獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない

たま

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副団長 ダルム 1

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「…アレス、陽も暮れてきた。宿に戻って飯にするぞ。」

近くの石に腰掛けつがいが消えた場所を見つめ続ける親友に声をかける。おそらく聞こえてはいないだろうな。

この街ベルギアに突然つがいの気配を感じ走り出したのは1週間程前の事だ。獣人それも我々狼人族はつがいへの想いが強い。強いというより重いと言った方がいいかもしれない。それもド級にいや超ド級に重い。大袈裟でなくつがいを亡くせば衰弱死する所ではなく即死できる。

「お前のつがいは消えただけだ。またこの街に現れた時にその姿で対面したら絶対逃げられるぞ。下手するとつがいちゃんに、き・ら・わ・れ・るな。」

のろのろと上げた顔を見て苦しくなる。幼馴染で親友で誰よりも長い時間を共にして来た。戦さ場でお互いの背中を預けられる頼れる群れのリーダーとしての面構えはどこにもない。煽ってようやく見られた反応に

「とりあえず飯を食って、少しでも寝ろ。つがいちゃんに会った時に少しでも見れる様になっとけよ。」

俺たち獣人は見た目は良いはずだからな。特に俺たち狼人族は人族のメス受けがとてつもなく良い事は人族の国々に派遣され続けていれば嫌でも身をもって体験させられている。つがいしか愛せないと言っても一夜だけでもと言う輩が多いし、酷いのは自分がつがいだと言うとんでもないのまでいるくらいだ。だか今のコイツは…逞しい体はこれでもかってくらい縮こまり、髭は生え放題、目は死んだ様に光がない。一気に老け込んだコイツは小汚いくたびれたただのオヤジだ。言いよるメスは絶対にいない!

「今群れの奴らがつがいちゃんの情報を探してる。だから見つかった時お前がそんなだと…」

「おい!バカ、獣、騎士団!」

「はぁ⁈」

ハーデンの領主の計らいで獣人騎士団貸切の宿屋で喧嘩を売ってくるバカに目を向けると…

「いや、脳筋を忘れていたな。脳筋、バカ、獣、騎士団だな‼︎」
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