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忘れてたけど

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「おかーさま、私、魔法習いたい!」
「魔法?」
突然、自分の部屋へやってきて魔法を習いたいと言い出した娘にお母様がきょとんとした。
それはそうだ。でも、
─引くわけにはいかない!!
「突然どうしたの?魔法だなんて。」
私は持っていた本を見せた。
それは、城の図書館にあった魔法の本。
「ああ、これを読んで魔法を覚えたくなったのね。」
お母様が納得し、微笑んだ。
「うん。私も魔法使えるようになりたい。」
─本当は、異世界に来たことが衝撃すぎて魔法のことなんて忘れてただけなんだけど。
でも、異世界で魔法を使うのはやっぱ夢だよね。
「あのねクルア、水を差すようなこといって悪いんだけど、魔法なら習わなくてもコツさえつかめれば誰でもできるわよ?」
「えっ!できるの?
だってこれには魔法は詠唱がなくちゃ使えないって···。」
「それは、人間だからよ。
魔族は詠唱なんて要らないの。」
─なんですとっ!
私は意外に簡単に使えることに衝撃を受ける。
そうか、私は人間じゃないんだった!
「じゃ、コツを教えて!!」
「ごめんね。お母様は魔法使えないの。」
「えっ、どうして?」
「おかーさまは、メドゥーサ族だからよ。」
─メドゥーサ族だから?
私はますます分からなくなった。
お母様は残念そうに笑う。
「メドゥーサ族はね、目を合わせた生き物を石にすることができる能力を持っているの。
遠いご先祖様は魔法を使えたみたいなんだけど、神様が自分の存在を脅かす可能性があるからって魔法を使えなくして、ついでに能力を使うと命が削れるようにして簡単には使えないようにしたの。
相手を硬直させるくらいだったらなんともないんだけれどね。」
「えっ、じゃあ私は魔法使えないの?」
「それはどうかしら?
クルアには父様の血が流れているから···。
そうだ、魔力量を測る石があるから測って見ましょうか。」
「うん!」
私はお母様に手を引かれて部屋を出た。
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