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「旦那様、あの子がクルアですの?」
女の人が父様に向かって言った。
が、父様は下敷きになって気絶でもしているのか何も言わない。
「あの女にそっくりですわね。
嫌ですわ、なかなか会いに来てくれなくてやっと来てくださったかと思ったらあの女の子供をつれてくるなんて。」
─な、···何を言っているのだろうか···。
女の人は一人で喋り続けた。
だが、私には何も入ってこなかった。
だって、今日会えるのは私を産んだお母様で、でも、いま目の前にいるのは私のお母様ではない。
わけが分からないけど、なんだか目の前の女の人に無性に腹が立った。
「あの、どなたか存じ上げませんが、とーさまから離れていただけますか?」
「どうして?だって私の旦那様よ?」
「どうしてって、目障りだからです。
その下品な行為を私のとーさまにいつまでなさるつもりですか?」
女の人が私を睨んだが、そんなのは全く怖くない、といった感じで堂々と言って見せた。
─本当はかなりビビってるけどね!!
美人って睨むと怖いよね。
だが、引くわけにはいかない。
そう思って睨み返していると、彼女の顔が強ばった。
「それに、今日はあなたに会いに来たのではなくて私を迎えるためにここまで娘と共に来てくださったのです。
あなたのような小娘は引っ込んでいなさい。」
後ろから突然鈴の鳴るような声がした。
「えっ?」
「お待たせしてしまってごめんなさいね。」
そう言って笑った女の人は私と同じ金色の目で赤みがかった銀色の髪だったが──
─なんか、髪が動いてない?
そう、髪が意思を持っているように動いていた。
マンガのキャラが怒ったときにざわざわって髪が浮く感じじゃなくむしろ、うねうねって感じだった。
「なっ、あんたまだ生きていたの!?」
「当たり前でしょう。娘の顔も見ずに死んでいられますか。」
─と、いうことはあとから来た人が私のお母様なんだ。
「旦那様も、いつまで寝ているつもりですか?」
お母様が言うとそれまで動きがなかった父様が動きはじめて、女の人をどけた。
「だっ、旦那様!!
私はあの親子にいじめられていますわ。
助けてくださいまし!!」
どけられた女の人はとーさまに泣きつこうとしたが、
「ステラ、これ以上、私の家族をバカにするのは止めてくれないか?」
父様がステラという女の人を冷たく睨んだ。
「だっ、旦那···。
くっ、メドゥーサ一族の死に損ないがっ!!
親子で旦那をたぶらかすなんて。」
そう言うと、ステラさんは出ていってしまった。
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