暗殺者は異世界でスローライフ

satomi

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そして、俺は異世界に来た。
なんだろう、こののどかな田園風景は。地平線が見える。

俺に今必要なのは衣食住だ。
衣は今着てるのでいいかな?下着は変えたいから、やっぱ先立つもの(金?)が欲しいな。
食はナイフがあるし、そこらの食えそうな獣を狩るか。
住は先立つものがないとなぁ。しばらくは野宿かな?

うむ、まずは‘食’の調達。
俺は放牧されている牛を狩ろうとした。
「何するの?うちの牛!」
「何って、俺の今日の食料にするんだよ」
「何てことを。うちの牛なの。手を出さないで。明日の朝になったらこの子達から搾乳するんだから!」
肉牛じゃなくて乳牛か…。

「食料ないみたいね?というか、あんたはどこから来たの?見ない顔ね?」
どこからと言われてもなぁ。
「とりあえず、俺の名前はユウジだ」
「私はヘラよ。あっちに家があるから、しばらくそこに泊まるといいわ。気づかない間にうちの牛を食べられたらたまらないもの」
なるほど。…それにしても。あっちに家…。地平線の向こうだろうか?地平線にチラッと家の屋根らしきものが見えるが?
とにかく‘食’と‘住’ゲット!

俺は信念として『働かざる者食うべからず』と思っているので、ヘラに教えてもらい乳牛の世話をすることにした。
なかなか重労働。酪農家さんがマッチョなのもわかる気がする。
朝早く起きて、搾乳・牛の寝藁の取り換えなど多岐にわたる重労働。
「うちはそんなにたくさん牛飼ってないから、まだ楽なほうよ?」
と、ヘラは言う。酪農家、恐るべし。

「ユウジが来てくれてから、仕事が楽になったなぁ」
と、ヘラの親父さんに言われる。
「このままヘラの婿に来ればいいのに…」
「おとーさん!そんなんじゃないって!」
あーあ、ヘラも頬を紅潮させちゃって。耳まで真っ赤。呑んでるのか?このオヤジ?

「ヘラは何才なんですか?ちなみに俺は27才ですよ」
「「えー!もっと若いと思った―!!」」
はい、どこでもそんなリアクションです。

「俺は自立した生活がしたいんですよね。なんでできたら、バイト代みたいに頂けるとありがたいです」
「うちからは無理かなぁ?食事も寝床も提供してるし」
だよな。
「他の農家さんでアルバイトをすればいいという事ですか?」
「う…うん、まぁ、そういうことだ」
「では、紹介状を書いていただけると助かります」

こうして俺はヘラの家の隣(といっても、地平線から見えない…)の農家でアルバイトをするようになった。

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