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変装の魔法

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「くっ、クルア姫···その···姿はっ···ブハッあっはは、ダメだこりゃ無理だ!
あっはははっ」




「······。」





私の姿を見て大笑いするグレンさんに冷たい視線を送る。

「あっ、あのっ、グレン様···?」

「···ブッあははっやっやべー、これは、はははは!」

おろおろするエルさんにゲラゲラ笑うハルさん。





なぜ、こうなったか?





私が変化の魔法を使って姿を変えたからだよ!


イメージしたのは前世で見たアニメの魔法少女の姿。
しかし、衣装の細かいところまで思い出しているうちに何故かレースやらリボンが盛りだくさんになってしまい、フリフリお化けと姿を変えてしまったのだった。
しかも、衣装に気を配りすぎたのか顔はほとんどのっぺらぼう。
でも、仕方ないじゃん。


魔法少女の衣装って憧れるでしょ!


「なるほど···ははっ、ナルサ様が言ってたのは、こういうことか、あはは」

グレンさんや、笑いながら納得するのやめれ。

「あははっあっははははっ」

ハルさんはもう笑ってしかいない。




···いい加減にしろい。


「解除」

私が呟くと、変化の姿から元の姿に戻った。

「はーっ、笑った笑った。」

「人の気も知らないで···。」

「ごめんごめん。
でも、君は魔力がありすぎるせいでイメージを少し意識しただけであんなに影響するんだね。」

グレンさんが私の頭をポンポンと撫でながら言った。

「クルア様、面白すぎですから!」

言ったのは未だにニヤついているハルさん。


こんにゃろうめ!!



「あの、いいでしょうか。」



挙手したのは唯一笑っていないエルさん。
いや、実は心の中で笑ってるかも···。

「ど、どうぞ。」

「先ほどは服装まで意識したから失敗してしまったのですよね。
でしたら、一部だけを意識してやってみてはいかがでしょうか?」

「「一部だけ···?」」

「はい、例えば体全体を変えるのではなく、顔だけ、とか。」

なるほど、確かにその方がイメージしやすいし全体を変えるわけじゃないからやり易いかも!

「それ、いいですね。さっそくやってみます!」

また失敗するのでは、とニヤニヤしている二人は放っておく。



後で覚えてなさいよ!







「···上手く、いきましたね···。」
「いったね···。」

私を見て分かりやすく肩を落とすのはハルさんとグレンさん。

「なんで残念そうにしてるんですか。
弟子が成長したなら喜ぶべきじゃないですか?」

「時と場合によるよね?」

グレンさんがハルさんに同意を求めた。

「弟子とったことないから分からないですけど今回は残念でした。」

···ケンカ売ってんのかな?

私は二人を睨んだ。

「ハル、それは失礼だろう。
クルア様、上手くいってよかったです。」

「···ありがとうございます。」

なんだろう、同情されてる気がして素直に感謝できない···。




とにかく、そんなこんなで姿を変えることができた私は金髪翠目の姿の少女として人間界を目指すことになったのだった。







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