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コブの恨み
しおりを挟む駐在兵の制服を着た何者かは私を見て残念そうにため息をついた。
「やっぱり騎士様と一般兵士じゃ渡り合えないか。」
「一般兵士?あなたは兵士なんですか?」
「俺の格好を見てわからねーの?」
「駐在兵から制服を奪って着ている可能性がありますから。」
しかし、詰所が襲撃されているとなると王子たちはもう襲われているかもしれない。
早く、彼らの馬車へ向かわなければ。
「リーナ、先に留学生たちの方へ行ってくれないか?」
私の考えを読んだように後ろからお腹に響くような低い声がした。
頭の上に大きな手がポンッと乗せられて振り向けば、いかついおじさまは鋭い濃紺の目をギラギラさせて立っている。
「え、ゼクロスさん?」
「君の方が身軽だし、森の中も進みやすいだろう。
私はこの兵士もどきを叩きのめして騎士隊を呼んでおく。
それにあの者の相手は私がしたい。」
よく見ればゼクロスさんのおでこにコブができている。
髪の生え際でわからなかったが腫れた部分が少しずつ赤くなってきている。
突然攻撃されたから何にも考えずに放り投げちゃったんだよね。
とても申し訳ない、それと、めちゃくちゃ痛そう。
「あの、コブが···」
「気にするな、そもそも詰所だからと油断した私が悪いし、だが、もっと言えば攻撃してきたあいつが悪い。
なんとしてでも、このコブの恨みを晴らさねば。」
なるほど、ギラギラしていたのはそういうことなんですね。
気にするなとか言いながら恨みを晴らそうとしてる···。
ゼクロスさん自身を投げた私はなにも言えずに苦笑するしかなかった。
「そうですか···。
でも、騎士隊を今から呼べるんですか?」
「多少時間はかかるがな。
なにも騎士隊がいるのは王城だけじゃない。
問題はとうに起きてしまっているようだしこれなら文句は無いだろ。」
何故かスッキリしたように言うゼクロスさん。
もしかしたらこの件で騎士隊を動かすことに上の人たちがかなり渋ったのかもしれない。
とにかく、いまは彼からも言われたので王子たちのもとへ向かうことにする。
それも一刻も早く。
「わかりました!」
私は兵士もどきに背を向けて建物の入り口へ向かった。
しかし、入り口には別の兵士もどきが二人、立って道を塞いでいた。
「もう、急いでるときに限って!!」
「はっはっ、ここはとおらっ───ブヘッ」
私は跳躍して一人の顔面を踏みつけて外へ出た。
「なんだ今の!?おい、大丈夫か!?
ちくしょう、待てお前!!」
兵士がわーわー叫んでいるが知らない。
急いでいる上に普通、待てと言われて待つはずがな
い。
馬へ飛び乗った私はまずは西南の草原へ急いだのだった。
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