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第一章 始まりは浮遊島。

第15号 少年と島のモノ。

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 「レイ?……レイ?」
 茂みの中を歩いているレイに、ヒルトも歩きながら何度か声をかける。先ほどから何回もやっているのだが、全く返事は帰ってこない。
 きりがないので、揺すぶってみる。
「レイ…?大丈夫?」
「……お、ひるとー。…どうしたのー?」
 気の抜けた返事。寝ぼけているようにしか見えない。
「どうしたのって、レイこそ何処に行くんだよ。」
「…何処、に?」
 足を止め、空を仰ぎ、何かしら考え込んでいる。
「えぇーと…わかんない。…取り敢えず、行か、なきゃ。」
 また、足を進める。
 ここでレイを止めても良いのだが、本当に用事があるのかも知れないし、このままにしていて危険なことが起きるかどうかもまだわかっていないのでめておいた。
 それにそもそもの原因がわからない。原因が分からなければ、もしこれが何かしらの病気だったとして、これから同じことがあった場合、対処法が何もないことになる。
 ヒルトはこれから約一ヶ月はレイと一緒に居るということをしっかり頭の縁に入れているということだ。

 レイがとあるところで止まった。
 沢山の木が集まる森の中、堂々とそびえ立つとても大きな木。
 大樹の前である。
 ウディクと比べるとすると2m差で木の方が大きい程だった。
 その大樹の根本、何か機械のような大きな物体がある。もともとあった物体の上に苗木が植えられ、育ったような感じに。
 物体は近くに行ってよく見ると乗り物のようにも見えた。

 レイがまた歩き出す。
 大樹の反対側に行くと、石碑のような物が埋められていた。
 側面に筆で書かれたような文があり、きっと古代文字なのだろうが、それは学習済みのヒルトにも読めないような物だった。
 ただそれは知らない文字という訳ではなく、殴り書きで書かれており、風化した跡もあり、挙げ句の果てには鳥のフンまで落ちてあり、つまり、汚なすぎて読めなかったのだ。
「わた…し、は……こ、こに?……の…ふ、ど、を………こと…した。」
 ヒルトは読めるところまでは読んで見たが、肝心なところだけ分からない。

 レイが石碑の頭部に付いてある懐中時計を手に取る。幸い、その時計には鳥のフンは落ちていなかった。
「……あ、あれ?」
 レイがぐるっと周りを見渡す。ヒルトに気が付いた。
「…ヒルト……。あ、ねぇここ、どこ?」
 レイは意識が戻ったのか首をかしげる。そもそも本当にレイが無意識だったのかをヒルトは知らなかったので、少し驚く。
「さ、さあ。レイに付い行って見つけた場所だから…。レイはここに来たことないの?」
 もう一度、レイが周りを頭をゆっくり動かし見る。
「……。」
 数秒の無言。鳥の羽ばたく音が上から聞こえてくる。
 レイがはっ、とした表情をとった。
「…ないっ!」
(ないのかよっ!)
 片腕を上げた、元気の良い返事。
(今の何かしら凄いことに繋がる場面じゃないのっ!?
 ……あ、しまった。…今日変なことばっかあったから、少し変な方向に期待した…。……恥ずかしい…。)
 赤面。確かにヒルトはこの一日、普通の日常では絶対と言えるほどに出会えないようなものに沢山出会った。

 それはもう、またすぐに不思議なことが起きても不思議ではないほどに…。
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