大魔王の娘に転生したのはいいが、何故か幼なじみたちが勇者として現れた

背中

二度目の人生は前世より短かった。
せめて10年は生きたかったな。
お母様もノアも侍女さんさえ守れないなんて。
早く、魔法のことを思い出していればよかった。
今日は新月だからもちろん、メドゥーサの力も使えない。
私にはどうすることもできない。
なにがチートよ。
あっても使えなくちゃ意味がないじゃん。
バカ。
バカクルア。

振り上げられた斧を見て、目を閉じた。

父様に会いたかったな。
「─···ッ、···ゥアッー!!」
何か聞こえる。
だんだん近づいてくる。
「クシャーナー!!クルアーー!!!」
これは、
「とーさまの声だ！」
「なにッ!?」
「とーさまっ、私はここッ─」
私が大声をたてるとおじさんがすごい形相で斧を下ろしてきた。
「──ッ!!!!」
両腕を頭の上に出して再び目をつぶる。

─もう、ダメッ─

「させるかぁーーっ!!!!」
──バキィンッ
「グハァッ!!!」
目を開けばそこには床に倒れているおじさんと私の間にたたずむ、
「クルア、待たせたね。すまなかった。」
大きな父様の背中。
いつもより大きく見えるそれは不思議なほどに安心感を与えてくれた。
「とぉーさまっ。」
とてつもなく、大声で泣きたくなった。
父様に抱きついて泣きじゃくりたかった。

そう、そのときの父様はすごくかっこよく見えたんだ。