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アルビオルに助けられてから、二週間程ジュンは王宮に滞在していた。場所は、アルビオルの部屋なので自分がとんでもない特別扱いを受けているのは、ひしひしと感じていた。しかも、従者の人達はまるで王族相手かのように丁寧にお世話をしてくれる。
(早く……治さなきゃ……)
ジュンの声は徐々に出るようになっていった。二週間経った今は、もう問題無いくらいはっきりと話しが出来る。しかし、師匠のタラーいわくもうしばらく安静にしていなさいとの事だった。呪術の事はよくわからないジュンはそれに大人しく従うしかない。
「ジュン!」
夜に、アルビオルが元気よく部屋に入って来る。最近、彼は忙しいらしく食事をする時間も会わない事が多い。今日も、ジュンは一人で夕飯を食べてしまった。
「聞いてくれジュン! 準備が整ったぞ!」
ベッドに乗り上げて来たアルビオルは満面の笑顔だった。
「準備?」
「婚礼の準備だ!」
「え?」
呆然とした声が出る。二週間前に、伴侶になって欲しいと言われたが、問題が多いので、一旦その話は保留になったはずだ。
「一般的に我が国は花嫁は赤を着て、花婿は白の衣装を着ると決まっているのだが、ジュンはどちらが良い?」
アルビオルが目を輝かせて尋ねて来る。
「待って、待って、待って、衣装の色より、聞かなきゃいけない事がある! 僕と結婚して、跡継ぎはどうするんだい!」
二週間前に聞けなかった事を聞く。
「それなら問題無い! 余が産む!」
胸に手を置いて、アルビオルは高らかに言った。
「はっ? えっ? アルビオルって女だったっけ……いや、そんなわけないじゃん、男じゃん!」
頭が混乱する。
「我が国の王宮には、秘薬があるのだ」
アルビオルはいたずらっこのような笑みを見せる。
「その薬を飲めばなんと、男でも子を孕めるようになる!」
「ひえっ!」
ジュンは、ここが自分の常識の通じない異世界である事を、改めて思い出した。
「そんな秘薬がある事は知っていたが、どんな物好きが飲むのかと思っていた。よもや余が飲む事になるとはな! あははは!」
アルビオルが大声で笑う。
「いやいや、そんな大事な事をあっさり決めちゃダメだよ!」
「あっさりなど決めてはおらぬ、きちんと熟考した上で、宰相にも相談し、大臣達も説得して了承を得たのだ!」
既に国の許諾は出ていた。
「ほ、本気なのか?」
「もちろん本気だ! 余はジュンを離す気はないぞ!」
アルビオルは清々しい程、高らかに言った。
アルビオルは本気だ、ならジュンも覚悟を決めなければいけない。
「わかったよ……それじゃあ、よろしくお願いします」
ジュンは自分の顔が熱くなって行くのを感じた。
「な、なんだか余も恥ずかしくなって来たぞ」
どちらともなく手を握って、キスをした。幸せな気持ちが、じんわりと胸に広がった。
「と、ところで……子供を作れるようになるって……具体的にどうなるんだ……?」
「うむ……なんでも、尻の奥の方に、子を孕む部屋が一つ増えるらしい」
「な、なるほど……!」
ジュンは全て察した、異世界の魔法は本当に凄い。
「実は、秘薬は既に飲んである。まだ、子を孕むまでの機能は無いのだが、そこにそなたのモノを受け入れる準備をする必要がある」
「そ、そうだよな!」
お尻で孕むと言う事は、つまりジュンのペニスを入れられるようになる必要があると言うわけである。
「というわけで、手伝ってくれないかジュン? おまえの傷も癒えた事だし、余はこれから婚礼期間に入ろうと思うのだが」
この世界では、結婚前に一週間~一月程夫婦が密に過ごす時間がある。夫婦はこの一月の間に、たっぷり愛を育むらしい。
「わ、わかったよ」
「うむ、ではよろしくなジュン」
ジュンはこの先の事を思うと、更に顔が熱くなった。
つづく
アルビオルに助けられてから、二週間程ジュンは王宮に滞在していた。場所は、アルビオルの部屋なので自分がとんでもない特別扱いを受けているのは、ひしひしと感じていた。しかも、従者の人達はまるで王族相手かのように丁寧にお世話をしてくれる。
(早く……治さなきゃ……)
ジュンの声は徐々に出るようになっていった。二週間経った今は、もう問題無いくらいはっきりと話しが出来る。しかし、師匠のタラーいわくもうしばらく安静にしていなさいとの事だった。呪術の事はよくわからないジュンはそれに大人しく従うしかない。
「ジュン!」
夜に、アルビオルが元気よく部屋に入って来る。最近、彼は忙しいらしく食事をする時間も会わない事が多い。今日も、ジュンは一人で夕飯を食べてしまった。
「聞いてくれジュン! 準備が整ったぞ!」
ベッドに乗り上げて来たアルビオルは満面の笑顔だった。
「準備?」
「婚礼の準備だ!」
「え?」
呆然とした声が出る。二週間前に、伴侶になって欲しいと言われたが、問題が多いので、一旦その話は保留になったはずだ。
「一般的に我が国は花嫁は赤を着て、花婿は白の衣装を着ると決まっているのだが、ジュンはどちらが良い?」
アルビオルが目を輝かせて尋ねて来る。
「待って、待って、待って、衣装の色より、聞かなきゃいけない事がある! 僕と結婚して、跡継ぎはどうするんだい!」
二週間前に聞けなかった事を聞く。
「それなら問題無い! 余が産む!」
胸に手を置いて、アルビオルは高らかに言った。
「はっ? えっ? アルビオルって女だったっけ……いや、そんなわけないじゃん、男じゃん!」
頭が混乱する。
「我が国の王宮には、秘薬があるのだ」
アルビオルはいたずらっこのような笑みを見せる。
「その薬を飲めばなんと、男でも子を孕めるようになる!」
「ひえっ!」
ジュンは、ここが自分の常識の通じない異世界である事を、改めて思い出した。
「そんな秘薬がある事は知っていたが、どんな物好きが飲むのかと思っていた。よもや余が飲む事になるとはな! あははは!」
アルビオルが大声で笑う。
「いやいや、そんな大事な事をあっさり決めちゃダメだよ!」
「あっさりなど決めてはおらぬ、きちんと熟考した上で、宰相にも相談し、大臣達も説得して了承を得たのだ!」
既に国の許諾は出ていた。
「ほ、本気なのか?」
「もちろん本気だ! 余はジュンを離す気はないぞ!」
アルビオルは清々しい程、高らかに言った。
アルビオルは本気だ、ならジュンも覚悟を決めなければいけない。
「わかったよ……それじゃあ、よろしくお願いします」
ジュンは自分の顔が熱くなって行くのを感じた。
「な、なんだか余も恥ずかしくなって来たぞ」
どちらともなく手を握って、キスをした。幸せな気持ちが、じんわりと胸に広がった。
「と、ところで……子供を作れるようになるって……具体的にどうなるんだ……?」
「うむ……なんでも、尻の奥の方に、子を孕む部屋が一つ増えるらしい」
「な、なるほど……!」
ジュンは全て察した、異世界の魔法は本当に凄い。
「実は、秘薬は既に飲んである。まだ、子を孕むまでの機能は無いのだが、そこにそなたのモノを受け入れる準備をする必要がある」
「そ、そうだよな!」
お尻で孕むと言う事は、つまりジュンのペニスを入れられるようになる必要があると言うわけである。
「というわけで、手伝ってくれないかジュン? おまえの傷も癒えた事だし、余はこれから婚礼期間に入ろうと思うのだが」
この世界では、結婚前に一週間~一月程夫婦が密に過ごす時間がある。夫婦はこの一月の間に、たっぷり愛を育むらしい。
「わ、わかったよ」
「うむ、ではよろしくなジュン」
ジュンはこの先の事を思うと、更に顔が熱くなった。
つづく
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