33 / 35
悪党の末路
しおりを挟む私はなぜか侍従棟の大浴場でくつろいでいる姫さまと対峙していた。
「なんで姫さまがここにいるんですか。」
「湯浴みをしたかったからよ。」
「姫さま専用の浴場があるじゃないですか。」
「広い浴場がよかったの。」
姫さま専用の浴場は確かこことあまり大きさが変わらなかったような···。
「姫さま、護衛や侍女さんたちはどうしたんですか。」
「そんなの、まいてきたに決まってるじゃない。」
えっへん、と胸を張って言う姫さま。
いや、胸を張って堂々と言うことじゃない。
「とにかく、早くもどっ───ハックシュッ!」
あー、ずっと裸で立ってるから体が冷えてきたみたいだ。
「もう、そのままじゃ風邪をひくわよ。
いつまでもそこに立ってないで早く入りなさいよ。」
「誰のせいでまだ湯船につけてないと思ってるんですか。」
とはいえ、さすがにこのままでは本当に風邪をひきかねないので仕方なく入ることにした。
「ねぇ、リーナ、前に二人きりのときは敬語なしって約束したわよね。」
「あー、そんなこともありましたね。」
あれは確か初日のあいさつをしに行ったときのことだったっけ。
初めは無理やり第三者を呼び寄せたりして二人きりの時間を避けていたのですっかり忘れていた。
「今、二人きりよ?」
湯船に浸かって顔を火照らせた姫さまが隣でくつろぐ私に上目遣いで迫った。
13歳の美少女が、裸で上目遣いで迫ってくる···。
うーん、···エロい。
「···まー、約束ですし。
私はただいまオフなので構わないですよ。」
姫さまの危ない上目遣いに違う意味で屈しないように視線を逸らしつつ答える。
「の、割には敬語ね。」
「はーい、なおしま···直す直す。」
さらに近づいて誘惑してくる(私がそう思っているだけ)姫さまに私の理性の危険を感じたので折れることにした。
···胸が、胸が当たってるんだもん!!
美少女の胸が!!!!
私が敬語を外して話せば、そのあとは姫さまもいつも通り話しかけてきたので二人でなんでもない日常の話をした。
姫さまの歴代の護衛の話や私の孤児院での話なども。
「そういえば姫さま、祭りの時どうして城を抜け出したりしたの?」
「外が賑わっていて楽しそうだったのよ。
屋台のもの食べてみたかったし。」
姫さまは思い出して都合が悪くなったのか鼻先まで湯船に沈めてブクブクし始めた。
「屋台のものって、城にも献上されて皇族も食べれるんじゃ?」
「何度も毒味されて冷えきったものを食べさせられてるだけよ。
私は目の前でできた熱々の料理を食べたかったの。
リーナは知らないだろうけど、実は献上されるときに王宮のシェフによって味付けに手を加えられていたりするのよ?」
「なるほど。」
だからといって抜け出していい理由にはならないけれど、あの賑やかな雰囲気の中で城に閉じ込められっぱなしは可哀想な気がした。
「そういえば、あの悪党たちはどうなったの?」
「あの男たちは捕らえられた後に死んだそうよ。」
「そうで───えっ?」
姫さまがあまりにもさらっと言うので私は流しそうになった。
「捕まえた後に計画犯かとか誰かに依頼されたのかとか調べていたら突然倒れてぽっくりと。って私は聞いているわね。」
彼女は目を伏せて指で水面を揺らした。
おそらく、あのときの悪党の話ぶりからすると何者かからの依頼だろう。
手練れが混じっていたのも気になるし。
「まぁ、おかげでいい専属護衛が見つかったからいいわ。
ふぅ、私はもう行くから残りの時間ゆっくりしなさい。」
勢いよく立ち上がって湯船から出た姫さまはそのまま脱衣場へ歩いて行った。
───が、すぐ戻ってきた。
「服を着るのだけ手伝ってくれないかしら?」
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。
夢草 蝶
恋愛
侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。
そのため、当然婚約者もいない。
なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。
差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。
すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる