上 下
24 / 35

なんだか噛み合ってない?

しおりを挟む








「はーい、失礼しまーす。
お二方はそこから出ないでねー。」


私は木のウロの前に立つと注意を促した。
二人が外にいるよりも守りやすいからね!




「えっ、あの、貴女は···?」


若葉色の髪を後ろにまとめた少年?が私に声をかけた。
多分彼がアシッダール王国のリョクア・アシッダール第二王子。
てことは、そのとなりの明るい若菜色の子がシュカナ・アシッダール第三王女かな。


「私はアズライト国皇から要請を受けて参ったものです。
とりあえずお二人はそこから出ないでくださいねー。
賊を片付けてからゆっくりお話したいので。」


「なめんじゃねーぞ!
たかが女のガキじゃねーか!!」


「誰がガキだって!?私はこれでも元娼婦だー!!」


私は私をガキ呼ばわりした賊の一人に目一杯力をこめて拳大の石を投げつけた。


「ぐはっ!」


石が当たった賊は胃の中身を吐き出しながら前のめりに倒れた。
鳩尾辺りに当たるようにコントロールはしたので死ぬことはない、···おそらくは。


「なにやってんだ情けねぇ。」


「おい、大丈夫か!?
ダメだ、意識がねえ。なんちゅう馬鹿力だ!」


なんかいっぱい集まってきたなぁ。
久しぶりの戦闘だから少し多い位がちょうど良いけれど···。


とりあえず、私を囲んだ賊の人数をおおざっぱに数える。



···全部で約20人くらいか。
思ったよりはいないな。久しぶりだからおもいっきり暴れたかったのに。


つい肩を落としてため息をつけば賊たちはニタニタと笑い始めた。
私が人数に圧倒されたと思ったのだろうか。


「ははっ、今さら怖くなってももう遅いぞ。」


「まさか、俺たちの邪魔をしてくるやつがいるとは思わなかったけれどな。」


「まぁ、万が一に俺たちを全員倒すことが出来ても先に進んだやつらがいるからな、無事に帰ることはできないだろうよ。」


「えっ、まだいるの!?」


私はつい目を輝かせて反応してしまった。
こいつらを倒してもおかわりがあるなんてなんと素晴らしいことだろう!!


「ふんっ、そうだ。先にはまだ15人仲間がいるんだ。
逃げれるなんて思うなよ。
そもそも、俺たちだけで襲いかかってもお前なんかひとたまりもないけどな。」


「···15人。」



···少ない、詐欺だ。



「だから、降伏するなら今だぞ。
そこの二人を渡せばお前は俺たちが飼ってやる。
毎日、気持ちよくしてやるからよ。」


「そんな、···15人しかいないなんて。」


「そうだ。15人しか···、え?」


「なんだか話が噛み合ってない···?」


後ろの王子から困惑する声が聞こえたが気にしない。


とにかく、あんまり楽しめないことはわかったし、時間を割きすぎれば騎士隊が到着して久しぶりの獲物を横取りされてしまう。


「いいや、早く終わらせよ。」


私は腰に提げた剣を抜いて地面に線を引いた。
昔、野獣討伐の時によくやっていた癖。
線を敵に越えられてしまったら自分に罰を与えるのだ。


「今回の罰は、『3日間姫さまのいたずらにかかり続ける』にしよう。
うーん、我ながら厳しい罰。」


「何言ってんだガキが!
バカにしていられるのも今のうちだ!
お前ら、やるぞ。殺してもかまわねぇ!」


賊が怒号とともに一斉に襲いかかってくる。
いい大人が少女一人によってたかって恥ずかしくないのだろうか。
そう思いつつ私は剣を構えた。













しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...