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47 雪遊び

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 俺の顔に白い雪の塊がぶつかる。
「わふっ」
「あははは!! ミツアキにぶつけたぞー!!」
 ルイスが喜んでいる。 
 俺は足下の雪を集めて、ぎゅむっと雪玉を作って投げた。
 ドッチボールのボールくらいのサイズがあった。
「きゃー!!」
 ルイスがぱたぱた逃げて行く。
「わんわん!」
 柴犬ポチが、主人の危機を助けようと吠えている。
 俺は、ルイスに当たらないようにギリギリのとこに雪玉を投げた。
「あははは!!」
 ルイスが雪をすくって、雪玉を作り、また俺に投げて来る。
 俺はその雪玉をぺしょぺしょ体で受けながら、ルイスに雪玉を投げた。

 だいぶ遊んで、体が雪で濡れたので、アデーレの元へ行く。
「あはは、濡れちゃったね」
 ベンチに座ったアデーレが、俺の頭を拭いてくれる。
「ルイスと遊んでくれて、ありがとう」
「雪遊びは初めてやるんだ。楽しかったよ」
「そうなのかい?」
 アデーレが不思議そうな顔をする。
「俺の住んでる地域は、めったに雪が積もらなくてなぁ。こんな雪景色の中で遊ぶのは初めてだよ」
 俺は白い世界を見る。
「そうか。ふふっ、それじゃ今度は私と雪だるまでも作るかい?」
(この世界にも雪だるまあるのか)
「おう、でっかい奴を作ろうぜ!」
 アデーレと二人、雪玉をコロコロ転がして大きな雪玉を作る。
 雪玉を持ち上げて、胴体の上に乗せる。
「よいしょ」
「この上に、こうして……」
 アデーレが雪玉に雪を足している。 
「ほら、耳だよ」
(耳付きの雪だるま……なんかドラ●もんみたいだな……)
「お顔も書いてあげよう」
 アデーレが、犬の顔らしき物を雪だるまに書く。
「できた! ミツアキだよ♡」
 にっこり笑顔で彼は見て来る。
(そ、その行動がかわいい……)
 にやけそうになる顔を必死にこらえる。
「よく出来てるな」
「えへへ」
 俺は小さい雪だるまをその足下に作る。 
 にっこり笑顔を雪だるまに書く。
「これ、アデーレな」
「ミツアキ……♡」
 並んだ雪だるまを二人で眺めて、どちらともなく手を繋いだ。
「この雪だるま、冬の間はずっと残していたいね」
「そうだな。せっかく作ったしな」
(俺、今すげぇ恋人っぽい事をアデーレとしてる気がする……恋人同士って、そうか、こんな感じなのか)
 ぱたぱたと尻尾を振りながら、俺は幸福を噛み締めた。

 雪遊びを楽しんだ後、部屋に戻って暖炉で暖まる。
「あー天国だぁ」
 温かい暖炉の前で、アデーレと犬達に囲まれて俺はそう呟いた。
 手元には温かいお茶がある。
「わかるよ、冬の寒い日にあたる暖炉は至福だよね……」
 俺にもたれかかっているアデーレが頷く。
 犬達は大人しく、目を閉じている。
「そう、ここがきっと天国に違いないんだよ」
 アデーレは幸せそうに息を吐いて、俺に頭をすり寄せた。
(俺もそう思う)
 幸せとはこう言うささやかな日常の事を言うのだろう。





つづく
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