即席異世界転移して薬草師になった

黒密

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第2章 変わりゆく者達

第十八話 理想

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「今更、私の前に現れてどういうつもりだ?」

 ユーリは、鏡牙に睨みながらそう聞いてきた。
 すると鏡牙は、ユーリの問いに答えた。

「簡単な話だ、お前に仕返しをしに来ただけだ」

 すると、ユーリは声を上げた。

「なぜ今更現れたのかと聞いている!」

 うわぁ、いつもの表情から一変しているな。
 いつもは大体は、微笑みを浮かべていたのに今のユーリの表情は、かなり険しい表情だ。

「さっき言った通りだ、お前に言われたことの通りにしたらこいつに襲われたんだよ、しかもお前に命令されてこいつは俺を襲ったそうじゃないか、今度は何を企んでやがる......」
「くっ、ここだと場所が悪いな......シン! お前もいずれこいつと共に消してやるよ、言われた通りにしていれば何も不自由なく過ごせたのにな! 」

 そう言い、ユーリは視界から消えた。
 奴は黒だったか、しかし鏡牙は何故ここがわかったのだろう?

「おい、鏡牙は何故ここが分かったんだ?」
「お前に渡した玉に少し細工をしたんだよ、チップがどこにあるかを探せる道具があってそれを玉に仕込んでおいたんだよ」

 マジかよ、それは俺がどこにいるのかが、筒抜けになっていたってことかよ。
 とにかく今はこの事をリアンにどう伝えるかだな。

「おい、何考えているのかは知らないが一度ここから出るぞ」
「ん? ああっ、すまない」

 俺達は風呂から出て、部屋に向かった。

「あらっシン、けっこう長かったわね......」

 リアンは鏡牙を見ると、近くに置いてあった杖を取って、俺達から離れた。

「シン! そいつはトラリィアの時の奴でしょ!? 何で一緒にいるのよ」

 俺はそのことを話そうとしたら、鏡牙が先に口を開いた。

「そのことについては、俺からは話そう、信じるかはお前の勝手だ」

 鏡牙は、さっきまでの出来事や俺に前に話したことをリアンに説明した。

「......っというわけだ、っとその表情からすると信じてはいないようだな」
「あたりまえじゃない! 敵の言うことをそう簡単に信じることなんてできないわよ」

 それも確かにあるだろう。
 だけど、一番の原因は憧れに近い存在だったユーリが、まさか裏で王の命を狙っていたなんてそう簡単には信じれないだろう。

 恐らくだが、奴は他にも何か隠していそうだったし鏡牙が嘘を言っている様子はないし。
 これは一番面倒くさいな......

「俺達は奴と決着を付けなければならない、お前はどうする?」
「どうするって?」
「俺達と一緒にアイツを倒して真実を知るかどうかだ」

 リアンはその言葉を聞いて即答した。

「そんなのすぐには決められないわ、しばらく一人にさせて......」
「そうか......」

 俺達は、別の部屋を借りてそこで眠りについた。

「ん? ここはまさか......」

 眼の前の光景を見て冷や汗をかいた。
 確かここは、ユーリの家だったはずだ。
 何故ここに俺はいるんだ?

 あれ、奥の部屋から何か声がするな。
 俺は近づくと、ドアから俺と同じくらいの男が現れた。
 何処かで見た顔のような......

「鏡牙、本当に君はお使いすら満足にできない程に使えない奴だね」

 なっ、今の声はユーリか?
 それに今、鏡牙って......

「うるさい、今まで確かに色々お前の言う人のために役に立つ薬の素材を集めてきたが、その薬の材料で作り出されるのは人のためではなくて、全く人のためとは関係のない禁薬のレシピと知ったからだよ!」

 禁薬? 
 一体どんな効果を持った薬なのだろうか?

「それは君も一度見たことのある薬だよ」
「うわぁ!?」

 後ろから本物のユーリが現れた。

「禁薬の名前は進化の秘薬、それを飲めば飲んだものは劇的に圧倒的な進化を遂げる、その代わりに一度飲んだら元の姿には戻れない」
「まさか、あの時トラリィアで鏡牙が飲んだ薬は......」

 すると、ユーリはニヤリと笑い答えた。

「その通り、あいつが飲んだものは進化の秘薬だよ、もっともあれは失敗作だけどね」
「なんでお前はそんなことをするんだ!」
「なんでって? 決まっているだろう、人という存在を滅ぼすためだよ」

 なに!?
 こいつはそんなことを考えていたのか。

「君も見てきただろう? この世界のスライムがどうして人の姿をしているかわかるかい?」

 まさか......

「そのまさかさ、あれは進化の秘薬で進化した人間の出来損ないだよ」
「お前!」

 俺はユーリを殴ろうとしたら交わされて、逆に溝を軽く殴られた。

「ぐはぁ」
「実に愚かだね、早くこの薬を完成させてこんな事を終わりにしなくてはな」

 はぁ、一体どうすれば......

「どうしようもないよ、薬のスペアはまだあるし施設もあるから誰にももう止められないよ」

 何だと......

「すべてはこの世の汚れを取り除くためさ、本来なら君にも協力してもらう予定だったんだけどね」

「ふざけているのか? 人を化け物に変えて何が汚れだ、お前のやっている事の方がよっぽど汚いわ」

 すると、ユーリはそれを聞いて怒り交じりの声で反論した。

「下等な貴様らと一緒にしないでくれないかな? これは汚れを取り除くための犠牲に過ぎないんだよ」
「何が犠牲だ! 俺はお前の作り出す世界なんて認めない!」

 ユーリは冷静になり冷めた目で呟いた。

「そうかい、残念だよ、君も今までの奴らみたいに僕にたてつく気なんだね」
「ああ、何度でも言うさ、お前の考えは間違っている」

 すると、ユーリは小さい杖を取り出した。

「なら君には消えてもらわないとね、これならどうだい」

 ユーリは杖を振りかざすと、地面からスライムが大量に現れた。

「うぁ、どうしよう......]

 話からしたらこいつらは元人間、そう聞いた後だと相手にしずらいな。
 俺はその場から逃げ出した。
 とにかく今はこの夢から覚めなくては......

 俺は一応、走りながら頬を抓ってみた。

「いてっ!」

 確かに痛感はあった。
 なのに今も俺は夢の中だ。
 一体どうなっているんだ......

「無駄だよ、ここは僕に管理された空間、今の君は夢の中ではなく現実の世界にいるということだよ」


 振り向くと、後ろから羽の生えたユーリが追いかけてきた。
 は? あいつ羽あったのかよ......じゃなくてユーリの言ったこと。
 確かに俺は、宿のベッドで眠りについたはずだ......

 なのに、なぜ現実世界に?

「僕の力を使えば簡単な話さ、それよりどこに行くのかな?」

 くそう、どこを見ても一面草原。
 これでは隠れようが無い。
 すると、俺は走っていると、見えない壁にぶつかった。

「痛っ、なんだよ」

 俺は前に手を出すと、すると手から冷たい壁の感触があった。
 もしかしたら......
 俺はその壁らしき場所に爆薬を投げた。

 すると大きい音と共に、大きい穴が現れた。

「この草原はグラフィックだったのか」

 俺は後ろから、ユーリやスライムが追って来ているの思い出し、中に入った。

「うわぁ、何だこれは......」

 走りながら辺りを見ると、周りはカプセルだらけだった。
 しかもそのカプセルの中には人が入っていた。
 中には所々が化け物になっているものもあり、とても気味が悪かった。

「あの野郎、一体どれだけ犠牲者を出せば気が済むんだ......」

 俺はそう思いながら走っていると、この施設の地図らしき物を見つけた。

「ここは地下施設だったのか」

 地図を見ると、ここは地下五階のようだ。
 何とかしてここから出ないとな。
 俺は近くを調べると、エレベーターを見つけた。

「なんか今更だが、この施設は明らかにこの世界の物ではないな」

 場所的にも、何処かで出てきそうな場所だしなぁ。
 俺は、エレベーターに乗って地上まで行こうとした。
 しかし、エレベーターは四階で止まった。

 恐らくユーリの奴が電源を落としたのだろう。
 しかし完全にこれでは閉じ込められたな。

「ここから出るにはあれを使うか」

 俺は爆薬を取り出して使おうとした。
 しかし、ここで使うと爆発でこっちも怪我をするかもしれない。

「あっ、そうだあれを使おう」

 俺はスマホを取り出した。
 これを使い、空間に逃げればこっちは被害を受けずに済むはず。

 俺はスマホを使って別の空間に退避した。

「そろそろか」

 俺は元の空間に戻った。
 すると、ドアに穴が開いたが同時に床にも少し穴が開いていた。
 変に踏み間違えるとまずいな。

 俺はジャンプして床が崩れる前に四階通路に出た。

「ふぅ、流石に冷や汗かいたわ」

 俺はそう思いながらその場を離れた。
 にしても少し薬を使いすぎたな......
 後で作っておくかな。

 俺は先に進むと休息室らしき部屋を見つけた。

「はぁ、やっと一息つける」

 部屋を見ていると、何やらファイルが置いてあった。
 俺は中身が気になり、ファイルを開いた。

「これは......」

 それは秘薬の実験データのファイルだった。
 しかも写真も着いていたのでそっちも見ると、尚更気持ち悪くなった。
 その内容は、口から顔が出てきたり、足が腹部から生えていたりしている写真があった。

 本当に秘薬は恐ろしい力を持っているようだ。

「しかし、本当に気持ちが悪くなってきたわ......」

 そう思いながら、俺はそこでスマホを使い、別の空間で薬の調合をすることにした。
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