大魔王の娘に転生したのはいいが、何故か幼なじみたちが勇者として現れた

不憫

「ねぇ最近、大魔王様が新しい女の魔族をつれて歩いてるって本当？」

「···急になんですか、ナルサさん。」
魔法書をナルサさんの部屋で読んでいると、彼女が私の隣に座って言った。

何故彼女の部屋で魔法書を読んでいるかというと、この部屋にある本は貴重なものばかりで盗まれる可能性を考えて、ナルサさんが彼女以外の人が本を持ち出した場合に本が持ち出した本人ごと燃えるという魔法をかけているからである。

私がこの部屋から本を借りたいと言った時に教えてもらった。
つまり、私が誤って本を持ち出した場合は扉の前で炭に姿を変えるわけ。

···なんちゅー魔法だ。
本を持ち出しただけで炭になるとは、恐ろしい防犯対策。

とにかく、本を読むときはナルサさんの部屋にお邪魔させてもらっている。
そんななかでのあの質問···。
隣に座るナルサさんは興味津々。

「どうでしょうね。
でも、そんなの父様の自由じゃないですか？
娘だからといって、私が口を出すようなことじゃないですから。」
本に目を戻しながら言った。
「クルア姫はドライだね。
大魔王様はあんなにクルア姫のこと溺愛しているのに。」
「別に、親子だから知っていなくちゃいけないなんてルールありませんし。
そもそも、最近はほとんど話しませんから。」

そう、最近全く話していないのに相手の行動や変化が分かるわけないと思う。
しかし、そんなこと全く知らないナルサさんは、

「えぇっ！
大魔王様と話してないの!?」

と、目をまんまるくして驚愕の声をあげた。
そんなに驚くことかな。
「どうして？ケンカした？」
「いえ、少し前の出張後からずっとそんな感じですよ。」
「少し前の出張後って、３ヶ月も前じゃん。」
あら、そんなにたっていたのね。
３ヶ月もあの状態が続いていたなんて驚きだわ。

「なんかあったんじゃないの？」
「なんかあったんでしょうね。」
平然と返す私を見てナルサさんが頭を抱えた。

「なんか、大魔王様が不憫!!」