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なんと言うか、思いが通じあってしまった。お互いに好きだと言い合ったのだから、それは両思いと言う事だろう。以前は週三度、夜に治療の時にだけ会っていた。だが、今はアルビオルの時間が開けば日中であろうと呼び出される。
「ジュン、おまえは好きな食べ物はあるか?」
ソファに座ったアルビオルがクッションを抱えて、笑みを浮かべて聞いて来る。ジュンと話すのが、嬉しくてしょうがないと言う感じだった。
「ハモスは好きですよ。お店によって、微妙に味が違うのが面白いですね」
ハモスは、ヒヨコ豆をペースト状にした物で、パンや野菜に付けて食べる料理である。
「ふむ、次はそれを用意させよう」
「……ありがとうございます」
今日のテーブルには甘く煮出したミルクティーであるチャイと、餃子のような形をしたカターエフと言うお菓子がお皿にこんもりと盛られていた。ジュンは、カターエフを片手にとって食べる。中に甘いシロップ漬けにされたクルミが入っている。この国のお菓子は甘い物が多いので、甘党のジュンには喜ばしい事だった。
「ジュンの故郷はどんなとろこなのだ?」
同じようにカターエフをバリボリ食べているアルビオルが尋ねて来る。彼は最近、何かとジュンの事を知りたがる。
「……俺の生まれた故郷には、一年を通してハッキリとした四季がありました」
日本とこの世界とでは、文明レベルに大きな差がある。その辺りの事を知られる話題は避けて話しをする。
「春になれば草花が芽吹き、夏になれば太陽が容赦無く照りつけ、秋は山々が赤く紅葉し、冬に白い雪が降り積もりました。とても美しい国でした」
故郷の事を思い出すと、自然と親友の姿も思い浮かんでしまう。鼻の奥がツーンとするのを我慢する。
「四季か……話には聞いた事がある。国によって、気候が大きく変わる場所があるらしいな」
クッションを抱きしめて、アルビオルが思案する。
「余の国は、うだるように暑いか、凍える程寒いかだけだからな」
このサビオラと言う国は、イスラム建築を思わせる建物が沢山あり、街の周囲には広大な砂漠が広がっていた。日中は暑く、夜は寒い。二年住んだが、四季を感じる事は無かった。
「おまえの国では、有名な草花はあるのか?」
「あぁ……桜の木があります。春になると薄桃色の綺麗な花を咲かせるんですよ」
「薄桃か……それは是非、我が温室に加えたい木だな……」
以前、連れて行って貰った温室の事だろう。
「きっと花やぐでしょうね」
ジュンは、もうひとつカターエフを手に取って食べた。甘く似たクルミは、歯が溶けそうな程甘くて美味しい。
「そうだ、久しぶりに温室に行くか! 昼に行くと日の光がガラスに反射して、とても綺麗なんだ」
アルビオルがクッションを横に置いて立ち上がる。手をを引かれて引っ張られたので、ジュンは口にカターエフの残りを押し込みながら付いて行った。
昼間の温室は確かに美しかった。草花は、瑞々しい葉を太陽の方に向けている。小窓から入った小鳥達が、軽やかに鳴いている。
「こっちだ」
手を引っ張られるままに付いて行くと、温室の中に池があった。中央に浮島のような物が作られて、そこには亜熱帯を思わせるシダなどの植物が鬱蒼と生えていた。
「わぁ……」
さすが王宮の温室、規模が大きい。
近くに置かれた、石で組まれたベンチに腰かける。
「美しいであろう?」
「えぇ、本当に」
植物の側は空気が澄んでいるように感じた。水の流れる音も心地良い。
「本来ここは、王族しか立ち入る事の出来ぬ場所だ」
「そうなんですか?」
「余は、ジュンを気に入っているから、連れて来たのだぞ」
「あ、ありがとう」
アルビオルの気遣いは嬉しいけれど、気恥ずかしかった。十歳も年の差があるのだ、手放しに子供のように喜ぶのはおかしいし、大人の余裕を見せられる程自分は恋愛にこなれていなかった。おかげで、半端な反応になってしまう。
「ジュンは何をすれば喜んでくれるのだ?」
隣に座ったアルビオルが、ずいっと近づいて来る。
「何をすればって……君が僕を思ってやってくれる事なら、なんだって嬉しいよ」
するとアルビオルの方が頬を染める。
「ジュンは大人だな」
「そんな……」
恋愛における感情表現に迷う程度には、まだガキである。
「ジュン……」
アルビオルがシャツを引っ張って来る。
「どうしたの」
「キスがしたい」
「えっ、ここでかい」
二人が親密に触れ合うのは、アルビオルの部屋でだけだった。あの中で何が起きても、あくまで『治療』であると言い張れるからだ。たとえ、アルビオルが甘い声で喘ぎ続けたとしても。
「ここには余とおまえしかおらぬ」
言いながら、アルビオルが近づいて来る。
「……けど……」
抵抗の言葉を言う前に、アルビオルはジュンの口を塞いでしまった。柔らかい唇が、ジュンの唇に触れる。アルビオルがはむはむとジュンの唇を食んだ後に舌を入れて来た。ジュンは少し周りの様子を見て、確かに人がいない事を確認してからアルビオルの腰に手を回して、キスに応えた。舌を絡め合うキスは、とても親密な行為で、静かな快感を蓄積していく。
アルビオルの息が乱れて来ると、彼はジュンの手を自らの胸に持って行った。触れと言う事らしい。薄い布の上から、平べったい胸に触ると、ぷっくりとかわいい頂きが主張を始める。その頂きを重点的に、撫でる。
「んっ……」
アルビオルが笑みを浮かべて、気持ちよさそうに息をもらす。ジュンの太ももにまたがり、股を擦り付けて来る。固いものが太ももに当たっている。彼の興奮を感じて、ジュンも下半身が熱くなって来た。
アルビオルが腰を擦り付けて、ジュンの肩をギュッと握って後ろにのけぞる。
「あぁ……!」
果てたアルビオルの背を支えて、抱き寄せる。
熱い息を感じながら、ジュンも自分のモノをしごいて出した。もたれかかっているアルビオルの首筋や、小さな耳に何度もキスをした。彼はその度に、くすぐったそうに身をよじった。
つづく
なんと言うか、思いが通じあってしまった。お互いに好きだと言い合ったのだから、それは両思いと言う事だろう。以前は週三度、夜に治療の時にだけ会っていた。だが、今はアルビオルの時間が開けば日中であろうと呼び出される。
「ジュン、おまえは好きな食べ物はあるか?」
ソファに座ったアルビオルがクッションを抱えて、笑みを浮かべて聞いて来る。ジュンと話すのが、嬉しくてしょうがないと言う感じだった。
「ハモスは好きですよ。お店によって、微妙に味が違うのが面白いですね」
ハモスは、ヒヨコ豆をペースト状にした物で、パンや野菜に付けて食べる料理である。
「ふむ、次はそれを用意させよう」
「……ありがとうございます」
今日のテーブルには甘く煮出したミルクティーであるチャイと、餃子のような形をしたカターエフと言うお菓子がお皿にこんもりと盛られていた。ジュンは、カターエフを片手にとって食べる。中に甘いシロップ漬けにされたクルミが入っている。この国のお菓子は甘い物が多いので、甘党のジュンには喜ばしい事だった。
「ジュンの故郷はどんなとろこなのだ?」
同じようにカターエフをバリボリ食べているアルビオルが尋ねて来る。彼は最近、何かとジュンの事を知りたがる。
「……俺の生まれた故郷には、一年を通してハッキリとした四季がありました」
日本とこの世界とでは、文明レベルに大きな差がある。その辺りの事を知られる話題は避けて話しをする。
「春になれば草花が芽吹き、夏になれば太陽が容赦無く照りつけ、秋は山々が赤く紅葉し、冬に白い雪が降り積もりました。とても美しい国でした」
故郷の事を思い出すと、自然と親友の姿も思い浮かんでしまう。鼻の奥がツーンとするのを我慢する。
「四季か……話には聞いた事がある。国によって、気候が大きく変わる場所があるらしいな」
クッションを抱きしめて、アルビオルが思案する。
「余の国は、うだるように暑いか、凍える程寒いかだけだからな」
このサビオラと言う国は、イスラム建築を思わせる建物が沢山あり、街の周囲には広大な砂漠が広がっていた。日中は暑く、夜は寒い。二年住んだが、四季を感じる事は無かった。
「おまえの国では、有名な草花はあるのか?」
「あぁ……桜の木があります。春になると薄桃色の綺麗な花を咲かせるんですよ」
「薄桃か……それは是非、我が温室に加えたい木だな……」
以前、連れて行って貰った温室の事だろう。
「きっと花やぐでしょうね」
ジュンは、もうひとつカターエフを手に取って食べた。甘く似たクルミは、歯が溶けそうな程甘くて美味しい。
「そうだ、久しぶりに温室に行くか! 昼に行くと日の光がガラスに反射して、とても綺麗なんだ」
アルビオルがクッションを横に置いて立ち上がる。手をを引かれて引っ張られたので、ジュンは口にカターエフの残りを押し込みながら付いて行った。
昼間の温室は確かに美しかった。草花は、瑞々しい葉を太陽の方に向けている。小窓から入った小鳥達が、軽やかに鳴いている。
「こっちだ」
手を引っ張られるままに付いて行くと、温室の中に池があった。中央に浮島のような物が作られて、そこには亜熱帯を思わせるシダなどの植物が鬱蒼と生えていた。
「わぁ……」
さすが王宮の温室、規模が大きい。
近くに置かれた、石で組まれたベンチに腰かける。
「美しいであろう?」
「えぇ、本当に」
植物の側は空気が澄んでいるように感じた。水の流れる音も心地良い。
「本来ここは、王族しか立ち入る事の出来ぬ場所だ」
「そうなんですか?」
「余は、ジュンを気に入っているから、連れて来たのだぞ」
「あ、ありがとう」
アルビオルの気遣いは嬉しいけれど、気恥ずかしかった。十歳も年の差があるのだ、手放しに子供のように喜ぶのはおかしいし、大人の余裕を見せられる程自分は恋愛にこなれていなかった。おかげで、半端な反応になってしまう。
「ジュンは何をすれば喜んでくれるのだ?」
隣に座ったアルビオルが、ずいっと近づいて来る。
「何をすればって……君が僕を思ってやってくれる事なら、なんだって嬉しいよ」
するとアルビオルの方が頬を染める。
「ジュンは大人だな」
「そんな……」
恋愛における感情表現に迷う程度には、まだガキである。
「ジュン……」
アルビオルがシャツを引っ張って来る。
「どうしたの」
「キスがしたい」
「えっ、ここでかい」
二人が親密に触れ合うのは、アルビオルの部屋でだけだった。あの中で何が起きても、あくまで『治療』であると言い張れるからだ。たとえ、アルビオルが甘い声で喘ぎ続けたとしても。
「ここには余とおまえしかおらぬ」
言いながら、アルビオルが近づいて来る。
「……けど……」
抵抗の言葉を言う前に、アルビオルはジュンの口を塞いでしまった。柔らかい唇が、ジュンの唇に触れる。アルビオルがはむはむとジュンの唇を食んだ後に舌を入れて来た。ジュンは少し周りの様子を見て、確かに人がいない事を確認してからアルビオルの腰に手を回して、キスに応えた。舌を絡め合うキスは、とても親密な行為で、静かな快感を蓄積していく。
アルビオルの息が乱れて来ると、彼はジュンの手を自らの胸に持って行った。触れと言う事らしい。薄い布の上から、平べったい胸に触ると、ぷっくりとかわいい頂きが主張を始める。その頂きを重点的に、撫でる。
「んっ……」
アルビオルが笑みを浮かべて、気持ちよさそうに息をもらす。ジュンの太ももにまたがり、股を擦り付けて来る。固いものが太ももに当たっている。彼の興奮を感じて、ジュンも下半身が熱くなって来た。
アルビオルが腰を擦り付けて、ジュンの肩をギュッと握って後ろにのけぞる。
「あぁ……!」
果てたアルビオルの背を支えて、抱き寄せる。
熱い息を感じながら、ジュンも自分のモノをしごいて出した。もたれかかっているアルビオルの首筋や、小さな耳に何度もキスをした。彼はその度に、くすぐったそうに身をよじった。
つづく
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