上 下
18 / 35

国皇のお話

しおりを挟む







「苦労をかけておいてなんだがこれからもフィオを頼む。」


「もったいなきお言葉です。
これからも国皇様の期待に添えるよう精進して参ります。」


国皇はすがるように言った。


もって一ヶ月、ということはそれよりも短い期間にやめていった人たちがそれなりにいるのだろう。
···本当に、姫さまなにやってるの。




「それよりもお父様、私にお話があるとのことでしたが?」


話題の姫さまは流石に居心地が悪いのか、話を進めることにしたようだ。


「あぁ、実はフィオに来月お茶会を開いてほしいんだ。」


「お茶会ですか。
急ですわね、何かあったのですか?」



『お茶会』という言葉を聞いて姫さまは叱られてしゅんとした状態から第一皇女の姿勢へと変わった。
お茶会は社交の場であり、高貴な身分の女性にとっては大事な仕事、そして戦いの場でもある。
この国で最も高貴な姫さまならなおさらその意味合いは強い。
しかも主催者としてお茶会を開くのだからこの切り替わりは当然とも言える。


そして、普段の姫さまから第一皇女になるこのギャップがかなり私の性癖に刺さる。
···おっと、いらない情報が紛れ込んだ。




「実は来月にアシッダール王国から王子と姫君が留学生として来ることになったのだが、歓迎パーティーとは別に編入前の交流の場が欲しいんだ。
あちらの王子たちとフィオは似たような年頃だから丁度いいと思ったんだけど。」


「なるほど、編入先は皇立学園で間違いないですか?」


「合っているよ。
それから一応こちらで招待客のリストを作成してみたから見てほしい。」



国皇が合図するとガーナードさんが姫さまの前に二枚の紙を置いた。
それぞれに貴族の子息女の名前が連ねられているようだ。
姫さまはリストを食い入るように見つめてから顔を上げた。



「お父様、スヴェルム公爵家令嬢、それからインスト侯爵子息とカイサル侯爵子息にアルバニャ伯爵令嬢は除きましょう。」


「さすがだね。」


「頼んでおいて試すなんて人が悪いですわね。
学園に通っていなくてもそれくらいの情報は持っています。」



私にはなんの話をしているのかよくわからないが、多分学校で問題になっている生徒もリストに入れていたのだろう。
情報力を試すために。


にしても、スヴェ···公爵?なんか聞いたことがあるような、ないような。



「しかし、なぜ私にこの話が?
学園に通っているお兄様たちにもできるでしょうに。」


「簡単に言えばフィオの実績作りだよ。
いままではあまり外交規模の大きなお茶会はすべて側妃たちに任せていたから。
そろそろフィオにも本格的に動いてほしいからね、同じ年頃同士だしいい練習になればと思って。
もちろん、彼らや側妃たちに手伝わせることは問題ない。」


「かしこまりました、では来月に向けて準備を行います。」



姫さまは専属侍女のクシュー姉妹に目配せをすると二人はうなずいて部屋を退出していった。
私は雇われてからお茶会ははじめてなのでそれがなんの合図かは分からなかった。




なんだか一人だけ置いてけぼりをくらっているようで寂しいです。











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。

夢草 蝶
恋愛
 侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。  そのため、当然婚約者もいない。  なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。  差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。  すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる

兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

[完結]勇者の旅の裏側で

八月森
ファンタジー
神官の少女リュイスは、神殿から預かったある依頼と共に冒険者の宿〈剣の継承亭〉を訪れ、そこで、店内の喧騒の中で一人眠っていた女剣士アレニエと出会う。                                      起き抜けに暴漢を叩きのめしたアレニエに衝撃を受けたリュイスは、衝動のままに懇願する。               「私と一緒に……勇者さまを助けてください!」                                        「………………はい?」                                                   『旅半ばで魔王の側近に襲われ、命を落とす』と予見された勇者を、陰から救い出す。それが、リュイスの持ち込んだ依頼だった。                                                       依頼を受諾したアレニエはリュイスと共に、勇者死亡予定現場に向かって旅立つ。                             旅を通じて、彼女たちは少しずつその距離を縮めていく。                                          しかし二人は、お互いに、人には言えない秘密を抱えていた。                                         人々の希望の象徴として、表舞台を歩む勇者の旅路。その陰に、一組の剣士と神官の姿が見え隠れしていたことは、あまり知られていない。                                                これは二人の少女が、勇者の旅を裏側で支えながら、自身の居場所を見つける物語。                            ・1章には勇者は出てきません。                                                     ・本編の視点は基本的にアレニエかリュイス。その他のキャラ視点の場合は幕間になります。                    ・短い場面転換は―――― 長い場面転換は*** 視点切替は◆◇◆◇◆ で区切っています。                    ・小説家になろう、カクヨム、ハーメルンにも掲載しています。

処理中です...