即席異世界転移して薬草師になった

黒密

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第2章 変わりゆく者達

第十二話 救出、そして正体

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 さぁて、どうしようかな?
 俺達はあの後目が覚めて、ホールで朝食を摂っていた。

 もちろん目の前には偽物のクラット王もいた。
 しかし、本当に目の前にいるのは本当に偽物なのだろうか?

 俺は早めに朝食を摂り、先に部屋に戻った。


「しかし見通しの薬か......材料が足りないな......」

 必要なのはクリスタルなのだ。
 他の素材の蒸留水と蜂蜜は何とかなるが、こればっかりはどうしようもないな。

 でも今の持ち金でも買えるかどうか。
 そう言っているとリアンが部屋に入ってきた。

「どうしたの?」
「いや、見通しの薬を作ろうとしてるんだけど材料のクリスタルが足りなくてさ......」

 そういうと、リアンはポケットからその問題の素材を取り出した。

「クリスタルなら私が持っているわ」

 え~、嘘でしょ。
 あんなに頑張って探していたのに......

「何でリアンが持っているんだ?」
「何で? って魔法で作ったからに決まってるでしょ」

 マジかよ、かなり高価な素材が魔法で作れるのかよ。
 ランク五の魔法使いってすごいな、でもこれで作れそうだな。

 その後、俺はスマホを使って部屋に入って、見通しの薬を作成した。

「やったぞ、作成したぞ! 後はどうやって偽物の化けの皮を剥がすかな?」

 俺はどこかでこの依頼を楽しんでいるのだろうか?
 すごくドキドキしてきて笑えてきた。

 いかん、目的を見失う所だった……
 とにかく俺は、他の人に聞かれないようにスマホで作った部屋の中でリアンにこの事を説明した。

「って訳なんだ、それで今回リアンには偽物の王と紅茶でも飲みながら王室から離してほしいんだ」

 リアンに説明するとあっさり了承した。
 彼女もこの話を聞いたら、偽物の王の化けの皮を剥がした時の顔を見たいとどこか楽しそうにしていた。

 何だか俺とリアンは、どこか似ているなと思った。

「さてと、リアンはいったか」

 あの後リアンは、作戦通りクラット王とホールでお茶会をしてもらった。

 俺は、とりあえず睡眠薬を染み込ませたハンカチと麻痺薬と見通しの薬、そして煙薬と威力を弱めた爆薬を鞄に詰めて王室に向かっているのだ。

 今のところは兵士には見つかっていないが見つかると厄介だからな、。念のために用意しといて損は無いだろう。

 そう思いながら移動していると、王室の近くまではうまくたどり着いた。
 しかし、部屋の前には兵がいてどうしようかと俺は考えてた。

「くそっ、ここまではうまくいったんだけどな......」

 そうしていると、近くに巡回している兵が近くを通った。
 仕方ないか、許してくれ……
 俺はそう思いながら後ろから近づいてハンカチを嗅がせた。

「な、何だお前!」
「あんたに危害は加えない、おとなしくしてくれ」

 少しすると兵は眠りについた。
 俺はスマホで空間を作って、その兵の来ていた服に着替えて部屋の前の兵士に声をかけた。

「ん? あんたひょっとして新入りか、どうした?」
「いや、見張りの交代しろって言われてさ」

 そういうと兵士は、どこかへ行った。
 これで邪魔者はいなくなった、
 俺はニヤリと笑い、中へ入った。

「お邪魔しまーす」

 にこにこ笑いながら俺は中に入って真っ先にドアを調べた。
 すると、下の二番目の本を抜くとレバーがあった。

 いや~、色々ユーリから聞いといてよかったな。
 これは聞いてなかったら手こずっていたかもしれないな。

 俺は、レバーを手前に引くと壁が開いて地下室への通路が現れた。

「よっしゃ、後は本物を連れて行って偽物に薬を飲ませる簡単なお仕事だな」

 俺はそう思いながら地下室に向かった。
 すると目の前に布の薄着をしたクラット王が目の前にいた。

「ん? 誰だい?」

 何か普通に微笑みながら聞いてきたんですけど......
 本当に感じがユーリと似ているな。

「初めまして、私は華崎秦と申します、じゃなかった説明は後です、今はここから出ましょう」
「でも鍵がかかっているんだ、そう簡単には壊れないよ」

 よく見ると確かに鍵がかかっていた。
 くそう、どうにかならないのか......
 いや、まだ手はあったな。
 俺は鞄から爆薬を取り出した。

「鍵を壊すので少し下がってください、あと外に出たら俺に着いて来てください」

 そういうと、クラット王は頷いて門から離れた。
 後は破壊するだけだな。

 俺は門のカギの所に爆薬を投げつけて爆破した、小規模とはいえ少し音はしたので誰か来る前にここからでなければならない。

 俺たちは急いで地下室から離れて王室を出た。
 すると様子を見に来た兵士にばったり会ってしまった。

「おい、貴様何をしている! ってクラット王は確か今お茶会のはずでは......」

 俺はすぐにハンカチを嗅がせて眠らせた。
 とにかく今はホールに向かわないとな、さっさとあの偽物の王の化けの皮を剥ぎ取ってやる。

 そう思いながら、俺達は偽物のいるホールへ向かった。
 さぁて、ショータイムの始まりだ。

「失礼します」
「ん? ああ、シン君かい?一体どうし......」

 偽クラット王は固まってた。
 なぜなら目の前には本物のクラット王がいたからだ。

「おい、なんでクラット王が二人いるんだ?」
「一体どうなっているんだ!?」

 兵たちは混乱しているようだ。
 まあ、同じ人間目の前にいたら誰でもそうなるか。

「おい、誰かあの偽物をつまみ出せ!」

 偽クラット王は焦りと怒りを込めて兵たちに命令した。
 そして兵たちに囲まれていた。
 すると、リアンが口を開いた。

「待って、今のクラット王は偽物です、シンが連れてきた人が本物のクラット王です」
「何を馬鹿なことを......私こそ本物のクラット王だ! それに何を根拠にそんなことを......」

 偽クラット王は苦し紛れにそう聞いてきた。

「根拠も何も目の前に二人のクラット王がいるということは、二人のうちどちらかが偽物ということですよ」
「なら証拠を見せてみろよ、私が偽物である証拠を!」

 俺はその言葉を待っていたかのように鞄から見通しの薬を取り出した。

「お、お前......まさかそれは......」

 偽クラット王は瓶の中身を見て驚いた。

「そうです、見通しの薬です、これを飲んでいただければあなたの姿が元に戻ります」
「誰がそんなものを飲むもんか、そういっておいて毒とか仕込んでいるのだろ?」

 そう聞かれると、本物のクラット王が口を開いた。

「なら、一緒にその薬を飲むのはどうだろう? それに容器ならここにある奴を使えば問題はないでしょう」

 そういうと、偽クラット王は表情を歪めながらその提案に了承した。

「では、まず僕から飲むよ」

 そういい、クラット王は見通しの薬を飲んだ。
 しかし、変化薬などは飲んでないため何処にも変化は無かった。

「さあ、次は君の番だ!」

 そういい、クラット王は偽物に見通しの薬の入った容器を渡した。

「うぐ......よかろう」

 覚悟を決めたのか、偽物は容器を受け取り中の薬を飲み干した。

「ふぅ、特に何もないではないか」

 あれ? おかしいな......確かにレシピの通りに作ったんだけどな。
 しかし、しばらくすると偽物に変化が現れた。

 偽物の姿が少しずつ変わっていき、二分ほどで別人になった。

「おい? 一体何で私の方を見ているんだ? そんなことよりこいつらを早くとらえよ!」

 本人は変化に気が付いていないようだ。
 すると、執事が偽物に手鏡を持ってきた。
 それを見た偽物は、鏡を見て青ざめていた。

 何故なら、そこには三十代ぐらいの別人が映っていたのだ。
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