大魔王の娘に転生したのはいいが、何故か幼なじみたちが勇者として現れた

弥刀咲 夕子

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side玲奈 また

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「いらっしゃい、三人とも来てくれてありがとう。
あの子も喜ぶわ。」
私たちを迎えてくれたのはさくのお母さん。
少し、やつれてしまったようね。
おばさまは背が小さくて、子供がいるように見えないくらいかわいい。
本当はおばさまなんて言葉は合わないけれど。
そういえば、さくは背が小さいのはお母さんからの遺伝だーってよく愚痴っていたわね。
「すみません、突然押し掛けてしまって。」
「いいのよ、さあ、上がって。」
「「お邪魔します。」」
私たちは奥の和室に通された。
そこには、小さなちゃぶ台と隅の方に仏壇がおいてある。
仏壇にはもちろん、さくの遺影が置かれている。
あれは、4人で行った夏祭りの時の写真だ。
「よかったわね、久留亜。みんな来てくれたわよ。
もう、こんなに良い友達を悲しませるなんて、あの世でしっかり反省しなさい。」
おばさまが手を合わせながら言った。
それから、ゆっくりしていってね、と言い残して退出した。
「おばさま、無理してるようだったわね。」
「うん。」
「まったく、呑気な顔しちゃってさ。」
たまが写真を見て力なく言った。
それからしばらく、仏壇に向かって近況報告をした。
「さく、それじゃあ私たちはそろそろ行くね。
また、来るから。」
最後にお鈴をチーンと挨拶がわりに鳴らして私たちは部屋を出た。
「おばさん、お邪魔しました。」
「えぇ、また来てね。」
「おばさま、無理なさらないでくださいね。」
「私たちじゃ、ダメかもしれないけれど話とか聞きますから。」
口々に言うと、おばさまは驚いた顔をしたけれど、すぐに笑顔になった。
「あらあら、あんなに小さかったあなたたちがこんなに立派になるなんて。
ありがとう。
また来てくれるの楽しみにしてるわ。」
そう言って私たちを送り出した。
外に出ると空は赤く変わっていた。
「明日は晴れるわね。」
「うん。きれいな夕焼け。」
私が空を見て言うと、ちーも見上げた。
横を見ればたまも空を見上げていた。
赤から紫、だんだん暗くなっていく空のグラデーションはとてもきれい。
「「······」」
「ねぇ、久しぶりにカラオケにでも行かない?」
無言に耐えられずに私が言った。
「え、今から?」
「良いじゃん、行こうよ!」
私たちは、カラオケに向かい歩き出した。
──はずだった。
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