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24 一五〇日目 -10/10
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『恋人』になってしまってから、時雨は更に頻繁に匡伸のアパートにやって来た。
休日は毎回、外に連れ出された。
時雨に服を選んでやると、時雨はそれを喜んで買って、スウェット以外の服も着て来るようになった。
ひと目の無いところでは手を繋ぎ、家ではたまにキスをする。
もう完全に恋人同士である。
(なんか後戻り出来ないとろこまで来てしまっている気がする……)
当初は必死に生き残る為にやっていた行動だったが、最近は少し違う。
昼過ぎのアパートの部屋で、タブレットで実況プレイ動画を見ていると、時雨が匡伸の肩に体を預けて来る。
ぴったりくっついて動画を見るのが、最近の時雨のお気に入りだった。
狂気をはらんでいない時雨の気性は基本的に穏やかだった。天然すら入っている。
人を馬鹿にした態度をとる事もなく、だいたいなんでもニコニコ見ているタイプである。
(病んでさえいなければ、わりと付き合いやすいタイプの人間なんだよな)
こんなに長時間他人といて、居心地悪くならないのは匡伸にとって珍しい事である。
(馬が合うって事なんだろうな……まぁ、時雨が俺に合わせてるんだろうけど……)
そんな事を考えながら画面を眺めていると、時雨が匡伸の手をつつき、指を絡めて来る。
それを軽く握り返して、時雨を見る。
視線が合う。
時雨が、はにかむように、少し恥ずかしそうに笑う。
(うっ……)
最近、不覚にも時雨の妙にかわいい反応に、心臓がぐっと来る時がある。
(いやいや待て、平常心だ、平常心)
時雨と『恋人(仮)』にはなっているが、時雨に対する『恋』のような感情を自覚する事には、まだ抵抗があった。
つづく
『恋人』になってしまってから、時雨は更に頻繁に匡伸のアパートにやって来た。
休日は毎回、外に連れ出された。
時雨に服を選んでやると、時雨はそれを喜んで買って、スウェット以外の服も着て来るようになった。
ひと目の無いところでは手を繋ぎ、家ではたまにキスをする。
もう完全に恋人同士である。
(なんか後戻り出来ないとろこまで来てしまっている気がする……)
当初は必死に生き残る為にやっていた行動だったが、最近は少し違う。
昼過ぎのアパートの部屋で、タブレットで実況プレイ動画を見ていると、時雨が匡伸の肩に体を預けて来る。
ぴったりくっついて動画を見るのが、最近の時雨のお気に入りだった。
狂気をはらんでいない時雨の気性は基本的に穏やかだった。天然すら入っている。
人を馬鹿にした態度をとる事もなく、だいたいなんでもニコニコ見ているタイプである。
(病んでさえいなければ、わりと付き合いやすいタイプの人間なんだよな)
こんなに長時間他人といて、居心地悪くならないのは匡伸にとって珍しい事である。
(馬が合うって事なんだろうな……まぁ、時雨が俺に合わせてるんだろうけど……)
そんな事を考えながら画面を眺めていると、時雨が匡伸の手をつつき、指を絡めて来る。
それを軽く握り返して、時雨を見る。
視線が合う。
時雨が、はにかむように、少し恥ずかしそうに笑う。
(うっ……)
最近、不覚にも時雨の妙にかわいい反応に、心臓がぐっと来る時がある。
(いやいや待て、平常心だ、平常心)
時雨と『恋人(仮)』にはなっているが、時雨に対する『恋』のような感情を自覚する事には、まだ抵抗があった。
つづく
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