続・今日から車いす…え⁉マジで言ってんの?

satomi

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ヒカル臨月

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 早いもので、もうヒカルは臨月を迎えた。
 予定日を過ぎたというのに、双子はのうのうとヒカルの腹に収まっている。いい加減出てきて欲しい。
 両親sにも双子という事は伝えているので、ベビーベットは2台ある。というか、あらゆるものが2台となった。ベビーシートとか。
 子供部屋は間に合う。というか、余る。まだ子供を増やせという事だろうか?少子化だし?まぁいいんだけどさぁ。ヒカルがどう思うかだよなぁ?
 この双子、両親sにとっては喜ばしいのかな?俺も喜ばしいけどさ、2卵生で男女の双子です。二人とも賢く育って欲しいなぁ。
 そんなことを考えながら俺の部屋で仕事をしていると、ヒカルが部屋に来た。コーヒーの差し入れかな?と思って普通に部屋に招き入れた。
「亨ぅ、何か破水したっぽい。…いたたっ」


なにぃいいぃぃぃっぃぃぃぃぃぃぃ!!!


 何てことだろう?救急車は使えないんだよな。事前に用意しておいたバッグと大量のバスタオルを持って俺が運転する車でヒカルを病院まで連れて行った。
「先生!ヒカルが破水してー!」
「ご主人は落ち着いてください。実際に出産までまだ数時間かかりますので、お食事などしてきてはいかがでしょう?」
 こんな時になんてのんきなんだ!ポスターのモデルの話を断って正解だな。
「あと、お二人のご実家に連絡をされてはいかがでしょう?」
 おお、それはけっこう重要だな。

「アハハ!なーによ亨ってばそんなに慌てて。まだ産まれないわよ。うちも準備ができたらそっちに向かうわね」
 なんだ?うちの母親ものん気だな?
「もしもし、疋田さんですか?あの……ヒカルさんが破水をしまして「何よ、あの子やっと破水したの?のん気ねー?準備したらそっちに行くわ。それまでヒカルのことよろしくね、亨さん」
 疋田家ものん気だ。俺がおかしいのか?

「あ、亨」
「ヒカル、大丈夫か?」
「今診察も終わったところ。このあと、陣痛の間隔が狭くなってそれから出産よ。先は長いわ。亨も疲れちゃうよ?なんか食べてきた方がいいよ?」
 ヒカルもそう言うな?ファストフードでもサッと食べて来よう。アレはハイカロリーだからな。

「いたたっ……いたっ」
「ヒカル大丈夫か?俺は手を握ってやるしかできないもんな」
「ふぅ、…痛がってるときに腰をさすってくれると助かるな」
「わかった、何でも言ってくれ!」
 その後陣痛の間隔も短くなり、ヒカルは出産に臨むことになった。俺は祈るしかできない。今まで多くの武術を体得したことがここでは無力。


「おぎゃあ~~!!」
 泣き声が一つ聞こえた。あと一つ!
「おぎゃぁ」
 さっきよりも弱い泣き声だけど聞こえた。はぁ~っ産まれたんだ。
 おっといかんいかん!ヒカルは当然無事なんだろうな?
「えーっと、お父さんはどこかなぁ?織田さん?」
「はい、自分です!」
「元気なお嬢さんと坊ちゃんですよ。坊ちゃんの方が小さいですね。ですが普通で問題がない体重です。お嬢さんは言わずもがな!」
「亨、良かったなぁ。お前も親父かぁ。アッハッハッハ」
「亨さん、おめでとうございます。私にとって初孫ですもの。全力で可愛がります」
 いや…それはちょっと…。
「あ、ところでヒカル、妻は無事ですよね?」と看護師さんに聞くと、「疲れ果てて、眠ってます」という返事が来た。みんな無事でよかった。

数時間後、俺はヒカルとの再会を果たした。
「ヒカル、ありがとう。お疲れ様」
「本当にマジ疲れた~。痛いししんどい。でもやっぱ我が子は可愛いわ~」
「あ、そっか。ヒカルは授乳しなきゃで会ってるんだな。俺はまだ会ってないんだ」
「そんなに凹まないで。二人ともまだ目が開いてないし、しわくちゃで猿みたいな感じよ?人相がわかるのは皺が無くなったらかなぁ?」
「さっき可愛いって…」
「頑張った我が子だと思うと、情が湧くってもんよ?物理的にどうかは別物よ」


 数日後には新生児室に二人とも入ることとなった。
 先に生まれた女の子の名前は『優(ゆう)』。後に生まれた男の子の名前は『秀(しゅう)』に決めた。安易だけど、覚えやすいし。
 正直新生児室をガラス越しに見つめ、我が子を探し当てるのは至難の業。違いが分からない。見舞いに来る人の9割がそうだと思いたい。
 実際にヒカルが入院している部屋(VIPルーム)で会って初めて顔を見た。うん、まだ猿だった。
 早く顔を見たい。女の子はヒカルに似て美人だといいな。男の子の産声は弱かったけど、俺みたいに武術やらせたいなぁ。文武両道で。女の子は才色兼備かな?二つ名のように四字熟語をつけると。

「ヒカル、役所への届け出とかそういう面倒なのは俺がキッチリとやるから、ヒカルは体を休めろよ!」
 というように言っておいた。役所って面倒な手続きが多くて困る。そして待ち時間は長いし。


 そしてヒカルの体力も少しは回復した数日後、コノハちゃんがお見舞いに来てくれた。
「ヒカル、亨さん、おめでとうございます。双子なの?」
「女の子が優で、男の子が秀。今のところ、優の方が元気かな?……産声もデカかったし」
「痛みはどうだった?」
「意識がなくなればいいのにって思うほど。でもそう簡単に意識ってなくならないのね~」
 コノハちゃんも俺も閉口してしまう。ヒカル、ありがとう。帰ったら、ヒカルの好物いっぱい作ってあげよう。
「新生児室で探したけど、分からなかったよ。一応手首に名前書いたの巻いてるんでしょ?」
「あ、そろそろこの部屋に来ると思うよ。新生児室から、外の部屋デビュー」

「うわー!可愛い~!」
「まだ半分猿だなぁ!それでも前よりはヒトっぽくなったな。優も秀も目鼻立ちハッキリした美形だろ?」
「二人が親だからそうでしょうね……。亨さん、親バカになるんですか?」
「亨は親バカになるんじゃないかなぁ?優の言われるがままに、お小遣いあげたりさぁ」
「っばか、そんなわけないだろっ。きちんと怒る時は怒る!」
「そんなこと言って、『お父さんなんて大嫌い!』とか言われたら、凹んでプライベートルームにひきこもりそう」
「「はははっ」」

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