤリングを落とすような仕草をした記憶はないし、ダリルと向かい合わせだったのだから落ちれば彼が気付いたのではないかとも思ったが、まあ実際紛失していたのだから考えても仕方がない。もう一度礼をいって、ハンナに「これを部屋に置いてきて」と依頼をする。
ハンナが部屋から出て行き、ダリルとイーヴィーは2人きりになった。どうしよう。ここで、自分の肌色のことを聞いてみようか……勇気を出してイーヴィーが「あの」と声をかけた時だった。
「なあ、オネーサン」
ダリルはソファから立ち上がると、茶器を置いたテーブルの脇をぐるりと回ってイーヴィーの方へと近付いて来る。
「大きな声で言えないことなんだけどさ」
「なんでしょうか」
イーヴィーの横に座ってダリルが距離を詰めてきた。少し嫌だな、と思う反面、自分が聞きたいこともあまり大きな声で言えないことだし仕方がないか、と思う。
「あのさあ……」
ダリルは耳元に唇を寄せ、ぼそりと囁いた。
「あんたまだマーキングされてねえじゃん。ちゃんと上に乗って腰を振らなかったわけ?」
「!」
まさかそんな話題を出されると思っていなかったイーヴィーは、頬を紅潮させて、だがうろたえた姿はあまり見せないようにと努めて返事をする。
「……アルロ様に、その必要がないといわれたので……」
「好みじゃないって?」
好みじゃない、とは言われたわけではない。だが、その言葉は今のイーヴィーの胸を突き刺すには十分すぎた。まさか。肌の色どころか女性の好みとしてそもそもアルロのおめがねに叶わないと知っていて、この魔族は自分を送りこんだのだろうか……突然の疑心暗鬼にイーヴィーが言葉を失っていると、ダリルは彼女の耳をぺろりと舐めた。
「っ!!」
「あんた、ここでみんなに優しくされすぎて、ぼんやりしすぎじゃないの? マーキングされてない状態でさ……もうちょっと考えろよ。旦那より先に俺が種付けしていいわけ?」
「……!!」
ぞっと悪寒が走る。ダリルの手を振り払ってイーヴィーはソファから立ち上がった。
優しくされすぎて。確かにそうだ。ここの人達にも、ダリル自身にも、親身になってもらっていたから信用しすぎていた。
だが、ダリルは立ち上がったイーヴィーの腕を強く引いた。バランスを崩してよろけるイーヴィーを自分の膝の上に無理矢理のせて、後ろからドレスの胸元に手を入れてくる。
「俺さあ、あんたをちょっと気に入ってたんだよね。本当はあの日からあんたを脱がせたかったし、あんたの乳首の色も気になってたし、どんな声で鳴くのか知りたかったんだよねぇ」
「っ、あっ……!」
胸元をまさぐる手は、彼女の乳房をもみしだきながら、彼が「気になってた」と言った乳首をあっけなく探り当てた。その不快感が引き金となって、ついにイーヴィーは思いきり声をあげる。
「きゃああああああああああああああああ!!!!」
「っ……! うっせ!!」
歌姫の本気の叫びはとんでもない声量だ。それを間近でくらったのだからたまらない。ダリルは反射的にイーヴィーを突き飛ばして耳を塞いだ。
バンッと扉が開けられ、通路から騎士達が部屋に飛び込もうとする。だが、屈強な騎士達はまるで見えない壁にぶつかってしまうようで、扉は開いているというのにいっこうに室内に入ってこない。
「はーい、ご苦労さん、そっからこっちは入ってこれないよ~。そこで見てな、雑魚ども」
「ど、どういうことですか!?」
「この部屋に入った時に、出られるけど入れない結界張っちゃった。いやー、必要なのよ。どこでも誰の邪魔もなくセックスするのに」
あまりの軽薄な答えに、イーヴィーはわなわなと震えだす。誰の邪魔もなくセックスを?それは、今日ならばここで自分と、という意味ではないか。しかも、彼女は彼の本妻になったはずのライラを知っている人物なのに。
「あなたって、あなたって、あなたっていう人は、本当に……」
「知ってただろ? こーゆーやつだってさあー。でも、イーヴィーちゃん、これはご存知?」
「えっ?」
ダリルの目が僅かに泳いだ。騎士達がやいのやいのと見えない壁のあちら側で騒いでいると、遠くから地鳴りのような音が響き、どうやらこちらに近付いてきているようだ。狼狽しているイーヴィーはダリルに言われるまでそれに気付いていなかった。
そして。
「この屋敷の主は、アホみたいに魔法耐性が高いんで……」
彼がその続きを言う前に、そのアホみたいに魔法耐性が高い主とやらが、騎士達を押しのけて部屋の中に突っ込んで来た。しかも、手にはイーヴィーも見たことがない大きな剣を握り締めており、結界を抜けながらの咆哮は鬼気迫るものがあった。
「この黒ヤギ野郎が!! 離れろ!!」
「うわっと! まじで結界貫通してきやがった! 化け物め! 待て! 待て待て待て、最初から、そんな大剣持ってくるとか、正気じゃねえだろが!」
そこまでは予想外だった、とダリルは即座にアルロと距離を置くように素早く窓側へと飛びのく。
「正気じゃないのはお前だろうが! イーヴィー嬢に何をした!」
「はあ? イーヴィー嬢? まじで? 自分の妻をそんな風に呼んでるの? あっはは、そりゃますますさあ、なあ、イヴ、俺んとこ来いよ。あんたさえ良ければ、あんたを正妻にして、ライラは側室に落としてやるからさ。その方が、ライラはいいみたいだし」
などと言いながらも、大窓を開けて部屋から出て行くダリル。アルロはそれを追おうとはしない。
「じゃあな! イヴ、今度からは別れ際に頭なんか撫でられないようにした方がいいぜ?」
どういう仕組みなのかはわからないが、そこには彼の飛び馬車が既に待機しており、あっという間にアルロの屋敷から離れていってしまう。
「あっ……!」
あの時か。
どうやってかはまったくわからないが、あの時にダリルが自分のイヤリングを盗んだのだ、と気付いてイーヴィーが叫ぶと、同時にまったく違うことでアルロも叫んだ。
「こ、こ、この、ペテン師ーーーー!!」
「二度と人の妻を許しもなく略称で呼ぶな!!」
遠ざかっていく馬車からダリルの笑い声が聞こえたような気がして、2人は苦々しい表情になる。それから、アルロははっと気付いたように
「大丈夫か、イーヴィー嬢。何かされなかったか」
とイーヴィーの二の腕を両手でがしっと掴んだ。
「さ、され、ました……あの……胸、に、手を……」
瞬間、アルロは凄まじい殺気に包まれる。これは、その先を言うのは危険だ、と察してイーヴィーはそれ以上を伝えなかった。と、気付けば、あんな声を出して、最後にダリルに罵声を浴びせたにも関わらず、がくがくと自分は震えているではないか。
「あ、あれ? わたし……」
「大丈夫か、いや、大丈夫なわけがないな」
「だ、だ、大丈夫です。びっくりしただけで……あの、すぐ、収まります……」
「イーヴィー」
アルロは、初めて彼女の名を呼び捨てにする。そのことに驚いて震えながら見上げれば、彼は優しい瞳で彼女を見下ろしていた。
「 ここは戦場ではないので、そのような勇気は振り絞らなくてもいいと言ったはずだ。あなたをそのように振舞わせてしまったのはわたしの落ち度だ。大丈夫だなどと、言わなくても良い」
「……アルロ様……」
そっとアルロはイーヴィーの肩を抱いた。震えが止まらないなんて恥ずかしい、アルロ様にご迷惑を……と思うイーヴィー。反面、震えている間はこうやって抱いてもらえるのか、といささかあさましいことも思ってしまう。
が、残念ながらアルロへの信頼が大きすぎるのか、安心しすぎてあっけなく震えは止まった。それを確認したアルロはそっと彼女から体を離し、緊張した面持ちで告げる。
「話さなければいけないことがある。あれもこれも、おおよそわたしが招いた事態なのだ。わたしの部屋で、茶を飲みながら聞いてくれるだろうか」
その声音がそれまでになく真剣なものだったので、イーヴィーはぎゅっと胸元で手を握り締め「はい」とどうにか声を絞り出した。
「イーヴィー様をお送りした時に、飛び馬車に落し物があったとかなんとかで……ご確認いただきたいと」
「イヤリングかしら」
ハンナにしか話していなかったが、魔界召集の日にイヤリングを片方紛失していた。それ以外に、そもそもイーヴィーが「落とす」ようなものなぞ、何一つない。令嬢達は身一つでやってくるのだし。
アルロは早朝から外出しており、予定帰宅時刻を過ぎても未だ戻って来ていない。そのため、夫人であるイーヴィーが1人でダリルの応対をすることになった。
応接室に行けば、前回会ったときよりは正装に近い服装のダリルがどっかりソファに座って「よっ、オネーサン」と気楽に手をあげる。魔族も人間界のように正装に近い衣類を着るのかとイーヴィーが驚けば「あ、違う違う、これ、人間界に忍び込んで女漁ってきた帰りなんだよね」と彼らしくもありがっかりする言葉が返される。
「なあ、これオネーサンのだろ」
と彼が差し出すのは、白い羽のイヤリング。確かにそれはイーヴィーのものだ。
「ありがとうございます。いつなくしたのかと思っていたんです」
「飛び馬車に落ちてたぜ。基本女乗せたりしねぇからさ、あの日だなーって」
それでも、あの中でイヤリングを落とすような仕草をした記憶はないし、ダリルと向かい合わせだったのだから落ちれば彼が気付いたのではないかとも思ったが、まあ実際紛失していたのだから考えても仕方がない。もう一度礼をいって、ハンナに「これを部屋に置いてきて」と依頼をする。
ハンナが部屋から出て行き、ダリルとイーヴィーは2人きりになった。どうしよう。ここで、自分の肌色のことを聞いてみようか……勇気を出してイーヴィーが「あの」と声をかけた時だった。
「なあ、オネーサン」
ダリルはソファから立ち上がると、茶器を置いたテーブルの脇をぐるりと回ってイーヴィーの方へと近付いて来る。
「大きな声で言えないことなんだけどさ」
「なんでしょうか」
イーヴィーの横に座ってダリルが距離を詰めてきた。少し嫌だな、と思う反面、自分が聞きたいこともあまり大きな声で言えないことだし仕方がないか、と思う。
「あのさあ……」
ダリルは耳元に唇を寄せ、ぼそりと囁いた。
「あんたまだマーキングされてねえじゃん。ちゃんと上に乗って腰を振らなかったわけ?」
「!」
まさかそんな話題を出されると思っていなかったイーヴィーは、頬を紅潮させて、だがうろたえた姿はあまり見せないようにと努めて返事をする。
「……アルロ様に、その必要がないといわれたので……」
「好みじゃないって?」
好みじゃない、とは言われたわけではない。だが、その言葉は今のイーヴィーの胸を突き刺すには十分すぎた。まさか。肌の色どころか女性の好みとしてそもそもアルロのおめがねに叶わないと知っていて、この魔族は自分を送りこんだのだろうか……突然の疑心暗鬼にイーヴィーが言葉を失っていると、ダリルは彼女の耳をぺろりと舐めた。
「っ!!」
「あんた、ここでみんなに優しくされすぎて、ぼんやりしすぎじゃないの? マーキングされてない状態でさ……もうちょっと考えろよ。旦那より先に俺が種付けしていいわけ?」
「……!!」
ぞっと悪寒が走る。ダリルの手を振り払ってイーヴィーはソファから立ち上がった。
優しくされすぎて。確かにそうだ。ここの人達にも、ダリル自身にも、親身になってもらっていたから信用しすぎていた。
だが、ダリルは立ち上がったイーヴィーの腕を強く引いた。バランスを崩してよろけるイーヴィーを自分の膝の上に無理矢理のせて、後ろからドレスの胸元に手を入れてくる。
「俺さあ、あんたをちょっと気に入ってたんだよね。本当はあの日からあんたを脱がせたかったし、あんたの乳首の色も気になってたし、どんな声で鳴くのか知りたかったんだよねぇ」
「っ、あっ……!」
胸元をまさぐる手は、彼女の乳房をもみしだきながら、彼が「気になってた」と言った乳首をあっけなく探り当てた。その不快感が引き金となって、ついにイーヴィーは思いきり声をあげる。
「きゃああああああああああああああああ!!!!」
「っ……! うっせ!!」
歌姫の本気の叫びはとんでもない声量だ。それを間近でくらったのだからたまらない。ダリルは反射的にイーヴィーを突き飛ばして耳を塞いだ。
バンッと扉が開けられ、通路から騎士達が部屋に飛び込もうとする。だが、屈強な騎士達はまるで見えない壁にぶつかってしまうようで、扉は開いているというのにいっこうに室内に入ってこない。
「はーい、ご苦労さん、そっからこっちは入ってこれないよ~。そこで見てな、雑魚ども」
「ど、どういうことですか!?」
「この部屋に入った時に、出られるけど入れない結界張っちゃった。いやー、必要なのよ。どこでも誰の邪魔もなくセックスするのに」
あまりの軽薄な答えに、イーヴィーはわなわなと震えだす。誰の邪魔もなくセックスを?それは、今日ならばここで自分と、という意味ではないか。しかも、彼女は彼の本妻になったはずのライラを知っている人物なのに。
「あなたって、あなたって、あなたっていう人は、本当に……」
「知ってただろ? こーゆーやつだってさあー。でも、イーヴィーちゃん、これはご存知?」
「えっ?」
ダリルの目が僅かに泳いだ。騎士達がやいのやいのと見えない壁のあちら側で騒いでいると、遠くから地鳴りのような音が響き、どうやらこちらに近付いてきているようだ。狼狽しているイーヴィーはダリルに言われるまでそれに気付いていなかった。
そして。
「この屋敷の主は、アホみたいに魔法耐性が高いんで……」
彼がその続きを言う前に、そのアホみたいに魔法耐性が高い主とやらが、騎士達を押しのけて部屋の中に突っ込んで来た。しかも、手にはイーヴィーも見たことがない大きな剣を握り締めており、結界を抜けながらの咆哮は鬼気迫るものがあった。
「この黒ヤギ野郎が!! 離れろ!!」
「うわっと! まじで結界貫通してきやがった! 化け物め! 待て! 待て待て待て、最初から、そんな大剣持ってくるとか、正気じゃねえだろが!」
そこまでは予想外だった、とダリルは即座にアルロと距離を置くように素早く窓側へと飛びのく。
「正気じゃないのはお前だろうが! イーヴィー嬢に何をした!」
「はあ? イーヴィー嬢? まじで? 自分の妻をそんな風に呼んでるの? あっはは、そりゃますますさあ、なあ、イヴ、俺んとこ来いよ。あんたさえ良ければ、あんたを正妻にして、ライラは側室に落としてやるからさ。その方が、ライラはいいみたいだし」
などと言いながらも、大窓を開けて部屋から出て行くダリル。アルロはそれを追おうとはしない。
「じゃあな! イヴ、今度からは別れ際に頭なんか撫でられないようにした方がいいぜ?」
どういう仕組みなのかはわからないが、そこには彼の飛び馬車が既に待機しており、あっという間にアルロの屋敷から離れていってしまう。
「あっ……!」
あの時か。
どうやってかはまったくわからないが、あの時にダリルが自分のイヤリングを盗んだのだ、と気付いてイーヴィーが叫ぶと、同時にまったく違うことでアルロも叫んだ。
「こ、こ、この、ペテン師ーーーー!!」
「二度と人の妻を許しもなく略称で呼ぶな!!」
遠ざかっていく馬車からダリルの笑い声が聞こえたような気がして、2人は苦々しい表情になる。それから、アルロははっと気付いたように
「大丈夫か、イーヴィー嬢。何かされなかったか」
とイーヴィーの二の腕を両手でがしっと掴んだ。
「さ、され、ました……あの……胸、に、手を……」
瞬間、アルロは凄まじい殺気に包まれる。これは、その先を言うのは危険だ、と察してイーヴィーはそれ以上を伝えなかった。と、気付けば、あんな声を出して、最後にダリルに罵声を浴びせたにも関わらず、がくがくと自分は震えているではないか。
「あ、あれ? わたし……」
「大丈夫か、いや、大丈夫なわけがないな」
「だ、だ、大丈夫です。びっくりしただけで……あの、すぐ、収まります……」
「イーヴィー」
アルロは、初めて彼女の名を呼び捨てにする。そのことに驚いて震えながら見上げれば、彼は優しい瞳で彼女を見下ろしていた。
「 ここは戦場ではないので、そのような勇気は振り絞らなくてもいいと言ったはずだ。あなたをそのように振舞わせてしまったのはわたしの落ち度だ。大丈夫だなどと、言わなくても良い」
「……アルロ様……」
そっとアルロはイーヴィーの肩を抱いた。震えが止まらないなんて恥ずかしい、アルロ様にご迷惑を……と思うイーヴィー。反面、震えている間はこうやって抱いてもらえるのか、といささかあさましいことも思ってしまう。
が、残念ながらアルロへの信頼が大きすぎるのか、安心しすぎてあっけなく震えは止まった。それを確認したアルロはそっと彼女から体を離し、緊張した面持ちで告げる。
「話さなければいけないことがある。あれもこれも、おおよそわたしが招いた事態なのだ。わたしの部屋で、茶を飲みながら聞いてくれるだろうか」
その声音がそれまでになく真剣なものだったので、イーヴィーはぎゅっと胸元で手を握り締め「はい」とどうにか声を絞り出した。
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