即席異世界転移して薬草師になった

黒密

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第2章 変わりゆく者達

第十四話 過去

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 眠たいな......
 ってあれ? 
 今、俺は夢の中にいるのか。

 だとしたらユーリが近くにいるはず......
 なのに今いる空間はいつもとは少し違う、何か邪気を感じる。

 しばらくすると、後ろから黒いフードをかぶった男が現れた。

「ぐっ、お前は誰だ......」

 すると男は恨みを込めてつぶやいた。

「お前のせいで俺の計画が台無しになったんだ、いずれ報いを受けてもらうぞ」

 俺はその言葉を聞き終えると、一気に目が覚めた。

「何だったんだよ......一体」

 少なくともあの夢を見せてきたのが、あの時の奴だということは間違いないだろう。
 そろそろ別の大陸にでも行ってみるかな?

 そう思いながら朝食を摂りに行き、食べ終えた後リアンに聞いてみた。

「そろそろ別の大陸に行こうかと思っているんだけど次は何処に行く?」

 そう聞くと、リアンは考え込んだ。
 そして数分すると、リアンは口を開いた。

「次は東のナテールにあるテイロニアとかどうかな?」

 テイロニアか、あそこは何が有名なのかな?
 俺は少し記憶の中でテイロニアの有名所を探した。

 するとどうやら、テイロニアには大きな市場があるらしい。
 もしかしたら掘り出し物があるかもしれないな。

 俺はリアンの案に乗り、テイロニアに向かうことにした。

 となるとまあ、準備しなければならないので待ち合わせ場所を十一時に門の前に決めて、一旦俺はリアンと別れて必要なものを買いに行った。

「とすると、何かまた港まで歩くのか......」

 トラリィアから港まで二時間くらいは距離があるから何か軽食でも買っておくかな?

 そう思い、俺は近くのパン屋でおいしそうなパンを四つ仕入れた。
 後は特に用は無いし、魔道具屋でも見に行ってみるかな?

 時計は十時を指していたので、まだ時間に少し余裕があったので、俺は魔道具屋に行くことにした。

「何かないかな~?」

 俺は色々よくわからない小物の魔道具を見ていた。
 すると、変わった袋を見つけて手に取った。

「何だこれ?」

 そう思っていると、近くの店員が説明しに来た。

「それは説明する前に中を見た方が早いと思います」

 ん? 中を見た方が早いだと。
 俺は店員の言った通りに袋の中を見た、すると中は部屋一つ分ぐらいのスペースがあった。

「それは素材などを入れたりするときは便利ですよ」

 うーん、どうしようか......
 正直、鞄もそろそろいっぱいになってきているし、一つ買っておくかな。

 俺はその袋を金貨一枚で購入した。

「さて、時間的にもう行くかな」

 俺は時計を見て、門の前に向かった。
 すると、リアンが先に門の前に立っていた。

「ごめん、魔道具屋に行ってたんだ」
「何かめぼしいものでもあったの?」

 そう聞かれると、俺はさっき買った袋を見せた。

「これがさっき魔道具屋で買ってものだよ」
「なにこれ? ただの袋じゃない」
「中を見てくれ」
「中を?」

 リアンは首を傾げ、袋の中をのぞいた。

「ああ、空間を拡張した袋ね、でもシンは似たような感じの魔道具を持ってなかったっけ?」
「確かに持っているけどあれは荷物を入れるための物じゃないからね、鞄もだいぶいっぱいになっていたからちょうどいいかなって思ってさ」

 そういうとリアンは、ふーんっと興味なさげに言った。
 まあ、とにかくそろそろ行こうかな。

 俺達はトラリィアを後にして、港に向かった。

「しかし、なんでリアンは旅をしているんだ?」

 俺はふと気になって、リアンに聞いてみた。
 すると、リアンは小さい声で喋りだした。

「昔私は、小さい村に住んでいてそこで家族と楽しく暮らしていたの、だけどある日に誰かが村に火をつけて火事を起こしたの」

 やっぱりあの夢は、リアンの夢だったのか。
 でも、あの夢の中にあった村はどこにあったんだろう?

「そして私はその火災で一人になって辺りをずっとさまよったわ、頼れる宛てなんて無かったからね」

 何か今聞くことではなかったような気がするなコレは。

「そうしてさまよっている内にある家を見つけたの、そしてしばらくしたらその家からティーカップを持った人が現れたの」

 うん? ティーカップ? 
 俺はその言葉に対して反応してしまった。
 何故なら俺はその男を知っているからだ。

 おそらくその時にリアンが会った男は、ユーリの事だろう。
 少なくともこっちの世界で、ティーカップ片手に話しかけてくる奴はおそらくアイツぐらいだろう。

「それで、その男の人にある事を言われたの、何かなりたい職業はあるかなってね」

 もしかしてリアンが凄腕の魔法使いなのってもしかしてユーリから貰った能力?

「少なくともその時覚えていたのはそこまでで、目が覚めて辺りを見渡したら私はシベロニアのすぐ近くにいたわ」
「ちなみにその事は何歳の時に起きたんだ?」
「確か七歳の頃かしら? 今でもよく覚えているわ」

 でも何でそんな大事なことを話してくれたんだろう?
 自分で聞いてて何だけど。

「どうして私がこの事をあなたに話したかわかる?」

 まさか......俺がそのユーリと会っていることを知っているのか?
 すると、リアンは話し続けた。

「あなたからは、どこかあの人と似たような感じがするの、そしてあなたはあの人の事を知っているわね?」

 リアンは真剣な表情で聞いてきた。
 俺はその質問に答えていいのだろうか?
 でも一応聞いておくか。

「仮に知っていたとして、君はどうするつもりだい?」

 すると、リアンは杖をこちらに向けてきた。

「もう一度聞くわ、あの人の事を知っているわね?」

 流石にこれはまずいな、素直に答えたほうが良さそうだ。

「ああ、俺はあいつを知っているし何故か夢の中によくあらわれる」

 そう言い終えると、リアンは杖をおろして表情が和らいだ。

「知っているなら最初から知っているって言ってよ、無駄に杖に魔力込めちゃったじゃない」

 リアンはそう言うと、杖を地面に突き刺して込めた魔力を逃がしていた。
 ふと地面を見ると、土が紫色に変色して魔力を帯びていた。

 しかも俺の足元まで変色している。
 一体もし知らないと答えていたらどうなっていたのだろうか?

「それで話の続きなのだけど、どうにかしてあの人に会えないかしら?」

 うーん、あいつ以前こっちに来たりはしたがそう簡単に呼べるのだろうか......

「とりあえず、次あったら聞いてみるよ」

 すると、リアンは分かったわっと言い納得したようだ。
 でも一体会ってどうする気なのだろうか?
 そう思っていると、港が見えてきた。

「ふぅ、やっと港が見えてきたよ」
「そうね、あっちに着いたらとりあえず昼食にしない?」

 時計の針を見ると、針は十三時を指していた。
 確かにあれから二時間近く歩いていたんだな。
 俺達は港に着いて、近くの飲食店で昼食を食べることにした。

「結構歩いたし、かなり腹減ったから何でも食べれそうだな」

 メニューを見ると、俺の胃袋を満たしてくれそうな料理が文字でたくさん書かれていた。
 とりあえず、せっかく港にいるし魚料理でも食べるかな。

 新鮮な刺身に、貝の酒蒸しに魚のワイン煮込み。
 どれもうまそうだ。
 リアンは何を食べるのだろうか?

 俺はリアンに聞くと、どうやらサンドイッチとサラダを食べるようだ。
 リアンに何を食べるか聞くと俺は近くの店員を呼んで、リアンの分のサンドイッチとサラダ、そして俺の分の魚のムニエルを頼んだ。

 そして、しばらくすると店員が料理を運んできた。

「おぉ、こいつはうまそうだ!」

 俺は一口目を口にした。

「あれ?」

 口にすると、確かに新鮮でおいしいが何か足りない気がした。
 エレアが作ってくれたムニエルは確かハーブを使っていたんだっけ?

 とすると物足りないのはそれか。
 まあうまいからそんなに気にならないけどね。
 俺達はしばらくすると昼食を摂り終えて店を出た。

「さてと、今の時間は......」

 時計を見ると、針は十五時を指していた。
 少しのんびりしすぎたかな?
 まあ船が出るのは十七時のようだからまあ色々見て回る時間はあるな。

 俺は懐を見ると、金貨が残り五枚と銀貨が六枚、銅貨が二枚になっていた。
 ここ最近、金を使いすぎたかな。

 色々素材を買ったりしていたしな、後で万能薬を作って売りに行くかな。
 リアンに薬を調合して売りに行くことを伝えると、リアンは先に船着き場に行くようだ。

「とにかくまず万能薬を作らなくてはな」

 一時間くらいして、俺は万能薬を十個作った。
 何て言うか普通なら一つ作るのに二日かかる薬を一時間で十個も作れるなんてほんとにチートだなこれ。

 そう思いながら、俺は作った薬を薬屋に持って行った。
 俺は店のドアを開けると、この前より少し薬の品揃えが変わっていた。

 すると奥のカウンターにいた老婆が話しかけてきた。

「おや、お客さんかい?」
「ああ、薬を買い取ってほしいんですが......」
「一体どの薬を持ってきたんだい?」

 俺は持ってきた万能薬を十個をカウンターに出した。

「ほお、万能薬を十個か......わかった、一つ金貨一枚で買い取ろう」

 俺は万能薬十個を渡して金貨十枚を得た。
 取り合えず収入は得たし、リアンのいる船着き場に俺も向かうかな?

 そう思っていると、老婆がまた俺に話しかけてきた。

「おぬしは何処から来たんだ?」
「レイズニアからです」
「ほぉ、それで次は何処へ?」
「テイロニアへ向かおうと思っています」

 すると老婆は、少し表情を変えた

「テイロニアに行くなら気を付けたほうがいいぞ、ここ最近あの辺には盗賊が出没するらしいからのお」
「ご親切に有難うございます」

 俺は老婆の忠告を受けて店を後にして、リアンのいる船着き場へ向かった。
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