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二章 コノート編 一年生
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テスト勉強も終わり、晴れて自由の身になった四人は約束通りバラ園に来ていた。休日のトロッポ公園は人で賑わっている。ちなみに、トロッポ公園の由来はこの公園の真ん中に立っている騎士の名前から来たものらしい。以前、生徒会長さんの家の家系が建国から代々続く騎士の家系だとは聞いていた。そして、トロッポさんはその騎士団の中で特に名物騎士だったらしい。なにしろ、彼は騎士なのに剣を抜く事が殆ど無かったらしい。戦闘前の交渉だけで、戦争を終わらせた事が何度もあるとか。彼に関しての伝記や、物語は多くある。何冊か読んだ事があるが、とてもヒョウキンな人物だったらしい。彼の働きのおかげで、長い戦争が終わったとも言える。そういうわけで、功労者として公園に銅像が建てられましたとさ。
「屋台が出てるよ」
オリバーが公園の一角にある屋台を指差す。
「まぁ、美味しそうなジュースですね」
赤いベリージュースは確かに美味しそうだった。しかし、隣のチョコアイスも気になる。
「そちらも美味しそうですわね」
「そうなんだよね」
二人はむぅと悩む。
「そうですわ! 半分こにしましょう!!」
リヴィアは名案を思いついたように、そう言った。
「いいの?」
「もちろんですわ。半分こにしたら二つとも楽しめて素敵ですわね」
リヴィアって貴族のわりに、本当に他人との垣根が無い。学園内にいる貴族の子達はやっぱり、気位の高い子も多かった。言って、しまえば平民の子に差別的な振る舞いをする子も多くいた。そんな中でリヴィアや、ローガンはとても特殊な子達だった。
頼んだアイスとジュースを二人で交互に食べる。チョコは甘くて美味しいし、ジュースも甘酸っぱくて美味しい。そしてなにより、他人との垣根のないリヴィアとお友達になれて、こうして外に遊びにこれたのが凄く嬉しかった。
「あ、おいしい」
「これうまいよね」
一方、男二人は別の屋台で揚げた肉を二人で摘んで食べていた。
食べ終わったらバラ園に向かう。完全に花より団子だったけど、気を取り直して綺麗な花を見て回る。
「バラ綺麗だね。いろんな種類があるや」
バラ園の中には、赤や白以外にもオレンジや黒のバラが咲いていた。形もそれぞれ違って、香りも違う。生い茂るように咲くバラもあれば、大輪の、一輪先咲きのバラもあった。沢山種類があって見ていて楽しい。
「スカーレットはどのお花が好きかしら」
「うーん、そうだな」
左右を見渡す。
「私はこれが良いな」
菜園の柵に巻き付く、白とピンクがマーブル模様に混ざったバラを指差す。
「ふふっ、とってもかわいいバラ。スカーレットによく似合っていますわ」
「そっかな」
スカーレットは頬を掻いた。ちょっと恥ずかしい。
「リヴィアはどの花が好きなの?」
「私はブルーローズが一番好きです」
「ブルーローズ……?」
それって、かつての世界では実現させるまで沢山の時間がかかった花じゃないか。
「スカーレットはブルーローズ知らないの?」
首を傾げるとローガンが尋ねて来る。
「うん、初めて聞いた」
この世界では普通に青い花が咲くのだろうか。オリバーが口を開く。
「ブルーローズは、少し前に魔術師が発明したバラだよ。特殊な調合をした薬剤を使って、バラを育てると青いバラになるらしい。魔力を帯びたバラは、茎を切っても長い間枯れないんだ。それで、商会でも高値で取引されている」
「へぇ」
やっぱり特殊な方法で作られたバラらしい。
「ブルーローズはとても神秘的な輝きをしているの。スカーレットもいつか見る機会があると良いですわね」
「そうだね。そんなに綺麗なら一度は見てみたいや」
スカーレットは頷いた。
バラ園を後にして、四人は寮に帰った。
「とっても楽しかったですわ。よければ、また誘ってくださいね」
寮で別れる時にリヴィアが笑顔でそう言った。
「それなら良かった。また面白そうなとこが見つかったら二人を誘うよ」
「僕も探しておきますね」
二人に手を振って、女子の部屋に向かった。
「本当に楽しかったですねスカーレット」
リヴィアが軽い足取りで階段を上る。スカーレットより年上なのだが、嬉しそうな彼女はかわいい。
「うん、また行こうね」
「はい、喜んで」
リヴィアは振り向いて華の咲くような綺麗な笑顔を見せた。
つづく
「屋台が出てるよ」
オリバーが公園の一角にある屋台を指差す。
「まぁ、美味しそうなジュースですね」
赤いベリージュースは確かに美味しそうだった。しかし、隣のチョコアイスも気になる。
「そちらも美味しそうですわね」
「そうなんだよね」
二人はむぅと悩む。
「そうですわ! 半分こにしましょう!!」
リヴィアは名案を思いついたように、そう言った。
「いいの?」
「もちろんですわ。半分こにしたら二つとも楽しめて素敵ですわね」
リヴィアって貴族のわりに、本当に他人との垣根が無い。学園内にいる貴族の子達はやっぱり、気位の高い子も多かった。言って、しまえば平民の子に差別的な振る舞いをする子も多くいた。そんな中でリヴィアや、ローガンはとても特殊な子達だった。
頼んだアイスとジュースを二人で交互に食べる。チョコは甘くて美味しいし、ジュースも甘酸っぱくて美味しい。そしてなにより、他人との垣根のないリヴィアとお友達になれて、こうして外に遊びにこれたのが凄く嬉しかった。
「あ、おいしい」
「これうまいよね」
一方、男二人は別の屋台で揚げた肉を二人で摘んで食べていた。
食べ終わったらバラ園に向かう。完全に花より団子だったけど、気を取り直して綺麗な花を見て回る。
「バラ綺麗だね。いろんな種類があるや」
バラ園の中には、赤や白以外にもオレンジや黒のバラが咲いていた。形もそれぞれ違って、香りも違う。生い茂るように咲くバラもあれば、大輪の、一輪先咲きのバラもあった。沢山種類があって見ていて楽しい。
「スカーレットはどのお花が好きかしら」
「うーん、そうだな」
左右を見渡す。
「私はこれが良いな」
菜園の柵に巻き付く、白とピンクがマーブル模様に混ざったバラを指差す。
「ふふっ、とってもかわいいバラ。スカーレットによく似合っていますわ」
「そっかな」
スカーレットは頬を掻いた。ちょっと恥ずかしい。
「リヴィアはどの花が好きなの?」
「私はブルーローズが一番好きです」
「ブルーローズ……?」
それって、かつての世界では実現させるまで沢山の時間がかかった花じゃないか。
「スカーレットはブルーローズ知らないの?」
首を傾げるとローガンが尋ねて来る。
「うん、初めて聞いた」
この世界では普通に青い花が咲くのだろうか。オリバーが口を開く。
「ブルーローズは、少し前に魔術師が発明したバラだよ。特殊な調合をした薬剤を使って、バラを育てると青いバラになるらしい。魔力を帯びたバラは、茎を切っても長い間枯れないんだ。それで、商会でも高値で取引されている」
「へぇ」
やっぱり特殊な方法で作られたバラらしい。
「ブルーローズはとても神秘的な輝きをしているの。スカーレットもいつか見る機会があると良いですわね」
「そうだね。そんなに綺麗なら一度は見てみたいや」
スカーレットは頷いた。
バラ園を後にして、四人は寮に帰った。
「とっても楽しかったですわ。よければ、また誘ってくださいね」
寮で別れる時にリヴィアが笑顔でそう言った。
「それなら良かった。また面白そうなとこが見つかったら二人を誘うよ」
「僕も探しておきますね」
二人に手を振って、女子の部屋に向かった。
「本当に楽しかったですねスカーレット」
リヴィアが軽い足取りで階段を上る。スカーレットより年上なのだが、嬉しそうな彼女はかわいい。
「うん、また行こうね」
「はい、喜んで」
リヴィアは振り向いて華の咲くような綺麗な笑顔を見せた。
つづく
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