即席異世界転移して薬草師になった

黒密

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第1章 運命

第二話 出会い

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 走って三十分ぐらいすると小さい門が見えてきた、国とはいってもそんなに大きい国ではないようだ。
 ここネフドナ大陸を含めこの世界には四大陸あり、北の方角にはレイアム大陸、南の方角にはラクレア大陸、東の方角にナテール大陸、そして西の方角にあるのがネフドナ大陸のようだ。

 俺はそんなことを考えている内に門の前に着いて、いつの間にか皮の防具に銅の剣を腰に携えた門番の男に止められた。

「まて、まず最初にお前の名前は?」
「華崎秦といいます、年齢は十八です」

 一応、年齢も答えておいた。

「別に歳までは聞いてない、次に職業は?」
「薬草師をやっています」
「薬草師? なら薬草師の証は持っているか?」

 薬草師の証? そんなもの知らないぞ、俺はリュックから薬草師の証を探していると、三と書かれた緑色のメダルを見つけた。
 俺は、これじゃないかとリュックから取り出し、男に見せた。

「あの、証ってこれですか?」

 メダルを見せると男は、少し後ろに下がり門を開けた。

「ああ......そうだが、お前ランク三の薬草師だったのか......十八でランク三とか正直信じられんな」

 かなり驚かれているな、そんなに珍しい事なのだろうか? でも取りあえず中に入れそうだな、早く食料や薬の素材も買いたいし。

「お前、ここは初めてか?」
「はい、そうですけど?」
「一応これがここの通行証だ、失くすと銀貨五枚で再発行することになるから気を付けてくれ、それとくれぐれも問題は起こさないでくれ」

 俺はそう言われて、中央に小さい白い石がはめ込まれた木製のコインを男から受け取った。
 なんか通行証って紙とかで渡されるかと思ったが、こっちの世界ではコインなんだな。
 俺は、こっちの世界の通行証がコインであることに少し驚いた。

 とにかく中に入る許可が下りたからいろいろ回ってみるかな、でも今は宿を探さないとな。
 そう思い、俺は辺りに泊まれる宿がないか探してみた。
 すると、探している内に大きな二階建ての宿を見つけた。

 部屋が空いているかわからないけど、とにかく中に入ってみるか。
 俺は、入口のアンティークなドアを開けて中に入った。
 中に入ると、いろんなところに植物の絵が飾られているようだ。

 飾られている絵を見ているとカウンターにいた緑色の髪をした自分より少し年下の女性が話しかけてきた。

「絵がどうかされましたか?」

 俺はそう聞かれて、我に返り話しかけられている事に気が付いた、そうえば部屋空いているか聞かなければ。

「え?あっ!すいません、つい絵に見とれていて、今部屋って空いてますか?」
「ええ、空いてますよ」

 俺は、慌てて部屋が空いているか聞いたら彼女は、嬉しそうに答えてくれた。

「じゃあ一部屋お願いします」
「お名前をお聞きしてもよろしいですか?」
「華崎秦です」
「カザキ様ですね、どのくらいお泊りになられますか?」

 どうしよう、一応手持ちに金貨はあるけど一泊いくらするんだろう? 

「一泊いくらしますか?」
「食事つきで銀貨二枚です」

 一応二泊にしておくか、ちなみにこっちでは十枚で銅貨なら銀貨一枚、銀貨なら金貨一枚になるようだ。

 とりあえず三泊予約して、後でオルレア草原で素材探しにでも行くか......

「二泊でお願いします」
「かしこまりました、ではこちらがお客様の部屋の鍵でございます」

 俺は金貨を一枚を使い二泊の予約を入れ、二号室と書かれた部屋の鍵とお釣りの銀貨四枚をもらった。

「そうえば、あちこち飾ってある植物の絵は誰が書いたんですか?」
「実は、それ私が書いたんですよ」

 俺が彼女に聞くと、彼女は照れながら答えた。
 正直すごくかわいいと思った。

 って今何時だろう? 俺は時間を確認しようと時計を探したらロビー暖炉の近くに大きい古時計が十六時を指していた。

 まだ少しなら素材探しはできるだろう、そう思い荷物だけ置きに部屋に行き、部屋を出たら彼女がスケッチブックを持ってきた。

「あれ、どちらへ向かわれるのですか?」
「薬の素材を探しにオルレア草原に行こうと、それよりそのスケッチブックは?」
「さっきの絵の他にもいっぱいあるので見てもらおうと思いまして、というよりカザキ様は薬の素材を探すという事は薬草師の職業なのでしょうか?」
「ええ、ランク三の普通の薬草師ですけど......」
「え、ランク三は中級者のはずですよ? ここの薬草師はランク三と四の薬草師が一人ずつしかおりませんが?」

 え? ランク三って普通かと思ったけどそんなに数少ないの? てっきり普通に多いと思っていたけど、そうえばさっきの門番もランク三の薬草師の証を見せたら、信じられないとか言って驚いていたっけ?
 ていうかここにはランク四の薬草師がいるのか、できればその人に会ってその人が作った薬を見てみたいな、今持っているのがランク一の粉薬しか持ってないし。

「あの、もしよろしければ私が書いたを絵を見てもらえないでしょうか?」
「え!?ああ、いいよ」

 つい、俺はいいよと答えてしまった。
 本来なら素材屋とか材料集めに行こうと思ったのだが、引き受けてしまった。

「本当ですか!? ありがとうございます!」

 でも、まあ、こんなに喜ばれるともう断りづらいし、明日からでいっか。

「そういえば自己紹介がまだでしたね、私はエレア・ノエルといいます、植物の絵を描くことが好きです」
「ノエルさんか、俺の事は秦でいいですよ、あと敬語じゃなくていいよ」
「じゃあ、私の事もエレアと呼んでください、それじゃあ自己紹介も終わったことだし早速見てください!」

 そういいエレアと俺は、エントランスでエレアの書いた絵を眺めたり、一緒に話していて、途中でエレアは仕事で席をはずして、気が付いたら古時計が十八時を指していた。

 すると四十代ぐらいの灰色の髪をした男性が店のカウンターから夕食の時間であることを告げに来てくれた。

「カザキ様、そろそろ夕食の時間でございます、それと娘がご迷惑をお掛けして申し訳ございません、私はこの宿を経営している、リスタ・ノエルと申します」

 ん? 娘ってことはこの人がエレアのお父さんなのか。

「いえ、気にしないでください、ご親切にありがとうございます。」

 リスタさんは、そう聞くと微笑んでからカウンターに戻って行った。
 そろそろ行かなきゃな、俺は漂う夕食の匂いにつられてレストランに向かった。

 俺は自分の名札が置かれた席に座り,皿に被さっているドームカバーを開けると辺りにふんわりと香りが広がった、中には魚の切り身に香り付けでハーブが添えられていた。

 俺は気が付くとナイフとフォークを手に持ち、今まさに一口目を口にした。

「うまい!」

 俺は自然と口に出していた。

 そう口にすると、何故か奥で水を配っていたエレアが頬を赤らめながらこっちを見てきた。
 そんなに声大きかったかな?
 
 他にもスープやデザートが運ばれてきて、俺の胃袋はどんどん満たされていった。

 俺は料理を食べ終えて席でゆっくりしているうちに、仕事がひと段落したのかエレアが隣に座ってきた。

「料理はいかがでしたか?」
「すごくおいしかったですよ、特に魚のハーブ蒸しは絶品でした」

 そういうと、エレアはまた頬を赤くしていた。

「実はあれ私が作ったんですよ、最初はお口に合うか心配でしたけど、シンの席からうまい、と少し大きいこえが聞こえてきて安心しました」

 もしかして途中で席を外したのは、俺のために手料理を作ってくれるためだったのか。
 前の世界ではそんなことなかったので、すごく嬉しかった。

 そして、俺とエレアはレストランを離れエントランスで、色々話していた。

 古時計が二十時を指したころ、リスタさんがタオルを持って入浴の時間を伝えに来てくれた。

「カザキ様、入浴の準備が調いましたのでタオルをお持ちいたしました、それとエレア、お客様をあまり困らせないでくれ」
「むうぅ......わかりました」

 エレアは、少し残念そうな顔をしてカウンターの奥に小走りで向かった。
 取りあえず風呂にでも入るかな、俺はリスタさんからタオルを受け取り風呂場へ向かった。

「うわぁ、これは凄い」

 風呂場を見て俺は驚いた、なぜなら露天風呂でいい香りのするハーブや肌にいい薬草が入っていたからだ。

「はあぁ、いい湯だったな」

 風呂から上がり、俺は牛乳を買いに行こうとカウンターへ向かった。

 するとカウンターには、リスタさんと同じくらいの年の緑色の髪をした女性が立っていた。
 もしかしてエレアのお母さんかな?

 俺は、そんなことを考えながらカウンターの女性に牛乳を頼んだ。

「牛乳を一本お願いします」
「はいよ、一本で銅貨二枚だよ」

 俺は懐から銅貨を二枚取り出し、女性に渡した。

「ぷはぁ~、やっぱり風呂上りにはこれだな」

 俺が牛乳を飲んで一息ついている時にカウンターの女性が話しかけてきた。

「もしかして、あなたがカザキ様ですか?」
「ええ、そうですけど」

 女性に名前を聞かれて、俺はそう答えたら女性は真剣な表情から満面の笑みに大きく変わった。

「へえぇ、あなたが......いや、エレアがお客様に手料理を作りたいとか言い出してえらく張り切っていたからどんな人か気になってね、あたしはこの宿の料理長を務めている、フェル・ノエルというものさ」

 やっぱりエレアのお母さんだったか、まあ髪の色的にそうかと思ったけど。

 他にもフェルさんと他愛のない話をしている時、そろそろ寝ようと思い話に区切りをつけて俺は、自分の部屋に向かった。

 俺の部屋は確か二号室だったよな。
 部屋のドアを開けて真っ先にベッドに横になり、俺は眠りについた。
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