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閑話 使用人の憂鬱
しおりを挟む広い使用人用食堂で、使用人達は憂鬱なため息をついていた。
「なぁ、見たかミツアキ様を」
下級執事A は言う。
「見ました……」
ハウスメイドBは沈鬱な表情で重く頷く。
「うわあぁん、わたし、わたしぃ……まだ、ミツアキ様のマズルをちゃんと見て無かったのにぃ!!」
隣で、同じハウスメイドCが机に突っ伏す。
「俺だって、まだ見て無かったよ……! 上級執事のやつらが階級を良いことに、ミツアキ様の周りの仕事をやりやがって!」
「私もぉ! 先輩達がミツアキ様の部屋の掃除とっちゃって、できなかったんですぅ!! 暖炉掃除は私の仕事なのにぃ!!」
小さくため息が聞こえる。
「みんなは表の仕事だから良いわよ。私なんかキッチンメイドだから、滅多にミツアキ様の姿が見れなくて……」
キッチンメイドDは力なく笑う。
「……今の姿も愛らしいけど、もう一回あの素敵なお顔になってくれないかしら……」
ハウスメイドBは祈るように呟く。
「俺もそう思う……そしたら次こそは、先輩達を押しのけて見に行く」
「わ、私も見に行くわよ。何がなんでも……! ハウスメイドのフリをして!」
「神様お願い! もう一回、もう一回あのお顔を見るチャンスをください!」
しばらくそんな話しが、使用人達の間で何度もされていた。
***
「くしゅん!」
俺は鼻をこする。
「風邪かな? 大丈夫?」
アデーレが心配そうに俺の頭を撫でる。
「いや、大丈夫だと思う……誰か噂でもしてるのかな」
「ミツアキがかわいいって、皆言ってるんだね♡」
「そんなまさか」
笑う俺に、アデーレがチュッチュッとほっぺにキスをした。
つづく
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