魔力は成長と共に…

satomi

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そんなこんなで俺は卒業した。剣術競技会では学園始まって以来初の入学から卒業まで優勝し続けた。だって痛いの嫌だもん。この件はロルフを怒らせた。
しかし、卒業後に王宮に行くことが決まっている俺に攻撃できないので、ロルフはそのまま歯噛みするだけだった。令嬢だったらハンカチ噛んでキーってやつだな。見るからに、悔しいって感情がわかる。淑女だったらNGだな。よかったな、令息で。

魔術は攻撃魔術から生活魔術まで幅広くマスターした。地味に。指導教官はマリウス様。俺が魔術を使えることを知っている人にしか教えを乞えなかったからなぁ。
最後には「君に教える事はもうない…」と言われた。寂しかったなぁ。師匠とのつきあいがなくなるのかぁって感じがした。
……これからは研究材料になるのかと思った。

殿下には卒業祝いにと剣を頂いた。「これは切れない剣だからねぇ。あ、魔力を込めれば切れるんだよ?」と恐ろしいことを言われた。つまり、魔力を使いながら護衛してね♡という事だ。

俺は殿下の護衛見習いという立場にいるようだ。王宮をウロチョロするけど。なので、剣術に関して今は、グビーズ様が師匠になる。グビーズ師匠は厳しい。あんなに痛いのが嫌だと話したのに、容赦なく俺に打ち身を…。痛いです!
曰く「俺の剣を避けれるようになれば一人前だな」だそうだけど、無理じゃね?

あー、今日も痛かった…。師匠は手加減ナシだかんなー。
…でも、ちょっとづつ見えてきている気がする。…気のせいじゃないといいけど。
っと。ん?今すれ違ったやつ(ここは王宮の一階の廊下)。なーんか変。ていうか変だ。
ローブであんまり見えないけど、顔隠してるし…。
殿下に報告しておくか。

「殿下、今日王宮一階の廊下ですれ違ったやつが変でした。具体的人相とかわからなくてスイマセン。そいつ、ローブを深くかぶっていたもので……」
初・俺の魔眼が役に立つのか?

「悪い!それ俺の妹だ」
はぁ?殿下の妹=王女様?

「ひどい人見知りでなぁ。俺の前に来てやっとローブを脱ぐくらいで、マリウスとグビーズの前でもローブを脱がないんだよ」

「ローブを着た別人の可能性は?」

「うん、そんな怪しい動きをするかなぁ?俺がスパイならもっと紛れるような格好するなぁ」
そうだよなぁ。それじゃ、あの怪しかったローブの人は王女殿下だったのか!!

それにしても、何であんな所にいたのだろう?

「殿下?王女殿下は何故あんな所に護衛もつけずに?」

「護衛なぁ。つけたいんだが…人見知りが激しすぎて、侍女すらも一人だ」
一人で頑張ってるんだな。

「乳兄弟の娘だ。しかしなぁ…問題もあって…。護衛がなぁ。男だろう?騎士は男だらけだからなぁ。特に王家の護衛となるような騎士となると…」
女性は難しいだろうなぁ。しかも、人見知りだし。

「ラルフ、お前護衛できないか?」

「殿下、俺じゃなくて私は正真正銘男ですよ?ついてるものはついてるんです!」

「王女はラルフがグビーズと鍛錬をしてるところを見るために廊下にいたのではないかと俺は思う」

「どういうことでしょうか?」

「鈍い男だなぁ?王女はお前に惚れてるんじゃないか?って話だよ!」
自分の妹なのにそんなにあっさりと。異母兄妹?…じゃないよなぁ。陛下には王妃が一人しかいないし。

「俺で良ければ護衛しますけど、俺はまだグビーズ師匠に免許皆伝とか言われてないですよ?」

「お前には魔術があるだろう?マリウスに免許皆伝言われた」
それでいいのかなぁ?

「護衛が魔術で良ければ、護衛やりますよ」

「そんな投げやりに言うな。王女は美形だ」
王家はキラキラしてるのか?


そして、王女と初対面の日。俺はきちんと挨拶をしたさ。
帰ってきた言葉に唖然としたけど。
「私が本日付けで王女の護衛をすることとなりました。ラルフ=チェーンです。よろしくお願いします」

「お兄様から聞いているわ。よろしくね」
あれ?人見知りじゃなかったのか?わりとすんなりしてるけど?

(うわー、本物のラルフが目の前にどうしよう?ってそのままでいいのか。なにるればいいんだろう?護衛の人にはどうすればいいの?助けてお兄様!)

俺はドアの前に立ってればいいのか?暇なんだけど…。師匠も暇なのかなぁ?


その頃、グビーズは盛大なクシャミを殿下の執務室でして殿下に怒られていた。この場合幼馴染なので特例である。
「悪い悪い、殿下。どっかの美女が俺の事噂してるのかも~」←弟子が頭の中で師匠の事を考えてたのです。


「お兄様の所に行きたいから、護衛を頼むわ!」

「了解しました」
暇すぎる!これなら、師匠にしごかれてる方がマシだ。精神修養か?それが目的なんだろうか?

俺と王女殿下は連れ立って殿下の執務室へと行った。
途中に怪しい人もいなかったし、よしよし。

「ここからはお兄様と二人にしてちょうだい!グビーズも部屋を出てくれる?」
俺とグビーズ師匠は久しぶりに二人になっら。

「師匠!護衛の仕事暇なんですけど…」

「暇なのは、護衛対象が安全って事だいい事じゃないか!」
そうなんだけど…。暇だからってドアの前で素振りとかしてるわけにもいかないし。

「王女はお茶会とか社交が沢山あるだろ?これから忙しくなるだろう(多分)」

「殿下の護衛って何をしてるんですか?」

「うーん、殿下と雑談しながら、ドアの前に立ちっぱなしだな」
やっぱドアの前に立ちっぱなし…。殿下と雑談できるからまだ間が持つよな。いいなぁ。俺が未熟なばっかりに…。

「俺だって王女の護衛したかったさ!でも…おっとこれ以上は言えないな…」
なんかむかむかするなぁ。すっきりしない。なんだろう?


その頃、扉の中では…。
「お兄様!ラルフ様が護衛ですけれど、彼に何をしてもらえばいいのでしょう?」

「護衛」

「それだけですの?同じ空間にいるのは嬉しいですけれど、ラルフ様ドアの前から動きませんし、声も出さないの」

「護衛だからね」

「もぅ!お兄様、せっかく同じ空間は嬉しいのですがどうしたらいいんでしょう?」

「護衛と護衛対象だからねぇ。今後お茶会とかイベントあるんじゃないのか?レディは社交シーズンだろう?」

「恐ろしいことを言わないでください!見知らぬ人が沢山いるところに行くなんて、恐ろしい」
とはいえ、王女として社交しないとダメじゃん?と殿下は思った。

「まぁ、陛下がルル(王女の名前)に甘いとはいえ、いずれはどこかに政略結婚するんだろうから、覚悟したほうがいいと思うけどなぁ」

「ラルフ様の家ではダメなのでしょうか?」

「あー、あの家の嫡男はラルフじゃないぞ。双子の兄という事になっている、ロルフという男だ。俺の読みだと、ラルフが長男だと思うんだけどなぁ。ラルフは魔術使えることとか公言してないから、家督はロルフが継ぐことになってる。当のラルフは家督に興味ナシ!」

「そんなぁ~」
世の中無常だなぁ。と殿下は思った。

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