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二章 コノート編 一年生
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それからザウルさんの助手の手伝いをしたり、斡旋所から紹介された仕事をこなす日々を過ごして毎日忙しかった。斡旋所の仕事は私が火の魔術しか使えない事から、壊す仕事が多かった。落石の件から火力は十分あったので、同じように洞窟内の岩を壊してくれとか、残飯埋め用の大きな穴を燃やして作れないか? などである。魔物討伐の依頼もいくつか貰ったのだが、まだ私がそこまで強い魔物との戦闘はしない方が良いとラスカーさんが判断して断っていた。戦闘面に関しては、これからもっと訓練を積まなければ。
ずっと仕事仕事だったので、アイリスとギネに誘われて一日遊ぶ事にした。夏用の私服に着替えて、寮の外に繰り出す。
「あー! 今日も良い天気だな!!」
ホットパンツに、タートルネックを着たアイリスが青い空を見て笑う。
「毎日、良い天気ですよね」
白ワンピースを着たギネもほほえむ。
「冷たいものが食べたくなってきた」
私は、街の服屋で一目惚れした赤ワンピースを着ていた。
「アイスだな!」
「良いですねアイス」
女三人話しをしながら、アイス屋へ向かう。アイリスはマンゴー、ギネはバニラ、スカーレットはチョコアイスを席に着いて食べる。
「親父がよー。少しは女らしくなれって、最近うるさいんだ」
アイリスが唸る。
「十分女らしいだろ、こことか、この辺とか」
そう言って胸やお尻を指さす。確かに、アイリスは大変発育の良い体をしている。
「嫁の貰い手がいないぞぉ、とか言うんだよ」
アイリスはコーンの部分をガリガリ食べる。
「なぁ、ギネ。恋人ってどうやったら出来るんだ?」
突然尋ねられたギネが驚く。
「なぁ知ってるか、スカーレット。ギネはもの凄くモテるんだぞ入学三日で告白されて、恋人作ったんだぞ」
「え」
それは凄い。でもギネは凄くスレンダーで肌も髪も白くて顔もかわいい、目をひく子だった。性格も凄く良い。モテない方がおかしい。
「恋人とはうまくやってるのか?」
「え……えぇ。はい、毎日会いに来てくれます」
「熱いな」
「熱いですね」
夏の暑さ以外でのぼせてしまいそうだ。
「スカーレットは恋人いないのか?」
「えっ」
「よく一緒にいる男の子二人とは、どんな関係なんですか?」
ローガンとオリバーの事だ。
「どんな関係って、友人かな。二人とも近くの村の出身なの」
「へー幼なじみか」
「良いですね」
二人がにこにこしている。女の子って恋の話し好きだよね。もちろん私も好きだ。
「俺四つ上に、幼なじみみたいなのがいるんだけどよ。すげー性格悪いんだよ」
「あら、そうなんですか?」
アイスを食べ終わった後も会話は弾む。
「なんつーか、いつも俺の顔見るとむすっとしる来るんだよ。前はもう少し会話とかあった気がするけど、ここ一年くらいずっとそんな感じなんだ」
「まぁ、どうしたんでしょうね」
「四つ上なら、もう仕事をしてるの?」
大学に行かないなら、十八で仕事に就く。
「おう、去年の冬くらいから斡旋所で仕事してるぞ。シュシュって言うんだ」
私は、もたもた食べていたコーン部分をあやうく喉につまらせるところだった。
「シュシュさん……」
「そういや、スカーレットは斡旋所に行ったんだよな。あいつ見たか? 黒髪をびしっと横に流してるいけすかない顔した男なんだけどよ」
幼なじみに酷い言いようである。
「見たよ。お世話になってる」
「あ、マジか。あいつ仕事してるんだな」
あれからもちょくちょくシュシュさんに会うのだ、新人と思えない程キビキビと仕事をこなしている姿をよく見た。話した感じだと、まぁ少し嫌味みたいなのをたまに言う人だなぁとは思った。
『この仕事、無理だと思ったら帰って来てくださいね。失敗した際に治療費を払うのは私達なんで』
とか、チクっと言ってくる人だ。
「俺ももちっと、かわいげのある幼なじみが欲しかったよなー。まぁ、よろしく言っておいてくれ」
三人はその後も楽しく話しながら一日ショッピングに興じたのであった。
次の日凱旋所に顔を出した時にシュシュさんがいたので、挨拶ついでにアイリスの事を伝えておいた。
「シュシュさんこんにちは。アイリスさんが、よろしく言ってましたよ」
クールだった表情がわずかに崩れる。
「な、なぜあいつを知ってるんですか。いや、ラスカーと知り合いならその可能性もあるのか……」
驚いた後に、彼は小声でぼそぼそ言っている。
「同じクラスなんです」
「! なるほど。確かに君は、コノート学園の一年生で、彼女も一年だ。という事は、ロサ組なのか」
クラスまで把握してるのか。
「そうですけど、よくアイリスがロサ組って知ってますね」
「あいつは寮に入る前は毎日、俺の家に来て勝手に一日の報告をして帰って行っていたんだ。最近は夏休みに入ってまた習慣が復活してな……」
シュシュさんが顔を手で覆う。
「家が隣同士なばっかりに、あいつは俺の家に毎日毎日……はぁ。あいつは放っておくとずっと一人で喋ってるから、君も巻き込まれたら頃合いを見て切り上げるんだぞ」
助言された。確かにアイリスはずっと喋っている明るい子だった。
「ま、あいつによろしく言っておいてくれ」
しかし、シュシュさんそこまでアイリスさんの事を嫌いってわけでも無さそうだ。
「アイリスが、最近シュシュさんが仏頂面で怖いって言ってましたよ」
シュシュさんが憮然とした顔で黙る。
「……あいつが羞恥心を覚えてくれたら、僕もそんな顔しなくて良いんだがな」
「へ」
「君からそれとなく言ってくれないか、年頃になったら下着で家の中をうろうろするなって……」
「え、でも、シュシュさんの家ではさすがに行かないでしょ!」
「来てるから対応に困ってるんだ! あいつは僕の家を、自分の家の地続きだと思っているフシがある!!」
あぁ、でも幼馴染なら仕方ないのかな。そういうやアイリスは寮でも下着でうろうろしてた気がする。
「なんか、うまく言えそうだったら言っておきますね」
「是非そうしてくれ」
私は、苦笑いをして仕事に向かった。案外この二人、数年後にくっついてたりしそうだ。
つづく
ずっと仕事仕事だったので、アイリスとギネに誘われて一日遊ぶ事にした。夏用の私服に着替えて、寮の外に繰り出す。
「あー! 今日も良い天気だな!!」
ホットパンツに、タートルネックを着たアイリスが青い空を見て笑う。
「毎日、良い天気ですよね」
白ワンピースを着たギネもほほえむ。
「冷たいものが食べたくなってきた」
私は、街の服屋で一目惚れした赤ワンピースを着ていた。
「アイスだな!」
「良いですねアイス」
女三人話しをしながら、アイス屋へ向かう。アイリスはマンゴー、ギネはバニラ、スカーレットはチョコアイスを席に着いて食べる。
「親父がよー。少しは女らしくなれって、最近うるさいんだ」
アイリスが唸る。
「十分女らしいだろ、こことか、この辺とか」
そう言って胸やお尻を指さす。確かに、アイリスは大変発育の良い体をしている。
「嫁の貰い手がいないぞぉ、とか言うんだよ」
アイリスはコーンの部分をガリガリ食べる。
「なぁ、ギネ。恋人ってどうやったら出来るんだ?」
突然尋ねられたギネが驚く。
「なぁ知ってるか、スカーレット。ギネはもの凄くモテるんだぞ入学三日で告白されて、恋人作ったんだぞ」
「え」
それは凄い。でもギネは凄くスレンダーで肌も髪も白くて顔もかわいい、目をひく子だった。性格も凄く良い。モテない方がおかしい。
「恋人とはうまくやってるのか?」
「え……えぇ。はい、毎日会いに来てくれます」
「熱いな」
「熱いですね」
夏の暑さ以外でのぼせてしまいそうだ。
「スカーレットは恋人いないのか?」
「えっ」
「よく一緒にいる男の子二人とは、どんな関係なんですか?」
ローガンとオリバーの事だ。
「どんな関係って、友人かな。二人とも近くの村の出身なの」
「へー幼なじみか」
「良いですね」
二人がにこにこしている。女の子って恋の話し好きだよね。もちろん私も好きだ。
「俺四つ上に、幼なじみみたいなのがいるんだけどよ。すげー性格悪いんだよ」
「あら、そうなんですか?」
アイスを食べ終わった後も会話は弾む。
「なんつーか、いつも俺の顔見るとむすっとしる来るんだよ。前はもう少し会話とかあった気がするけど、ここ一年くらいずっとそんな感じなんだ」
「まぁ、どうしたんでしょうね」
「四つ上なら、もう仕事をしてるの?」
大学に行かないなら、十八で仕事に就く。
「おう、去年の冬くらいから斡旋所で仕事してるぞ。シュシュって言うんだ」
私は、もたもた食べていたコーン部分をあやうく喉につまらせるところだった。
「シュシュさん……」
「そういや、スカーレットは斡旋所に行ったんだよな。あいつ見たか? 黒髪をびしっと横に流してるいけすかない顔した男なんだけどよ」
幼なじみに酷い言いようである。
「見たよ。お世話になってる」
「あ、マジか。あいつ仕事してるんだな」
あれからもちょくちょくシュシュさんに会うのだ、新人と思えない程キビキビと仕事をこなしている姿をよく見た。話した感じだと、まぁ少し嫌味みたいなのをたまに言う人だなぁとは思った。
『この仕事、無理だと思ったら帰って来てくださいね。失敗した際に治療費を払うのは私達なんで』
とか、チクっと言ってくる人だ。
「俺ももちっと、かわいげのある幼なじみが欲しかったよなー。まぁ、よろしく言っておいてくれ」
三人はその後も楽しく話しながら一日ショッピングに興じたのであった。
次の日凱旋所に顔を出した時にシュシュさんがいたので、挨拶ついでにアイリスの事を伝えておいた。
「シュシュさんこんにちは。アイリスさんが、よろしく言ってましたよ」
クールだった表情がわずかに崩れる。
「な、なぜあいつを知ってるんですか。いや、ラスカーと知り合いならその可能性もあるのか……」
驚いた後に、彼は小声でぼそぼそ言っている。
「同じクラスなんです」
「! なるほど。確かに君は、コノート学園の一年生で、彼女も一年だ。という事は、ロサ組なのか」
クラスまで把握してるのか。
「そうですけど、よくアイリスがロサ組って知ってますね」
「あいつは寮に入る前は毎日、俺の家に来て勝手に一日の報告をして帰って行っていたんだ。最近は夏休みに入ってまた習慣が復活してな……」
シュシュさんが顔を手で覆う。
「家が隣同士なばっかりに、あいつは俺の家に毎日毎日……はぁ。あいつは放っておくとずっと一人で喋ってるから、君も巻き込まれたら頃合いを見て切り上げるんだぞ」
助言された。確かにアイリスはずっと喋っている明るい子だった。
「ま、あいつによろしく言っておいてくれ」
しかし、シュシュさんそこまでアイリスさんの事を嫌いってわけでも無さそうだ。
「アイリスが、最近シュシュさんが仏頂面で怖いって言ってましたよ」
シュシュさんが憮然とした顔で黙る。
「……あいつが羞恥心を覚えてくれたら、僕もそんな顔しなくて良いんだがな」
「へ」
「君からそれとなく言ってくれないか、年頃になったら下着で家の中をうろうろするなって……」
「え、でも、シュシュさんの家ではさすがに行かないでしょ!」
「来てるから対応に困ってるんだ! あいつは僕の家を、自分の家の地続きだと思っているフシがある!!」
あぁ、でも幼馴染なら仕方ないのかな。そういうやアイリスは寮でも下着でうろうろしてた気がする。
「なんか、うまく言えそうだったら言っておきますね」
「是非そうしてくれ」
私は、苦笑いをして仕事に向かった。案外この二人、数年後にくっついてたりしそうだ。
つづく
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