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寝室でメイドの運んで来た朝食を食べ、葵は寝室の中をうろうろと歩く。外に出ようと思ったのだが、メイドに止められてしまった。
『外出の許可はいただいておりません』
と、その機械仕掛けのような見た目のメイドは言った。仕方ないので葵は、広い寝室の中をうろうろ歩く。クローゼットを開けると、イルブランドの服が沢山入っている。キャビネットを開けると、綺麗なネクタイピンや、カフス、懐中時計なんかが入っていた。部屋に飾られた絵を見る。写真は無いのか、家族らしき人物達の絵がいくつも飾られている。女性も男性も子どもも、みんな美しかった。あの美形は血筋らしい。部屋の中を物色し終わると、葵は窓から下を見る。城の下には、大きな庭園が見える。迷路のような庭園には、兵士の姿もちらほら見えた。ここから逃げるには、なかなか手間がかかりそうだ。
特にやる事も無いまま、昼食を食べ、夕食を食べ、メイド達に風呂に入れられて再び夜がやって来る。
イルブランドが部屋に入って来る。
「大人しくしていたか」
彼は、今日も黒いガウン着ている。
「大人しくしてました。他にやる事が無いんだもの」
「おまえを、外に出したら何をしでかすかわからないからな」
イルブランドがベッドの上に乗り、葵を引き寄せて頬にキスをする。
「それにしたって、暇すぎます。暇潰しをください!」
「……おまえはこの世界の字が読めるか」
葵は首を横に振る。
「では、読書は無理か」
「字を覚えます!」
「確かに、この世界で暮らすのなら、その方が良いだろう」
「いや……いずれ帰るつもりですけど……」
「帰るアテがあるのか」
「な、無いですけど」
帰る手がかりは全く無かった。今頃葵の捜索願いが出ている頃だろうか。
「まぁ良い。文字を覚える為の簡単な教本を用意してやろう。教師も用意する」
「本当ですか!」
「あぁ」
「ありがとうございます」
これで明日からは、寝室をぐるぐる歩いて過ごす日々とはおさらばできそうだ。
「願いを聞き入れたのだから、おまえからの誠意も欲しい」
「せ、誠意ですか? お金は無いですよ」
「わかっている。体で返して欲しいと言ったんだ」
葵は彼と見つめ合う。
「な、何をお求めですか」
「おまえは処女だが、そちらの知識はどのくらいある」
「ひ、人並み程度はあります」
大体薄い本経由ではあるのだが。
「男を楽しませる方法は知っているか?」
イルブランドは葵の手を取って、自分の股間に押し当てる。そこは、ばっちり元気よく立っている。
「な、なにをお求めですか!」
「手を使って奉仕して欲しい」
布越しとは言え、手に硬い男根が当っている。葵の顔に熱が集まる。
「ふふっ、初心な反応だ。おまえは姦しいが、その反応は好きだぞ」
葵は頬を押さえる。
(この魔王様、性に対して積極的過ぎる)
それとも葵の方が、奥手過ぎるのだろうか。百戦錬磨っぽい、魔王を見上げて葵は覚悟を決める。
「わかりました、やってやりますよ!」
この世界で葵は娼婦である。生きる為ならば、どんな羞恥も受け入れよう。そしていつか元の世界に戻って、再び楽しい腐女子ライフに戻るのだ。
「元気が良いな」
イルブランドは葵の元気過ぎる返事に、やや呆れている。葵は彼の下半身に布越しに触れて、しばらくさする。既に凄く固い。元気な三百二十二歳である。彼の黒い下着を下におろして、彼のモノを出す。
「……」
葵はしばしそれを見つめて、真顔になる。
「どうした」
「え、いや。大きく無いですか?」
布越しに触りながら、嫌な予感がしていたのだが、彼のモノは大き過ぎる。五百ミリペットボトルくらいある。太くて長い。薄い本の原稿で、何本もおちんちんを描いて来た葵だが、生のおちんちんに触れるのはこれが初めてである。綺麗な形をしている。これは、絵にしたら映えそうな良いおちんちんである。
「どうしたんだ?」
愛撫では無く、観察を始めた葵にイルブランドは疑問符を浮かべている。
(しまった、つい……)
柔らかい玉袋までじっくり見た後に、葵はそのペニスを掴む。
「これを擦ると良いんですよね」
よいしょ、よいしょと擦ってみる。
「むっ……」
やり方はよくわからないが、とりあえず上下に優しく擦る。先端も、空いた手でよしよしと撫でる。理想的な綺麗な造形のおちんちんを前にして、葵はそれに対する嫌悪は特にわかなかった。むしろ、リアルな触り心地や、血管の浮き方、しごく事に硬くなっていく反応を記憶に刻んでいる。
(これでまた一つ素晴らしい、おちんちんを描く材料が増えたわ)
玉袋をやんわりと揉むと、射精が近いのか少し張って来ているのを感じた。手淫は上手くいっているらしい。
「アオイ」
肩にイルブランドの手が触れる。見上げると、彼はほんのりと頬を赤く染めて目をうるませている。受の反応としては、完璧である。今度、薄い本の濡れ場シーンで使わせて貰おう。
「口でしてくれないか」
葵はその提案に固まる。
「口……ですか?」
イルブランドは頷く。さすがに、葵は戸惑う。口でするって事は、ペニスを口に含むって事だ。それはだいぶ抵抗がある。
「昨日は、私がおまえに奉仕したが。おまえはしてくれないのか」
葵はしばらく悩んだ後に、しぶしぶ彼のモノに顔を寄せる。舌を出して、彼のモノを舐める。
「っ」
男性が弱いらしい、裏筋を責めたら彼が息を詰める。薄い本の知識も馬鹿にならない。今度は先端だけ、チロチロ舐める。
「っ……」
彼が葵の頭を軽く押さえる。たぶん、良いのだと思う。先端に、ふっと息をふきかけてみる。
「!」
すると、その刺激でとろりとペニスの先端から透明な液体が出る。
(カウパー液だぁ)
我慢汁とも言われる、透明な液体に何故だか感動してしまった葵はそれをまじまじと見てしまう。
「焦らしているのか……」
見上げると、イルブランドが切羽詰まった顔をしている。
「えっと……そう言うつもりじゃないんですけど……」
葵は、彼のモノを思いきって咥える。
「んん」
大きいので、苦しい。なるべく奥まで入れてみたが、半分くらいまでしか飲み込めない。舌先で、裏筋を撫でながら頭を上下に動かして彼のモノを口でしごいた。ペニス全体の味はしょっぱい。ペニスが口の中で固くなり、彼が葵の頭を押さえて口の中で放つ。
「!」
唇にどくどくと振動が響き、口の中にしょっぱい液体の味がする。
「飲め」
葵はしばらく口の中にためていた精液を、しぶしぶ飲み込んだ。もったりとして、凄く飲みづらい。彼のペニスから口を離すと、彼が引き寄せて来て葵にキスをする。射精を受け止めたばかりなのに、彼は気にしていないようだった。舌が、潜り込んで来て口の中を犯す。胸をついでに揉まれている。葵は、荒く息をしながら彼が満足するまでキスをし続けた。しばらくして満足した彼は葵を横に寝かせて、抱きしめたまま眠りについた。一方の抱き込まれた葵は、全く眠れる気がしなかった。白檀の良い香りが、後ろから香っていた。
***
次の日、イルブランドにお願いした通り部屋に教師がやって来た。
「私はヤスパースと申します。あなたに言葉を教えるようにイルブランド様に言われて参りました」
ヤスパースと名乗った女性は、葵をじろりと睨む。赤い色を基調としたドレスを着ていて、人型の見た目をしているのだが、目が六つ、腕が六本あった。
「よ、よろしくお願いします」
彼女の姿に蜘蛛を思い出しながら、葵は頭を下げる。教師に会うと言う事もあって、葵も青色のドレス着ている。
「娼婦に言葉を教えるなど、無駄な事だと思うのですが……」
ヤスパースは、本を開く。
「しかし、イルブランド様からのご命令です。全力で貴方に言葉を教えましょう。何事にも手抜きをしないのが、私の座右の銘です」
「は、はい。あの、ところで、私どうしてみなさんの言葉がわかるんでしょうか?」
聞きそびれていた疑問を聞く。確か、最初に来た時はこの世界の人々の言葉はわからなかったはずだ。
「それは、翻訳の耳飾りと言う魔具を私が着けているからです」
彼女は自分の耳に触れる。そこには、金の金具に赤い石のついた派手な耳飾りがある。
「見た目は違いますがイルブランド様も、同じ物を着けています。だから、貴方と会話できるのです」
「そうなんですか……魔具って便利ですね」
「貴方の世界には無いのですか」
「ありませんね」
「ふん、随分遅れた所から来たのですね」
日本とこの世界では、文明レベルの差はどのくらいの物なのだろうか。
「まぁ、良いでしょう。さっそく言葉を教えます」
高圧的ではあるが、ヤスパースは丁寧に言葉を教えてくれた。書き文字を一字、一字習い、それを組み合わせた短い単語の読み方を習う。
「まずは、単語を覚えましょう。来週テストをしますからね」
そう言って単語帳一冊を渡される。
「え、これ一冊分ですか」
「あたりまえです。やる事も無く、暇なのでしょう?」
確かにその通りだった。
「では、また」
二時間の授業を終えて、彼女は帰って行った。また、来週も来てくれるらしい。どう言う立場の人が知らないが、しばらく迷惑をかける事になりそうだ。極力、良い生徒でいたいと思う葵だった。
■
彼に抱かれた後、葵は彼の腕の中にいた。
「イルブランド様……」
葵は、おずおずと口を開く。
「どうした」
「お願いがあります……」
イルブランドが葵の顎を上げさせて、顔を見る。
「なんだ」
「以前、城下で会ったあの犬の魔物が元気にしているのか知りたいです」
イルブランドが憮然とした顔をする。
「あの獣はおまえがそれ程、心を砕くべき存在か?」
「一度助けたのなら、最後まで責任を持つべきだと思います」
葵は真剣にイルブランドを見る。
「理解しがたいな」
「魔界ではこう言う考え方しないんですか?」
「おまえのような者は、初めて見る」
彼は少し考えるように葵を眺める。
「おまえは、相手があの魔物でなくても、弱った者がいれば助けるのか」
「困っている人がいれば助けます。それが正しい事だと思いますから」
『正義』とは難しい事だが、困っている人を助けるのはきっと正しい事だと葵には思えた。
「体の大きな者、卑しい者でもか」
「体の大きさや、身分なんて関係ありません」
葵はイルブランドを睨む。
「……良かろう。あの犬の魔物の様子は兵士達に後から聞いておく」
「本当ですか!」
「あぁ」
彼は静かに頷いた。葵は、不安が一つ消えてほっとした。ずっと、あの魔物の事が気になっていたのだ。
後日、イルブランドからあの犬の魔物は元気にやっている事を聞いてほっとした。
つづく
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