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俺らが生まれたことがキセキだと思う。
俺らというのは俺と俺の弟の双子。俺の名前はラルフ。弟の名前がロルフ。
俺らはチェーン侯爵家に生まれた。俺が跡継ぎになるはずだ。だって俺が長男だから。
でも、生まれてすぐの魔力測定でロルフの魔力がとんでもない量だったので両親がロルフを跡継ぎとした。つまり、戸籍上はロルフが長男。俺・ラルフが次男となる。
ロルフはその膨大な魔力量で幼い時から周りに好かれるような容姿に変身させていた。そのため、ロルフは物凄く可愛がられた。
逆に俺は「双子なのにどうしてこんなに似てなくて、魔力量もそれほどなくて…」と、蔑まれていた。
俺は魔術も使えなかったので、役立たずの烙印を押され、使用人と同じ扱いを受けて成長した。俺は自室もなく、部屋は厩舎。食事は賄い。家族で食事をすることなどなかった。
俺の魔力量は成長と共に増えていった。
今ではロルフの魔力量を凌駕するほどじゃないかな?と思う。
さて、今日は俺達の魔術学園入学式だ。
魔術学園では寮生活となる。
自室が与えられ、まともに食事ができるのでありがたい。
ロルフは例のごとく周りに好かれるような容姿をしている。今はいわゆるイケメンといわれる部類になっている。
俺は素でそんなに悪い容姿ではないと思うけど、ロルフが悪い容姿になるように俺に魔術を施している。
イケメンのロルフとそうでもないラルフ、というように比較されるようにだ。「双子なのに…」と。
俺は見た目に興味がないのでこのままでも構わない。
俺の魔術でこのくらいいつでも看破できるのだが、放っておいている。
周りは俺が魔術が出来ることを知らない(教えてない)が。尚且つ、俺には魔眼がある。
魔術で姿を変えていても、真の姿が見える。
ロルフは…幼い時から魔術をかけ続けた弊害か?容姿が悪くなっている。
双子なのに俺とは似ても似つかない。
入学式、入学式。へぇ、あの子が首席入学なのか。
でも。自分の容姿に自信がないのか?魔術で変えているみたいだな。今現在の周りの評価は“才色兼備”だろうな。
あの男、すごくイケメンに見えるけど魔術で変えてる…。
あぁ、あの教師まで見た目を変えている。
そんなに見た目って大事なのか?俺にはわからない。
さっきの新入生代表の挨拶した子も別に変える必要ないと思うんだけどなぁ。
なんか、面倒なので一気に全員の魔術を解除した。
ロルフが動揺した。鏡で己の姿を見て「これは…誰だ?こんなの俺じゃない。俺はもっとイケメンなんだ」
因みにこの魔術はまた変身の魔術を使おうとしても無理。という魔術。
ロルフにはこのままの容姿で生きてもらう。
俺は変身魔術をかけられていたがそれが解除された。
俺の容姿はそんなに悪くないという部類だ。と思う。
ロルフに詰め寄られる。
「何でお前がその姿なんだよ?俺がこんなのっておかしいだろ?」
長年に渡って変身魔術を使い続けた弊害かと思うけど。いろいろ使い分けてたし。
対父上。対母上。対使用人。毎日ご苦労様だと思ってみていた。
「変身魔術の使いすぎじゃないかと思う。だって、幼児期からずっと使い続けていたでしょう?成長期とか関係なくずーっと」
それだと思う。やっぱ成長期とかは自然に任せた方がいいと思う。
ロ「で、なんでお前にかけた魔術が解けてるんだ?」
ラ「学園中の魔術で変身魔術が解けているけど?」
ロ「うわっ、絶対美人だと思ってた先輩が…」
ロルフは見た目重視なんだなぁ。
本日は殿下が学園を視察するらしい。OBだし。
殿下の左右には側近と思しき人がついている。
きっと良家の坊ちゃんで片方は文官系で片方は武官系なんだろうな。
3人ともみんなOBらしいから。
えーっと金髪でスラーっとした長身のイケメンでモノクルを着けてる人が文官系で学園の魔術道具科のOBかな?
逆サイドの茶髪でけっこうガッチリとした体格のイケメンが魔術騎士科のOBかな?
因みに俺もロルフも魔術騎士科。
殿下の周りはキラキラしてるなぁ。もちろん殿下自身もキラキラだけど。
殿下は金髪碧眼のTHE王子様って感じだ。賢いんだろうなぁ。
「殿下、昨年視察に来た際は変身魔術だらけでしたが、今年は誰一人変身魔術を使っていません。これはいったい…」
などと、殿下たちが話しているとは思いもよらない。
あのモノクルは魔眼と同じ効果があるようだ。
そんなわけで、魔術道具科では変身魔術を使っている人間はいない。
変身魔術を使っているのは‘脳筋’と言われがちな魔術騎士科の人間だけ。
「殿下!ご機嫌麗しゅうございます。このような姿でお見苦しく申し訳ありません」
真の姿を見苦しいと思っていたのかぁ。それじゃあなぁ。
でも、昔から魔術で変えた姿を『可愛い』とか言われて育ったんだし、人格形成の段階でおかしかったのか。
殿下は魔術騎士科OB。侯爵家の嫡男として挨拶に行ったのだろう。
「お前はその姿を見苦しいと?お前の真の姿だが?」
ロルフは口を噤んでしまった。
さすがに殿下の前ではイケメンで通りたかったんだろう。でもなぁ、あの側近から前から聞かされてたんだろうな。「ロルフは変身魔術を使っている」と。
「ん?お前…ロルフの双子の片割れか?」
「畏れ多くもチェーン侯爵家が次男のラルフと申します」
「ラルフ…ロルフ…。なるほど」
何が?
「何かお気に触ることをしてしまいましたか?」
俺はかなりドキドキなんだが。
「いや、気にしないでくれ。ちょっと面白いものが見つかった。ところで、君の魔力量計り直した?」
「いいえ。生まれた当時のままです。魔力量も少なく、魔術も碌に使えません」
公式にはそういう事になっているのです。
「それは大変だ。もう一度魔力量を計り直すことを提案するよ。もし膨大な魔力量でもあったら、俺を訪ねてくれ」
それは決定事項なのか?殿下のお言葉だしなぁ。
「そんなわけないですよ、殿下。こいつは役立たずのラルフですよ?」
そうロルフは言うが、殿下の側近さんに睨まれて閉口した。俺…また魔力量計るのかな?
俺らというのは俺と俺の弟の双子。俺の名前はラルフ。弟の名前がロルフ。
俺らはチェーン侯爵家に生まれた。俺が跡継ぎになるはずだ。だって俺が長男だから。
でも、生まれてすぐの魔力測定でロルフの魔力がとんでもない量だったので両親がロルフを跡継ぎとした。つまり、戸籍上はロルフが長男。俺・ラルフが次男となる。
ロルフはその膨大な魔力量で幼い時から周りに好かれるような容姿に変身させていた。そのため、ロルフは物凄く可愛がられた。
逆に俺は「双子なのにどうしてこんなに似てなくて、魔力量もそれほどなくて…」と、蔑まれていた。
俺は魔術も使えなかったので、役立たずの烙印を押され、使用人と同じ扱いを受けて成長した。俺は自室もなく、部屋は厩舎。食事は賄い。家族で食事をすることなどなかった。
俺の魔力量は成長と共に増えていった。
今ではロルフの魔力量を凌駕するほどじゃないかな?と思う。
さて、今日は俺達の魔術学園入学式だ。
魔術学園では寮生活となる。
自室が与えられ、まともに食事ができるのでありがたい。
ロルフは例のごとく周りに好かれるような容姿をしている。今はいわゆるイケメンといわれる部類になっている。
俺は素でそんなに悪い容姿ではないと思うけど、ロルフが悪い容姿になるように俺に魔術を施している。
イケメンのロルフとそうでもないラルフ、というように比較されるようにだ。「双子なのに…」と。
俺は見た目に興味がないのでこのままでも構わない。
俺の魔術でこのくらいいつでも看破できるのだが、放っておいている。
周りは俺が魔術が出来ることを知らない(教えてない)が。尚且つ、俺には魔眼がある。
魔術で姿を変えていても、真の姿が見える。
ロルフは…幼い時から魔術をかけ続けた弊害か?容姿が悪くなっている。
双子なのに俺とは似ても似つかない。
入学式、入学式。へぇ、あの子が首席入学なのか。
でも。自分の容姿に自信がないのか?魔術で変えているみたいだな。今現在の周りの評価は“才色兼備”だろうな。
あの男、すごくイケメンに見えるけど魔術で変えてる…。
あぁ、あの教師まで見た目を変えている。
そんなに見た目って大事なのか?俺にはわからない。
さっきの新入生代表の挨拶した子も別に変える必要ないと思うんだけどなぁ。
なんか、面倒なので一気に全員の魔術を解除した。
ロルフが動揺した。鏡で己の姿を見て「これは…誰だ?こんなの俺じゃない。俺はもっとイケメンなんだ」
因みにこの魔術はまた変身の魔術を使おうとしても無理。という魔術。
ロルフにはこのままの容姿で生きてもらう。
俺は変身魔術をかけられていたがそれが解除された。
俺の容姿はそんなに悪くないという部類だ。と思う。
ロルフに詰め寄られる。
「何でお前がその姿なんだよ?俺がこんなのっておかしいだろ?」
長年に渡って変身魔術を使い続けた弊害かと思うけど。いろいろ使い分けてたし。
対父上。対母上。対使用人。毎日ご苦労様だと思ってみていた。
「変身魔術の使いすぎじゃないかと思う。だって、幼児期からずっと使い続けていたでしょう?成長期とか関係なくずーっと」
それだと思う。やっぱ成長期とかは自然に任せた方がいいと思う。
ロ「で、なんでお前にかけた魔術が解けてるんだ?」
ラ「学園中の魔術で変身魔術が解けているけど?」
ロ「うわっ、絶対美人だと思ってた先輩が…」
ロルフは見た目重視なんだなぁ。
本日は殿下が学園を視察するらしい。OBだし。
殿下の左右には側近と思しき人がついている。
きっと良家の坊ちゃんで片方は文官系で片方は武官系なんだろうな。
3人ともみんなOBらしいから。
えーっと金髪でスラーっとした長身のイケメンでモノクルを着けてる人が文官系で学園の魔術道具科のOBかな?
逆サイドの茶髪でけっこうガッチリとした体格のイケメンが魔術騎士科のOBかな?
因みに俺もロルフも魔術騎士科。
殿下の周りはキラキラしてるなぁ。もちろん殿下自身もキラキラだけど。
殿下は金髪碧眼のTHE王子様って感じだ。賢いんだろうなぁ。
「殿下、昨年視察に来た際は変身魔術だらけでしたが、今年は誰一人変身魔術を使っていません。これはいったい…」
などと、殿下たちが話しているとは思いもよらない。
あのモノクルは魔眼と同じ効果があるようだ。
そんなわけで、魔術道具科では変身魔術を使っている人間はいない。
変身魔術を使っているのは‘脳筋’と言われがちな魔術騎士科の人間だけ。
「殿下!ご機嫌麗しゅうございます。このような姿でお見苦しく申し訳ありません」
真の姿を見苦しいと思っていたのかぁ。それじゃあなぁ。
でも、昔から魔術で変えた姿を『可愛い』とか言われて育ったんだし、人格形成の段階でおかしかったのか。
殿下は魔術騎士科OB。侯爵家の嫡男として挨拶に行ったのだろう。
「お前はその姿を見苦しいと?お前の真の姿だが?」
ロルフは口を噤んでしまった。
さすがに殿下の前ではイケメンで通りたかったんだろう。でもなぁ、あの側近から前から聞かされてたんだろうな。「ロルフは変身魔術を使っている」と。
「ん?お前…ロルフの双子の片割れか?」
「畏れ多くもチェーン侯爵家が次男のラルフと申します」
「ラルフ…ロルフ…。なるほど」
何が?
「何かお気に触ることをしてしまいましたか?」
俺はかなりドキドキなんだが。
「いや、気にしないでくれ。ちょっと面白いものが見つかった。ところで、君の魔力量計り直した?」
「いいえ。生まれた当時のままです。魔力量も少なく、魔術も碌に使えません」
公式にはそういう事になっているのです。
「それは大変だ。もう一度魔力量を計り直すことを提案するよ。もし膨大な魔力量でもあったら、俺を訪ねてくれ」
それは決定事項なのか?殿下のお言葉だしなぁ。
「そんなわけないですよ、殿下。こいつは役立たずのラルフですよ?」
そうロルフは言うが、殿下の側近さんに睨まれて閉口した。俺…また魔力量計るのかな?
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