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side木霊 マジか

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私たちが強制的に召喚されてここへ来たことを知らないのか、王様はどんどん国が救われるつもりで話を進めていく。
「部下が失礼致しました。
私はこのテンブール王国の王のジリオン・テンブールと申します。
今回は来てくださり本当にありがとうございます。」

「···あのー、とても言いにくいのですが、私たちは突然召喚されただけで、国を救うとか全く聞いてないんです。」
とりあえず、間違いは正さないと後々面倒なことになりそうだ。

「「···え?」」

王様と側近っぽい人(もう側近で良いや)が固まる。
そりゃそうだよね、自国を救いに来たと思っていたのに何も知らないって言われてるんだもの。

「じ、ジード、いったい···」
側近の人が私たちの後ろにいるジードさんを見た。
ちなみに、王様も説明してほしそうな顔だ。

「はぁ、あなた方は本当に人の話を聞きませんよね。」

ジードさんが盛大なため息をついた。
「私は、勇者になり得る人材を召喚すると言ったのです。
完全な勇者を呼び出すとは言ってません!」

「「えぇ!!」」

ピシャリと言うジードさんに二人は狼狽えた。
「じゃ、じゃあ、この魔族との戦争はどうなるのですか!?
勇者を召喚すると言われたから、召喚後すぐに戦地に出立出来るように用意してしまったではないですか!!」
「そんなことをしたら、戦闘経験の無い彼女達は死んでしまいます。」
「だが、今から育てるとしていつ戦場に出すことができるのだ?!」
「能力の差もありますが、早くて1ヶ月ですかね。」

国の幹部三人が言い争う。
てか、本当に私たちのこと戦場に出すつもりか。

マジか···。

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