即席異世界転移して薬草師になった

黒密

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第3章 終局に向かって

最終話 the end of story

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「ようやく着いたか......」

 俺達は、あの後五分くらい歩くと塔の入口が見えてきた。
 そして、俺は入口を見て目を疑った。

「何だこりゃ?」

 何やら光の幕が張ってあり、虹色に光っていた。
 もしもこの光の幕を通ったら、一体どこにつながっているんだろう?

 ただ、リアンも言っていた通り中に入ったらタダでは済まないらしいしな。
 すると何処からか声がした。

「......こい」
「ん? リアン、なにか言った?」

 そう聞くと、リアンは首を横に振った。
 しかし、さっきの声はリアンにも聞こえていたらしい。

 俺達は、辺りを見渡したが特に魔物の姿はなかった。
 しかし扉の方に振り向いた瞬間、光の幕から巨大な手が出てきて俺達を掴んだ。

「うぐっ!?」

 俺達はその後、手に捕まれて俺達は、そのまま扉の中に引きずり込まれた。

「くっ、ここは?」

 俺は、目が覚めると辺りは見慣れない景色が広がっていた。

「ようやくお目覚めかい?」
「まさかその声は......」

 俺はその声を聞いた後、俺は奴の名を叫んだ。

「ユーリ!」

 俺はそう叫びながら顔を上げると、そこには今まで見慣れていた奴の姿は無かった。

 そこには、首が二つで背中には羽が生えていて禍々しい杖を持った化け物が立っていた。

 それを見た瞬間、俺は一驚した。

「驚いたかい? 僕自身もここまで進化するとは思わなかったよ、彼女の魔力がここまで強力だったとはね。」
「はっ、そうえばリアンがいない!? お前リアンは何処にいる?」

 俺は奴を睨み付けながら、ユーリに聞いた。

「もういないよ、彼女は僕の魔力源として吸収したよ」

 俺はその声を聞いて、すぐさま腰に着けている袋から爆薬をいくつか取り出して奴に投げた。

 しかし、俺が投げた爆薬は奴にはあまり効いてはいなかった。

「ふん、これしきの物では私に傷は付けられんよ」

 奴は余裕そうな笑みを浮かべていた。

 クソ、俺は奴からいったん離れた。

「逃げるのかい? でも逃がす気はないよ」

 次の瞬間、俺はユーリに回り込まれて、腹に強烈な蹴りを入れられた。

「ぐはぁ......」

 俺は蹴りを食らい、とても立っていられず腹部を抑えていた。

「どうした? まだまだこれからじゃないか、回復薬を飲めばすぐに治るじゃないか」

 奴は笑いながらそう言ってきた。
 確かに回復薬を飲めば傷は治るし、痛みも取れる。

 だが、おそらく奴は俺が薬を飲んでいる所を狙って襲いに来るだろう。
 何とかして奴から離れなければ......

「さあ、早く飲みなよ? でないと僕は君を殺しに行くよ?」

 そう言って奴は俺にどんどん近づいてきた。
 くそ、何か策を考えろ......
 俺は、考えている内に自然にスマホに手がいっていた。

 そうか、これを使えば少しは時間を稼げる。
 だが奴の事だから何か手は打ってくるはず。
 一つここはかけてみるか。

 俺は痛みをこらえて何とか立ち上がった。

「おや、まだ立てる力が残っていたのかい? まあスマホに逃げ込んだところで僕の前には無意味だけどね」

 しまった!?
 奴は思考を読み取れるんだった。
 追いつめられるあまりすっかり忘れていた。

 これでは作戦もユーリに筒抜け、一体どうしたら......
 俺は何のためにここまで来たんだ。
 今ここであきらめたら、ここまでの苦労が水の泡だ。
 それにまだ完全に負けたわけではない。

「さぁて、これでお別れだ!」

 奴は一気に急接近して、一気にやつは俺の喉元に噛みついて来ようとした。

 しかし、奴は俺に近づいたものの、口を開けたまま噛みついては来なかった。

「あがっ、いったいこれは!?」

 どうやら奴は理由はわからないが、動けないらしい。

 すると、奴の口の中から光る玉が出てきた。
 そしてその玉は、しばらくすると人の形になって、やがてその玉は奴に吸収されたはずのリアンになった。

「ふう、何とか戻ってこれたわ」
「リアン!?」

 俺は見た瞬間、彼女の名を叫んだ。

「あんまり大きな声を出さないで、奴に魔力を急に持っていかれて気持ちが悪いの」
「え、それはいったい......]
「奴に取り込まれて、魔力を半分以上持ってかれたの。 魔法使いは一気に魔力を大量に消費すると今の私のように気持ちが悪くなるの」
「なるほど、でもどうやって奴の体内から抜け出せたんだ?」
「奴にとりこまれたときに少し細工をしたのよ、まあ細工って言っても大したものじゃないけどね」
「まさか、貴様!」
「ええ、そのまさかよ。 さっきの大量に魔力を消費したら気持ち悪くなるって話、実は大量に魔力を回復しても気持ち悪くなるのよ」

 ということは、もしやリアンの言う細工って......

「私は奴の体内に残りの半分の魔力をすべて奴に流したの」

 なるほど、ともかくリアンが生きててよかった。

「ぐはぁ、なんだこれは!?」

 ユーリの方を見ると、奴の体がみるみる大きくなっていた。
 首も二つから三つに増えて、腹部が開き、巨大な口が現れた。

「貴様ら......まとめて食い殺してやる」


「こいつ、首が三つに腹部に顔だと?」

 正直、見ていて凄くグロテスクだと思った。
 なんか体も所々溶けているし、はっきり言って気持ち悪い。
 とにかく、リアンの魔力で動きが止まっている内にこの爆薬でダメージを与えておくか。
 俺は手元の爆薬をユーリめがけて思いっきり投げた。
 すると爆薬は、いくつかは外れたがほとんどは命中した。

「ぐあぁ、おのれ下等生物共が......」

 奴は魔力の大量摂取と爆薬でだいぶ弱っていた。
 俺はコイツにとどめを刺そうとしたその時、リアンがユーリの前に出た。

「リアン! まだ奴に近づくな!」

 そう言った後、リアンはユーリに口を開いた。

「ねえ、一つだけ聞かせて。 あの時一人だった私を助けたのはあなたでしょ?」

 その問いに、ユーリはピクリと反応をしたがすぐに苦笑いと共に返答した。

「ふふっ、何を聞いてくるかと思いきや、俺は君を助けた覚えはないね!」
「そう......」

 リアンはそう言うと、ユーリから離れた。
 俺はユーリにとどめを刺すため、奴に向かって今持っている爆薬をすべて投げた。

「ユーリ、俺からの手向けだ......」

 そう言い終えると、奴の居たところには何一つ残っていなかった。

「木っ端みじんになったか?」

 俺は辺りを確認したが、やはりユーリの肉片は何処にもなかった。

「ようやく終わったぞ......鏡牙」

 その後、俺達は気が付いたら塔の前に倒れていた。
 気が付いて、俺は塔の入口を見ると瓦礫でふさがれていた。

 ははっ、ここまで来るのにかなり時間をかけちまったな。
 すると、倒れていたリアンが目を覚まし起き上がった。

「リアン、大丈夫か?」

 すると、リアンは首を縦に振った。
 しかし、やはり少し気持ちが悪い様だ。

 早くこの場を離れて、港に向かうか。
 今何時だろうか?
 俺は、懐中時計を見ると針は十八時を指していた。

「今から向かうと、向こうに着くのは二十一時か......」

 俺達はその場を離れて、港に向かった。

 それにしても、そろそろ今後の事も決めなければ。
 目的は果たせたし、ずっと考えていたその後についてそろそろ決めておかないとな。




 さてと、まず何から話そうか......
 俺達はあの後、何とか港にたどり着き一晩宿に泊まることにしたんだ。

 あの時はかなり疲れていたしとても野宿しようとは思わなかった。
 そして、一晩明けると俺達はレイズニア行きの船に乗ってレイズニアに戻ったんだ。

 そしたら俺達は、船の乗組員から意外な事を聞いてね。
 ユーリを倒した影響か、あの日以降スライム達が姿を消したそうだ。

 それを聞いた時はとてもじゃないがすぐには信じ切れなかった。
 だけど、あの日から何日か経つと、他の国からもスライム達が姿を消したとしばらく話題になっていたが、それも一か月もすると、そんな話は誰もしなくなっていた。

 今は書物に、見た目と生態が少し書かれている程度で、町の人達の記憶からも少しずつ忘れ去られていた。

 レイズニア襲撃というあの悪夢のような出来事も、いずれは忘れ去られてしまうのだろうか......
 おっと、話しがそれてしまったな。

 その後、俺達はネフドナの港に着いて、急いでレイズニアへ向かったんだ。
 その日の夜は、エレア達と宴会を開いてちょっとしたお祭り騒ぎをした。

 今でもその時の事はよく覚えている。
 そして、その後二日ぐらいした日に俺はリアンに好きだと伝えた。

 あの時は、正直ユーリの時と同じくらい緊張したな。
 そしたら、リアンも顔を赤くして俺と同じことを言ってきたんだ。

 そして一か月くらいして、俺達は結婚した。
 最初は早すぎるんじゃないかと思ったが

「いつどうなるかわからないし、いいんじゃない?」

 っと言われて俺達は結婚して、その後俺は結局色々悩んだが、レイズニアに店を開くことにした。
 魔法はリアンが担当で、薬は俺が作ると言った形で、魔法薬店を開いた。

 といっても最初の内は、町の復興に駆り出されてとても店を営業できる状態ではなかった。
 だが、一年ぐらいしたらだいぶ町も元に戻っていき、駆り出されることも無くなり、ようやく店を営業できるようになった。

 結局、あの日から五年位が経過して今に至るってわけだ。
 今から思えば色々あったが、俺はこの世界に来てよかったと思っている。

 まあ、入り方はなんていうかシュールだったけどね。

「あのー、回復薬が欲しいんですが......」

 どうやらお客が来たようだ。
 回復薬か、確かその棚に置いていたはずだが......
 さて、また忙しくなりそうだな。

 そう思いながら、俺はお客の相手をしに向かった……
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感想 8

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みんなの感想(8件)

黒剣士
2018.03.22 黒剣士

あれ、?
終わっちゃったんですか、?

黒密
2018.03.23 黒密

この話自体、昔書いていた物なのでそのストックが無くなったって所です。

話も長くしては、個人的にくどくなるかと判断して二十五話で完結させました。

最初は話を追加で書いてもいいかと思ったのですが、下手に追加して設定と矛盾してしまっては後々面倒なので

解除
ミカヅキ
2018.03.02 ミカヅキ

3泊予約しようと考え実際には2泊を頼みお釣りは銀貨4枚...修正がまだ足りませんね....

解除
chaos
2018.02.27 chaos

13話の後半にある
ユーリ 「新しくチート能力をアップグレードしてあげる…」を
「新しくチート能力をあげる…」にしてはいかがでしょうか
アップグレードは既存のものの性能を向上させるという意味なので…

解除

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