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なんで・・・恋愛が嫌いな私が、よりにもよって恋愛シュミレーションゲームの主人公にして転生してるのよ、冗談じゃない!(4話)
しおりを挟む「でもさぁ、レン君。 それって、いつまで続けるの?」
チェルシーの言葉で過去から現実に引き戻されたカレン。
カレンは懐から小さな手帳を取り出しパラパラとページをめくった。
「目標としては今年の技術対抗戦までだ、優勝すると国王から直々の褒美がもらえる。 それで、自分で婚約者を決定する権利を手に入れるか、あるいは正式的な貴族の位をもらう。 なまじ力が強い分、下手なところに嫁に行けばそれは戦争につながると言う事を向こうも分かってるし、司祭様が直々に国王に男のフリをしている事情を話してくれてる、だから優勝の褒美と言う事で周りの誰もが納得する口実にする計画!」
馬車の中3人で話をしているとやがて馬車が止まった。
防壁の入り口に着いた。
いくつもの馬車が、防壁の中へ入ろうと列をなして待っている。
豪華な装飾品が飾られた馬車や、質素な馬車もあれば、乗り合いの馬車もある。
みんなが列に並んで待っている中、ひときわ豪華な馬車が列の最後尾に並んだ。
馬車の横には王家の紋章が描かれていた。
兵士達や馬車の運転手達が慌てて道を開け、王族の馬車はゆっくりと開いた道を進んでいく。
すれ違う瞬間カレンと馬車の中の人物と目が合った。
漆黒の夜のような髪に、女性の間違えるほど美しい顔立ち、そして深いアメジスト色の瞳がカレンを見つめる。
「(あれが第1の攻略キャラ、オルフェン王国の第三王子、ヨルン・オルフェン15歳か……)」
カレンは手に持っていた手帳の別のページを開いた。
そこにはこの世界に転生してすぐ忘れないうちに書いておいた攻略キャラ達の特徴や攻略方法が書かれていた。
「(ヨルン・オルフェン。 性格は、志が高く、責任感が強く、真面目で努力家。 しかしその反面、几帳面すぎる上に集中すると周りの声が聞こえなくなったりする。 ……この世界は、国王になれるのは魔力持ちって言う暗黙のルール。 兄二人と姉二人魔力なしの状態の中、遅くに生まれたヨルンにたかろうとする貴族達のプレッシャーが半端なく、その辺が4属性持ちのカレンと共通。 ゲームじゃぁ、そこから恋に発展し婚約者であり、悪役令嬢のマーガレットの妨害と、カレンを狙う他国の第2王子ヴェルディ・ハウザーとの抗争を経て結ばれる)」
馬車が動き出すと同じタイミングで、手帳を閉じて懐にしまう。
「(他国の王子との抗争って、下手したらそのまま戦争につながるじゃない……王族との結婚は1番に避けなきゃ)」
カレンはフッと、思う。
馬車が学園内の定位置で停車するとオリビアが荷物を手に降りて、カレンがチェルシーをエスコートする形で順番に降りてきた。
オリビアとはそこで別れ2人は入学式が行われる会場へと向かう。
目立たないように端の方歩いていたが、道中カレンを見つけヒソヒソと話をする学生達。
そんな学生達を気にせず歩いているとカレン達の前に、ケンゴが現れた。
「お前がレン・アルフォードか」
栗毛の短髪にワインレッドの瞳。
身長は168センチと小さめなのに、自信満々な態度で見た目より大きく見える。
大小様々な武器を身に付けている上に、シャツの前は開けていて制服は着崩している。
貴族と言うよりは、まるでどこかのヤンキーみたいだとカレン思った。
「そうですよ。 初めまして、ケンゴ・オールドマン卿、と言う呼び方でよろしかったですか?」
なるべく低い声でカレンは挨拶を返した。
「卿なんて呼び方止せよ、むずがゆい! 俺は貴族じゃなくて、戦士だ。 だからこそ、今日この日を心待ちにしてた! お前と戦えるこの日はなぁ」
目をギラギラさせて、今すぐにでも食ってかかろうかと言うほどの気迫でファイティングポーズをするケンゴ。
今ここで戦闘になられても困る、と思ったカレンはチラっと隣に立つチェルシーを見て、名前を呼んで。
カレンの反応で何をすべきか理解したチェルシーはちょっとニヤッと笑い、2人の間に割って入りファイティングポーズをするケンゴの手を握った。
「ケンゴ様、お待ちください! もうすぐ入学式が始まります、どうかそれまでは拳をお納めいただけませんか」
不意に手を握られたケンゴは一瞬、固まったがすぐに手を振り払い、後に飛んだ。
「おぉ、女が気安く男に触るな! 破廉恥だ。 おっおぉ、お前との勝負っ、ぁ預けたからな! 逃げるなよ!」
ポカーンとする周囲の学生達を置き去りにしてカレン1人だけが笑いだす。
「アッハハハ~……。 さすがドピュア一族、手を握られただけで破廉恥って」
「レン君が言っていたのって本当だったんだね、びっくり」
そんな2人の会話に入ってきた1人の女子生徒がいた。
「あのぉ、ケンゴ様がドピュアってどういう事ですか?」
カレンは話しかけてきたその女性と驚いた。
「! ……君は?」
「ケンゴ様の婚約者でエリカと申します」
カレンはエリカの言葉でさらに驚く。
「(!? 婚約者! あれ?攻略キャラ達に婚約者っていたっけ? …………いや、いなかったはずだ! だって彼らはカレンを狙ってるんだからぁ……、あ! でも今の私、男のふりをしてる、結婚ができないから婚約者がいるんだ! やばいなぁ……ここら辺でちょっとズレが出て来ちゃった、まぁこれ位なら許容範囲内かぁ)」
顔に出さず内心そう思い、何でもない日のようにエリカに答えた。
「ケンゴ殿に婚約者がいるとは驚いた。 しかも君のように戦闘に不向きな女性が」
身長160センチはあるかどうかと言う位の小柄で細身、背中まである金色のゆるふわな髪をきれいな髪飾りでサイドに2つで縛りっている。
制服が紺色であると言う事から貴族であると言う事は分かるものの、とてもじゃないけど戦う事が大好きと言われている戦闘狂のケンゴ・オールドマンに合うとは思えない婚約者がそこにいた。
「いつも何を話しても、怖い顔をして睨みつけてくるので……」
「いつもどんな話をしているんですか?」
「え? 最近読んだ本の話とか、新しくできたスイーツのお店とかの話です」
「それは、怖い顔をしていると言うよりかは、返事をどう返したらいいのかが分らなくて困惑してるだけなんじゃないのか? オールドマンの一族は戦闘狂と呼ばれている一族だ。 戦う事に関して右に出るものはいない! が、その反面戦闘以外は、天然のドピュア。 以前パーティーでケンゴ殿の父君が母君と腕を組んでいた時、怖い顔をしていたけど耳まで真っ赤になって、照れていた」
カレンのその言葉にエリカを含めた周りの生徒達もザワつく。
そんな話をしている間にチャイムが鳴り、みんな慌てて入学式の会場へ向かった。
会場に向かう途中カレンはヴェルディ・ハウザーと目があった。
特に言葉を交わさなかったがこちらを見て、ニコッと笑って去っていった。
たったそれだけの事だが、カレンにとっては1つの違和感があった。
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