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8 本能に負けたりしない!

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 昼休憩に、庭に彼らを見に行くと、三匹が枝を持って来る。アデーレはその枝をポーンと遠くに投げてやる。
 その間、遠目に見たミツアキは遠くに投げる枝を耳をピンとして眺めている。
 三度目投げた時、彼は突如走り出して犬達を追い越し、枝を華麗に空中キャッチする。
 誇らしげな彼がやって来るのを見て、アデーレの心は高鳴る。
「よーしよし。空中キャッチ、かっこよかったよ」
 枝を口から離した彼の胴体を撫でる。犬は親しくない人間に、突然頭を撫でられると驚く。だからまずは胴体からだ。
「わふっわふっ」
 彼は嬉しそうだ。アデーレは思い切って、頭も撫でてみる。すると彼が更に擦り寄って来る。
「くーん」
(かーわいいーー!!!)
 頭をぐりぐり撫でて、肉厚な耳がぴよんぴよん立つのを見る。
(もう、本当かわいい!!)
 胴体と頭を撫で回していると、彼はハフハフと興奮した後にアデーレに腹を見せる。
(あぁあああぁ♡♡♡♡♡)
 お腹を見せてくれたと言う事は、警戒心を解いた証拠である。アデーレは彼が満足するまで、お腹をわしゃわしゃ撫でてあげた。
 その後、彼はアデーレの側で伏せをしたまま頭を撫でさせてくれた。彼との心の距離が縮まった事がアデーレには感じられる。
(幸せだなぁ♡)
 アデーレはにこにこして、もふもふした彼の事を撫で続けた。

***

 俺はベッドの布団の中で丸まっていた。
『アデーレ様にいっぱい撫でて貰えてよかったですねぇ』
 犬幽霊のグレーが言う。
「よくない……」
『なんでですか? アデーレ様に撫でて貰うと幸せな気持ちになりませんか? 愛されてる♡ って感じです』
「た、たしかに心地よかったけど……俺は人間だ……」
 成人男性に撫でられて喜んだ昼間の自分を羞恥する。
『けどけど、今は半分犬なんですから、普通の反応だと思いますよ!』
「うぅ……」
(もう二度とあんな失態は犯さない! 絶対にだ!!)
 俺は自分の人としての理性を信じてそう強く決心した。



つづく
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