上 下
36 / 70
二章 コノート編 一年生

36

しおりを挟む
 オリバーから、リヴィアの好きなものを聞かれた。そういえば、私もリヴィアの好きもの知らないや。私は、寮のベッドに寝転がっている時に、それとなくリヴィアに話しを聞いてみた。

「ねぇ、リヴィアって、どんなものが好きなの?」

「好きなもの?」

 リヴィアはうーんと首を傾げる。

「綺麗なショールは好きですわ。ケーキ、お菓子などの甘いものも大好きですわ。美味しいお料理ももちろん好きですわよ? 綺麗な庭を見るのも好きですし、美しい音楽も好きですわ、あと、実は語学の勉強も好きですの…昔はお勉強なんて好きじゃなかったのに、スカーレットとオリバーやローガンに教えて貰ったら好きになってしまいましたわ」

 リヴィアが顔を赤らめる。

「あぁ、そうだ綺麗なお皿も好きですわ! あと、キラキラした宝石も綺麗ですわよね。お洋服も好きですわ」

 リヴィアは世の中に好きなものが沢山あるようだった。それって、きっととても幸せな事なんだと思う。

「それじゃあ、好きな場所ってある?」

 リヴィアは口を開いてから、口を閉じて顔を赤くする。リヴィアにしては珍しい仕草だった。

「あの、わたくし、広い場所が好きですの。草原や農地なんかの大きく草木の広がる場所に安心しますわ……麦畑を見るのも好きですわ」

 意外な返答だった。

「わたくしにもわかりませんの。でも、遠乗りして見るその風景がわたくしは好きです」

「教えてくれてありがとうリヴィア」

「いえ、そんな。スカーレットが好きなものも教えていただける?」

 尋ねる彼女に私も答えた。



オリバーにリヴィアの好きなものや場所を伝えると、彼も少し意外そうな顔をした後に腕を組んで真剣に唸る。

「デートうまくいきそう?」

 そう言うとオリバーはあからさまに肩を跳ねさせて驚いた。

「な、なんでわかるんだ!?」

 間接的に女の子の好きな物知りたいなんて、好きな子へのアプローチ方法を考えてるって普通にわかる。

「大丈夫。前も言ったように、私はオリバーの事応援してるから!」

「……ありがとう」

 彼は顔を赤らめながら、オリバーは真剣にデートプランを考えていた。



 後日、リヴィアとオリバーがデートに行った事を私は知った。なぜなら、リヴィア本人が報告してくれたからだ。

「とっても、楽しかったですわ!」

 との事だった。また別の日にオリバーからも報告を受けたのだが、なかなか手応えのある良いデートだったらしい。

「リヴィアは本人も気づいてないみたいだけど、物の価値をを見る目が凄くあるんだ」

「そうなの?」

「貴族だから、良い物を見慣れている環境で育ったせいもあると思う。けど、それ以上にリヴィア自身が良い感性を持っている。しかも、ジャンルを固定せずに見れる目がある」

 頷いて話しを聞きながら、私は首を傾げた。

「二人でデートに行ったんじゃなかったけ?」

「あ、ははは。いや、そうなんだけど一緒にお店をいろいろ見てたらリヴィアの反応が面白くて。だって、市場に連れて行ったら新鮮な果物や野菜を綺麗だって感動するし、服屋に連れて行ったら裏で作業している職人の仕事を手放しで褒めて感嘆してるんだぜ。間違いなくあの子は、商人向きだ」

 オリバーが腕を組んで頷く。

「商品を見る目があって、職人の技を尊重できて、物に感心のある子。うん、完璧だ」

 面食いのオリバーはたぶん当初リヴィアの、綺麗な容姿に惚れていたのだとう思う。しかし今回のデートで、彼女の性格と性質と才能に惚れ込んだように思う。

「僕真面目に、あの子のにアタックしてみるよ」

 品定めを完了したオリバーが、男の目でそう言った。私は幼馴染が一歩大人になる瞬間を目撃するのであった。ところでリヴィアちゃんの人当たりの良さも、商人に向いてると思いますぜ。





つづく





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後

有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。 乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。 だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。 それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。 王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!? けれど、そこには……。 ※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!

友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください。 そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。 政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。 しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。 それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。 よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。 泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。 もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。 全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。 そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。

処理中です...