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変わらない気がする

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私たちは、とりあえずお母様の部屋に行ってみることにした。
「···にしても、本当に誰もいない···。」
ノアが不審そうに辺りを見回すが誰も見当たら無いようだった。
私も見回したが同じだった。
どこからかは焦げた臭いもする。
─何が起こったんだろう。どうしてこうなったんだろう。
考えても分からないけれど、ついつい考えてしまう。
「クルア様、次は右?左?真っ直ぐ?」
「あっ、次は左だよ。」
いつの間にかノアが先に進んでいた。
ノアはどうしてこんな状況なのに私と一緒にいてくれるんだろう。
今だったら逃げ出せるはずなのに。
「ねぇ、ノア。」
「何?」
「どうして、一緒にいてくれるの?」
「それは、私がクルア様に命を拾われたからだよ。
あのまま、私があそこにいたら処分されてたの。
でも、クルア様が助けてくれた。
私のことを考えてくれた。
それがとっても嬉しかったから。」
ノアが恥ずかしそうに言った。
─···かわいいな。
こっちまで恥ずかしくなるじゃんか。
「···っ、クルア様、黙ってないでなんか言ってよ。」
「あ、ごめん。ありがとうノア。」
私は照れ隠しに笑って見せた。
すると、ノアが驚いたような顔をしたあとうつむいてしまった。
「···その笑顔は反則だよ。」
···なんか言った?
ノアが何か呟いた気がしたけれど聞こえなかった。
「なにか言った?」
「ううん。それより早く行こう。」
そう言うと先に行ってしまった。
でも──
「ノア、おかーさまの部屋を通りすぎてる。」
無言でものすごいスピードで戻ってきた。
「クルア様、早く言って。」
「···ごめん。」
─なんか、緊急事態なのに結局いつもと変わらない気がする···。
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