大魔王の娘に転生したのはいいが、何故か幼なじみたちが勇者として現れた

弥刀咲 夕子

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あれからの旅路

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私たちは城の南の森から出て、人間界を目指してさらに南に向かいはじめて1ヶ月が経とうとしていた。

途中、検問を迂回したりするために道なき道を通ったり、追っ手に話しかけられたりとハラハラする場面があったが今のところ順調に進めている。



「サク、疲れてはいないですか?」



エルさんは相変わらず親切である。

「疲れたらすぐ言ってください。
おんぶでも抱っこでもしますから。」

「大丈夫です。それに今日はまだ半日も歩いてないですよ。」

最近はなんだか過保護な気もしなくない。

「エル、さすがにおんぶでも抱っこでもはないんじゃないか?
いくら、魔族は長命でももう14だぞ?」

ハルさんは特に変わらずそのままである。

「しかし、サクに何かあってからでは···」

「全然大丈夫ですから、気にしなくてもいいですよ?」

「ほら、本人もこう言ってるわけだし!!」

私が言うと、何故かハルさんが横で胸を張った。



「どうしてお前が偉そうなんだ···。」



ごもっともでございます。




そんなこんなで今日も人間界に向けて歩みを進めていた。
一ヶ月かけてやっと半分弱といったところだろうか。
本来はきちんとした道を乗り物で通れれば人間界までは一ヶ月でつくらしい。
空を飛べればなお早く。
しかし、現状私は追われる身である上に魔力のコントロールが未だにうまくいかないためどこかに飛ばされかねない。
ということでやはり地道に歩くしかない。



正直、二人にはかなり迷惑をかけている。



この一ヶ月ずっと二人と一緒にいて彼らの優しさをひしひしと感じていた。
私をグレンさんから預かり、城からもあのログハウスからも遠い人間界へ送り届けようとしてることも、その過程で旅に慣れない私がうまく進めるように、肉体的にも精神的にも限界が来ないように気にしながら歩調を合わせてくれたり。



「お、あそこならそこそこな宿がありそうだ。」



「サク、今日はあの村に泊まらせてもらいましょう!!」



ほら、こんなふうにたまに村や町に寄って休めるように手配してくれたり。
追われる身でそれはとても危険なことだろうに。
はじめの頃はどうしてここまでしてくれるのか何度も聞いてたけど、二人はいつも揃って


「ファンクラブの会員なんだから推しに協力するのは当然だろう」


って意味わかんない返事を返す。

いくらなんでもそこまでするかな。



「サク、疲れましたか?」


返事を返さないのを不思議に思ったのかエルさんが私の顔を心配そうに見る。

「そう、ですね。少し疲れたようです。
でも、大丈夫なんですか?最近は前よりいろいろ厳しくなってきてるんですよね?
このあいだも街に入るのに時間がかかってるようでしたし。」

少し前に通り過ぎた街の入口は、森から見てもわかるくらいに検問に長い列ができていた。
時間がかかるせいか周りにテントなどが立てられ街の外まで屋台が出来ていた。

「あそこはもともとそういう街だからなー。
でも、サクの捜索で厳しくなってるのは確かだ。
まああそこに手配書があったとして、こんだけ別人になってるしそうそうバレることはないだろ。」

ハルさんは私の頭をガシガシ掴んだ。
撫でているつもりなのかなぁ。

「ハル、もっと優しく扱うことはできないのか!?」

「えー、これでも優しい方だと思うんだけどー?」

「ハルさん、髪が乱れるからもうやめてください。
少し痛いですし。」

「あ、まじ?ごめんごめん。」

「ほら、言ったろう!!」



二人はいつも私に気を遣ってくれる。
でも、やってもらうばっかりはいやだなぁ。
いつかたくさん彼らに返していけたらいいな。
そう思いつつわーわー言い合う二人の先に進んで振り向く。





「ほら、行くなら早く行きましょう。
部屋が埋まっちゃうかもしれませんよ!!」










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