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2章
第十一話(前)
しおりを挟むそれから数カ月後。
戦が始まった。
国境で行われている小競り合いは、上総の軍が優勢である。
冬也ももちろん参戦していた。
冬也は複雑な表情で、仁波のいる城を眺める。
城は現在、完全に包囲されており、もはや籠城戦になっていた。
落ちるのは時間の問題である。
今は、天幕に真木と冬也だけを残し、後の策を練っている最中だった。
冬也は、地面に広げた地図を眺める上総を見る。
いくら上総でも、肉親を無下に扱うことはないだろう。
しかし、地図から顔を上げた上総は、思いもよらぬことを言い放った。
「城に火をはなて」
冬也は顔を青ざめさせる。
「お、お待ちください、上総様。火を放つのは、いくらなんでも時期尚早ではありませんか」
「既に西のやぐらまで落としてあるだろう。そこから攻め入れば、倉までは目と鼻の先。そうなればもうあの城の中にいるものは逃げ場もなかろう」
「し、しかし」
「この状態で膠着しておると、相手の思うつぼじゃ。ここはさっさと落として、前進する」
そのまま伝令を呼ぼうとする上総に、冬也は慌てて声をかけた。
「に、仁波様は、よろしいのですか」
「仁波がいるから、どうした」
「降伏していただき、保護すべきかと」
「お主は、仁波だけのために、国を賭けた戦いに負けろと言うか」
「それは…」
上総は鼻を鳴らした。
「まあ、お主にとっては、仁波の腹にいる我が子を見捨てる行為になるからな」
冬也はさっと顔を青ざめさせる。
上総は冷ややかに言った。
「下がれ」
冬也は唇を噛んで、天幕を出る。
それを見届けてから、上総は隣に控えていた真木に声をかけた。
「…真木」
「はい」
「仁波を連れてこい。日暮れまで待つ」
「承知しました」
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