『回復魔法店ジュン~主に男の下半身のお悩みを解決します~』

綾里 ハスミ

文字の大きさ
上 下
24 / 29

23

しおりを挟む


 アルビオルに助けられてから、二週間程ジュンは王宮に滞在していた。場所は、アルビオルの部屋なので自分がとんでもない特別扱いを受けているのは、ひしひしと感じていた。しかも、従者の人達はまるで王族相手かのように丁寧にお世話をしてくれる。
(早く……治さなきゃ……)
 ジュンの声は徐々に出るようになっていった。二週間経った今は、もう問題無いくらいはっきりと話しが出来る。しかし、師匠のタラーいわくもうしばらく安静にしていなさいとの事だった。呪術の事はよくわからないジュンはそれに大人しく従うしかない。
「ジュン!」
 夜に、アルビオルが元気よく部屋に入って来る。最近、彼は忙しいらしく食事をする時間も会わない事が多い。今日も、ジュンは一人で夕飯を食べてしまった。
「聞いてくれジュン! 準備が整ったぞ!」
 ベッドに乗り上げて来たアルビオルは満面の笑顔だった。
「準備?」
「婚礼の準備だ!」
「え?」
 呆然とした声が出る。二週間前に、伴侶になって欲しいと言われたが、問題が多いので、一旦その話は保留になったはずだ。  
「一般的に我が国は花嫁は赤を着て、花婿は白の衣装を着ると決まっているのだが、ジュンはどちらが良い?」
 アルビオルが目を輝かせて尋ねて来る。
「待って、待って、待って、衣装の色より、聞かなきゃいけない事がある! 僕と結婚して、跡継ぎはどうするんだい!」
 二週間前に聞けなかった事を聞く。
「それなら問題無い! 余が産む!」
 胸に手を置いて、アルビオルは高らかに言った。
「はっ? えっ? アルビオルって女だったっけ……いや、そんなわけないじゃん、男じゃん!」
 頭が混乱する。
「我が国の王宮には、秘薬があるのだ」
 アルビオルはいたずらっこのような笑みを見せる。
「その薬を飲めばなんと、男でも子を孕めるようになる!」
「ひえっ!」
 ジュンは、ここが自分の常識の通じない異世界である事を、改めて思い出した。
「そんな秘薬がある事は知っていたが、どんな物好きが飲むのかと思っていた。よもや余が飲む事になるとはな! あははは!」
 アルビオルが大声で笑う。
「いやいや、そんな大事な事をあっさり決めちゃダメだよ!」
「あっさりなど決めてはおらぬ、きちんと熟考した上で、宰相にも相談し、大臣達も説得して了承を得たのだ!」
 既に国の許諾は出ていた。
「ほ、本気なのか?」
「もちろん本気だ! 余はジュンを離す気はないぞ!」
 アルビオルは清々しい程、高らかに言った。
 アルビオルは本気だ、ならジュンも覚悟を決めなければいけない。
「わかったよ……それじゃあ、よろしくお願いします」
 ジュンは自分の顔が熱くなって行くのを感じた。
「な、なんだか余も恥ずかしくなって来たぞ」
 どちらともなく手を握って、キスをした。幸せな気持ちが、じんわりと胸に広がった。
「と、ところで……子供を作れるようになるって……具体的にどうなるんだ……?」
「うむ……なんでも、尻の奥の方に、子を孕む部屋が一つ増えるらしい」
「な、なるほど……!」
 ジュンは全て察した、異世界の魔法は本当に凄い。
「実は、秘薬は既に飲んである。まだ、子を孕むまでの機能は無いのだが、そこにそなたのモノを受け入れる準備をする必要がある」
「そ、そうだよな!」
 お尻で孕むと言う事は、つまりジュンのペニスを入れられるようになる必要があると言うわけである。
「というわけで、手伝ってくれないかジュン? おまえの傷も癒えた事だし、余はこれから婚礼期間に入ろうと思うのだが」
 この世界では、結婚前に一週間~一月程夫婦が密に過ごす時間がある。夫婦はこの一月の間に、たっぷり愛を育むらしい。
「わ、わかったよ」
「うむ、ではよろしくなジュン」
 ジュンはこの先の事を思うと、更に顔が熱くなった。


つづく

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

俺達の関係

すずかけあおい
BL
自分本位な攻め×攻めとの関係に悩む受けです。 〔攻め〕紘一(こういち) 〔受け〕郁也(いくや)

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた! どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。 そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?! いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?! 会社員男性と、異世界獣人のお話。 ※6話で完結します。さくっと読めます。

捨て猫はエリート騎士に溺愛される

135
BL
絶賛反抗期中のヤンキーが異世界でエリート騎士に甘やかされて、飼い猫になる話。 目つきの悪い野良猫が飼い猫になって目きゅるんきゅるんの愛される存在になる感じで読んでください。 お話をうまく書けるようになったら続きを書いてみたいなって。 京也は総受け。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...