化け物の棺

化け物の棺

あとがき

終わりました！　全部で79話、総文字数約20万文字。私史上では一番長い連載になりました。
　『化け物の棺』はファンタジーなんですが所々史実を交えて展開してまいりました。
　これを書くにあたって少しばかり資料を読みましたが結局はあまりそれを披露する事なく物語が終了になりました。
　先ずはこの物語で是非ともご紹介したかったのはエルネスト・エブラール氏です。
　物語ではお茶目なおじさんとして登場しましたが、彼は本当に当時活躍していた建築家で考古学者だった人す。
　ハノイに赴任する前にはローマ賞と言う賞も受賞した本当は凄い人。（どんな凄い賞なのかあまりピンとは来ません…😅）
　色々な国の建築を手掛け、特にカンボジアやベトナムなどではフランス政府の依頼を受けて都市計画に携わり、インドシナ様式と言ったヨーロッパとアジアを折衷した新しい建築様式を作り出した事で有名になりました。
　当時ハノイは東洋のパリと呼ばれていました。そんな場所はいくつかありますが、ハノイはかつては中国に支配されその影響を色濃く受け継ぎ、そこに今度はフランスの文化が流れ込み、それらが渾然一体となった不思議でエキゾチックな魅力のある街でした。
　今もベトナムの地にはその頃エルネスト達の作った建築が多くその姿を留めています。
　その都市とてしての数奇な運命とベトナムという地で花開いたパリという異色な取り合わせが不思議と心惹かれました。
　あの東南アジアにパリ！
まるで海の上に突如浮かんで見える蜃気楼のようだと思いました。
　いつかハノイを舞台に何か書いてみたいと言う気持をずっと抱いていた私は、当時考古学に少し興味をそそられていた事もあってこの物語が生まれました。

　もう一人歴史上の人物を挙げるとすれば、それは最後に出て来たベトナムの革命家、ベトナム民主共和国初代主席ホー・チ・ミン氏でしょうか。
　いつもどこかの国の統治下にあったベトナムをちゃんと国民の手に委ねる事が出来た最初の人物です。
　フランスの統治下にあって独立運動は1922年のこの頃も多かれ少なかれ各地で勃発をしてました。
　この物語では「青嵐」という革命集団を書きましたが、これは私の創作です。
ですがこんな小さな革命集団はきっと常に水面化で活動をしていたのかもしれません。
　革命が結実するのはこの物語の二十三年後になります。
　きっとこの時ライも喜びの声をあげたに違いありません。

　こんなベトナムを日本もかつて進駐軍を送り、支配しようとした事があります。
　第二次世界大戦が勃発して日本はそれどころではなくなってしまいますが…。
　同じ米文化の国ですから末永く友好的な関係でいたいものです。

　ベトナムのハノイ。
まだ沢山書きたい事がありました。密林ばかり書いていたので、まだ全然ハノイの街の魅力を書けませんでした！
　いつかまた、執筆の機会があれば今度はもっとたくさんハノイを舞台に書いてみたいと思わせてくれる素敵な場所だと思いました。
　長い物語をここまで読んでくださった皆様、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

mono黒拝