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王宮への招待状
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『ヤバイに神秘の天使現る!美貌の占い師の脅威の的中率!!』
ヤバイのウィークリー雑誌にこういう見出しが躍ったのは、ラムランサンが広場にテントを張ってから程なくしてのことだった。
性別は嘘っぱちでも中身はれっきとした一級品の占い師。
ノーランマークの思惑通り、暇を持て余しているヤバイのセレブ達の間であっという間に噂になった。
そしてその噂はとんとん拍子に双子の王子達の耳にも届いていたのだった。
昼下がりの王宮の庭、お供を引き連れた二人の王子が散歩途中の回廊でバッタリと出会した。
「イェハーン兄さん!知っているかい?広場でテントを張ってる占い師。当たると評判だが絶世の美女だそうだよ!どんな美女だろうねえ」
茹で卵のようなつるりとした面立ちの眠そうな目をしたタシール王子はナヨナヨしい足取りで兄の元へと小走りに近寄った。
一方、駆け寄られた兄の方は立派な髭と太い眉。目力の強い男で、それがニコリともせずに弟と対峙していた。
「タシール。またお前の悪い癖が始まったのか?占いなど私は一向に興味はないが、…無いが絶世の美女となると話は別だな」
「そうだろう?どんな美女か二人で味見してみたいと思わないか?」
双子といえど似ていない二卵性双生児の二人の王子達だったが、美女が好きと言う点では噂通りのようだった。
「どう?兄さん。僕らの誕生日が近いだろう?祝いの晩餐会で余興としてその美女を呼んでみない?」
「まったく!お前と言うやつは抜け目のない奴だな。だが、良い思いつきだ。が!くれぐれも…」
くれぐれもなんだと言うのか、含みのある物言いで兄の鋭い眼差しがジロリと弟を睨んだ。
そんな兄に、弟は誤魔化すように笑って肩を窄めて見せた。
ホテルの部屋に戻ったラムランサンはグッタリだった。
一日中下らない占いで心身共にすり減らし、ソファに脱力して寝そべっている所へ、執事のロンバードが立派そうなカードを「ラム様。コレを…」と恭しく差し出してきた。
何気なく受け取ったラムランサンだが、差出人を見て跳ね起きた。
「王宮からの招待状?!」
慌てて開いた招待状は厚手の紙に金で縁取られた立派な作りで、二人の王子の連名で署名がしてあった。
「なるほどね!王子達の誕生日パーティーにご招待と言うわけだな?やったじゃないか!ラム!」
何処からとも無く現れたノーラマークはラムランサンの手から招待状を取り上げて、それを得意げな顔で眺めた。
「オレの読み通りだな。これで正式に王子達に近づけるぞ!」
お茶を運んできたイーサンにもヒラヒラとそれを見せた。
「ラム様!やりましたね。これで王子達に直接触る事が出来たら、事情がもう少し分かって来るかもしれませんね」
ラムランサンの占いは、神託の輝石を使い、尚且つその人物に触れる事でより一層鮮明な占い。あるいは予知や過去の事などを見る事が出来るのだ。
ラムランサンはもっと喜んでも良い筈なのだが、つまらなそうにティーカップの縁を小さく噛みながら何か言いたげにノーランマークの顔を見上げた。
「どうしたんだ?ラム。もっと喜べよ」
「お前は…良いのか?私が王子達に気に入られて嫁にとせがまれるかも知れないぞ?間違って王妃の座に座っているやもしれぬ…」
意外にもセンチメンタルに呟いたラムランサンはやるせ無い溜息をついた。
「ば、馬鹿言うな!お前は男だぞ。王妃になんてなれるものか!そうだろう?ロンバード」
同意を求めても返事が返らない。
いつもは現れなくも良い場面で現れる癖に、こう言う時にはいち早く姿が見えなくなっていた。
気づけばイーサンすら、居なくなっている。
縋るものの無くなったノーランマークは自力でこの場を何とかしなければならなくなった。
「お前は男なんだ。言い寄られたってどうにも出来っこないだろう?」
ソファに座るラムランサンの隣に腰を下ろして、ノーランマークは宥めるように肩を抱いた。
だが、ラムランサンはまだ浮かない顔つきで頬杖をついて茶を啜った。
「私は女占い師だ。お前がそう仕立てたのだろう?」
「そ、それは仕事として割り切ってだなぁ…」
「楽しんでた癖に!その先の事、考えなかったのか?王子達に手を握られたり、もしかしたら一夜の相手をせがまれるかもしれないなあ」
「それはお前の胸先三寸だ。まさか、言い寄られたからって…」
「私はか弱い女。襲われたら抵抗なんか出来るものか。
それに、お前なら美女に言い寄られたら据え膳は食わないだろう?相手はお金持ちの王子様だもんな…お前は泥棒だしな…」
ノーランマークをチラ見しながらラムランサンは内心ペロリと舌を出していた。
百戦錬磨の男が、意図も容易くラムランサンに弄ばれていた。
「じ、じゃあこうしよう!当日オレも同行してやる!」
だがラムランサンは「執事なら間に合ってる」と素っ気ない。
「なら、用心棒だ!用心棒としてついていこう!」
日頃色男ぶっているノーランマークの狼狽した姿を見るのは愉しかった。
自分を女占い師に仕立てたノーランマークへのちょっとした復讐心もあったのだが、こんな風に狼狽える姿を見せるノーランマークを愛しいと思ってしまうラムランサンなのだった。
そして、程なくして王子達の誕生日の日がやって来た。
ラムランサンはいつもよりも入念に女占い師に変身し、ノーランマークは用心棒として黒づくめのスーツで帯同していた。
王宮はこのご時世にも関わらず、金銀をふんだんにあしらった豪勢な作りで、この日宮殿の車寄せには高級な車が次々に乗り付け、やばいは勿論の事、ドバイやその近郊の王侯貴族や世界の名の知れたセレブ達を次々と降ろして行った。
それに混じって、ラムランサン、ノーランマーク、ロンバードの三人も、宮殿の中へと堂々と入って行った。
いったい双子の王子達とはどんな人物達なのか、まだ何も分からなかった。
ヤバイのウィークリー雑誌にこういう見出しが躍ったのは、ラムランサンが広場にテントを張ってから程なくしてのことだった。
性別は嘘っぱちでも中身はれっきとした一級品の占い師。
ノーランマークの思惑通り、暇を持て余しているヤバイのセレブ達の間であっという間に噂になった。
そしてその噂はとんとん拍子に双子の王子達の耳にも届いていたのだった。
昼下がりの王宮の庭、お供を引き連れた二人の王子が散歩途中の回廊でバッタリと出会した。
「イェハーン兄さん!知っているかい?広場でテントを張ってる占い師。当たると評判だが絶世の美女だそうだよ!どんな美女だろうねえ」
茹で卵のようなつるりとした面立ちの眠そうな目をしたタシール王子はナヨナヨしい足取りで兄の元へと小走りに近寄った。
一方、駆け寄られた兄の方は立派な髭と太い眉。目力の強い男で、それがニコリともせずに弟と対峙していた。
「タシール。またお前の悪い癖が始まったのか?占いなど私は一向に興味はないが、…無いが絶世の美女となると話は別だな」
「そうだろう?どんな美女か二人で味見してみたいと思わないか?」
双子といえど似ていない二卵性双生児の二人の王子達だったが、美女が好きと言う点では噂通りのようだった。
「どう?兄さん。僕らの誕生日が近いだろう?祝いの晩餐会で余興としてその美女を呼んでみない?」
「まったく!お前と言うやつは抜け目のない奴だな。だが、良い思いつきだ。が!くれぐれも…」
くれぐれもなんだと言うのか、含みのある物言いで兄の鋭い眼差しがジロリと弟を睨んだ。
そんな兄に、弟は誤魔化すように笑って肩を窄めて見せた。
ホテルの部屋に戻ったラムランサンはグッタリだった。
一日中下らない占いで心身共にすり減らし、ソファに脱力して寝そべっている所へ、執事のロンバードが立派そうなカードを「ラム様。コレを…」と恭しく差し出してきた。
何気なく受け取ったラムランサンだが、差出人を見て跳ね起きた。
「王宮からの招待状?!」
慌てて開いた招待状は厚手の紙に金で縁取られた立派な作りで、二人の王子の連名で署名がしてあった。
「なるほどね!王子達の誕生日パーティーにご招待と言うわけだな?やったじゃないか!ラム!」
何処からとも無く現れたノーラマークはラムランサンの手から招待状を取り上げて、それを得意げな顔で眺めた。
「オレの読み通りだな。これで正式に王子達に近づけるぞ!」
お茶を運んできたイーサンにもヒラヒラとそれを見せた。
「ラム様!やりましたね。これで王子達に直接触る事が出来たら、事情がもう少し分かって来るかもしれませんね」
ラムランサンの占いは、神託の輝石を使い、尚且つその人物に触れる事でより一層鮮明な占い。あるいは予知や過去の事などを見る事が出来るのだ。
ラムランサンはもっと喜んでも良い筈なのだが、つまらなそうにティーカップの縁を小さく噛みながら何か言いたげにノーランマークの顔を見上げた。
「どうしたんだ?ラム。もっと喜べよ」
「お前は…良いのか?私が王子達に気に入られて嫁にとせがまれるかも知れないぞ?間違って王妃の座に座っているやもしれぬ…」
意外にもセンチメンタルに呟いたラムランサンはやるせ無い溜息をついた。
「ば、馬鹿言うな!お前は男だぞ。王妃になんてなれるものか!そうだろう?ロンバード」
同意を求めても返事が返らない。
いつもは現れなくも良い場面で現れる癖に、こう言う時にはいち早く姿が見えなくなっていた。
気づけばイーサンすら、居なくなっている。
縋るものの無くなったノーランマークは自力でこの場を何とかしなければならなくなった。
「お前は男なんだ。言い寄られたってどうにも出来っこないだろう?」
ソファに座るラムランサンの隣に腰を下ろして、ノーランマークは宥めるように肩を抱いた。
だが、ラムランサンはまだ浮かない顔つきで頬杖をついて茶を啜った。
「私は女占い師だ。お前がそう仕立てたのだろう?」
「そ、それは仕事として割り切ってだなぁ…」
「楽しんでた癖に!その先の事、考えなかったのか?王子達に手を握られたり、もしかしたら一夜の相手をせがまれるかもしれないなあ」
「それはお前の胸先三寸だ。まさか、言い寄られたからって…」
「私はか弱い女。襲われたら抵抗なんか出来るものか。
それに、お前なら美女に言い寄られたら据え膳は食わないだろう?相手はお金持ちの王子様だもんな…お前は泥棒だしな…」
ノーランマークをチラ見しながらラムランサンは内心ペロリと舌を出していた。
百戦錬磨の男が、意図も容易くラムランサンに弄ばれていた。
「じ、じゃあこうしよう!当日オレも同行してやる!」
だがラムランサンは「執事なら間に合ってる」と素っ気ない。
「なら、用心棒だ!用心棒としてついていこう!」
日頃色男ぶっているノーランマークの狼狽した姿を見るのは愉しかった。
自分を女占い師に仕立てたノーランマークへのちょっとした復讐心もあったのだが、こんな風に狼狽える姿を見せるノーランマークを愛しいと思ってしまうラムランサンなのだった。
そして、程なくして王子達の誕生日の日がやって来た。
ラムランサンはいつもよりも入念に女占い師に変身し、ノーランマークは用心棒として黒づくめのスーツで帯同していた。
王宮はこのご時世にも関わらず、金銀をふんだんにあしらった豪勢な作りで、この日宮殿の車寄せには高級な車が次々に乗り付け、やばいは勿論の事、ドバイやその近郊の王侯貴族や世界の名の知れたセレブ達を次々と降ろして行った。
それに混じって、ラムランサン、ノーランマーク、ロンバードの三人も、宮殿の中へと堂々と入って行った。
いったい双子の王子達とはどんな人物達なのか、まだ何も分からなかった。
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